日韓で歴史を話し合ったら、「韓国への愛はないのかーっ!」

 

今回の記事は前回の続きというかおまけ。

このまえ佐賀新聞がこんな記事(2019/9/22)をのせていた。

日韓「歴史的事実共有したい」 両国の若者、都内で討論集会

最悪といわれる現在の日韓関係を改善したい!と思う日韓の若者が、そのための方法を都内某所で話し合った。
関係悪化の原因は日韓の歴史認識の違いにあるという認識は間違いではないけど、その最大原因である韓国側の約束違反を無視して話をすすめるのは納得がいかぬ。
韓国の若者は「韓国社会は元徴用工や元慰安婦らの心の治癒を目指している」と話し、日本人側は「過去の植民地支配についてもっと知り、歴史的事実を共有したい」と応える。
それで韓国人学生が「韓日中の3カ国が共同で歴史教科書を作ってはどうか」と提案した。

「歴史的事実を共有したい」というのはいいけど、はたして日韓でそれができるのか?
実際にそれをやろうとしたら「ネタ」になってしまったという事例があるから、これからそれを紹介しようと思う。

 

2001年の日韓首脳会談での合意にもとづいて、日韓歴史共同研究が行われることとなった。
日本と韓国の研究者が集まって話し合いをしたのだけど、予想どおり現場は混乱して迷走した。
研究委員会に出席していた歴史学者の古田博司氏によると、それはこんなカオス。

日韓の意見が対立した時に、日本側が「資料をご覧になってください」と言うと、韓国側は立ち上がって「韓国に対する愛情はないのかーっ!」と怒鳴り、日本側がさらに「資料を見てくれ」と言い返すと、「資料はそうだけれど」とブツブツ呟いて、再び「研究者としての良心はあるのかーっ!」と怒鳴った

日韓歴史共同研究

「韓国に対する愛情はないのかーっ!」という韓国の研究者の言葉は日本人のツボにはまって、いまでもネットでこの表現が使われている。

 

このときの韓国側の研究者をふり返って古田氏はこう批判した。

「民族的感情を満足させるストーリーがまずあって、それに都合のいい資料を貼り付けてくるだけなので、それ以外の様々な資料を検討していくと、矛盾、欠落、誤読がいっぱい出てくる」

「要するに『自分が正しい』というところからすべてが始まっており、その本質は何かといえば『自己絶対正義』にほかならず、したがって何をやろうと彼らの『正義』は揺らがない」

自分たちにとって望ましい結論がまず先にあって、それに合った事実を集めるか、それに合うようものごとを強引に解釈する。
これが韓国のいう「正しい歴史」なのだから、話せば違うがわかるだけ。
前回の記事で出てきた「反日種族主義」と同じなのだ。

韓国社会に一石:「反日種族主義」は歴史の虚構を打破できるか

 

このときの古田氏と同じことを、元駐韓大使で外交評論家の武藤正敏氏も話している。
「BLOGS」の記事(2019年08月08日)

私が携わってきた共同研究でのやりとりを見たりすると、韓国の歴史的研究というのは、事実を突き詰めることよりも自分たちの主張に合った事実をどうやって当てはめていくかというもの。

“少女像”の公的展示に元駐韓大使「日本国民を冒涜」、騒動の根本に“主張に歴史を合わせる”韓国のスタンス?

 

ドイツやポーランドなどの間で歴史的研究が進んだ大きな要因は、「国民感情は横に置いて、歴史的事実だけを突き止めましょうという合意があったから」と武藤氏は指摘する。

「日韓で歴史的事実を共有したい」、「韓日中の3カ国が共同で歴史教科書を作ってはどうか」というのはいいけど、その前提として、自分の主張に歴史を合わせるスタンスがないか確認する必要がある。
そうでないと、「韓国に対する愛情はないのかーっ!」と怒鳴られてしまうから。

事実を横に置いて歴史認識を共有できるのは、同じ気持ちや同程度の反日感情がある者同士だけ。
そうでなければ無知による盲従だ。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

2 件のコメント

  • 中国・韓国は反日教育をしていて、日本は嫌中・嫌韓教育をしていませんが、中国・韓国が反日になった原因を教育していません。
    理由は、本当は日本政府が教えたいはずなのに、中国・韓国が横槍で干渉してくる為、自分で本・インターネットで調べるしかありません。
    しかし、左派は日本政府に文句ばかり言い、そんなに中国・韓国が反日になった原因を教えたいなら自分達が講師になって教えるべきです。
    また、日本は右傾化し一方的な主張ばかりすると武力衝突に繋がるとの意見もありますが、世界の隣国同士を見たら到底考えられず、他の外国人に鼻で笑われるでしょう。

  • サムゲタンさんへ
    なるほどなあ、と思います
    なぜ、日本において、統一した方向性で核心をつく教育ができないのか、というと、近代において国民自らが勝ち取った社会ではないから、ではないかと思います
    日本は、敗戦によって得た、というか、与えられた現代社会と近代史です
    また、戦前に軍部主導の政府にとって都合のよい改悪された歴史認識があり、反動で改悪歴史と重なる正当な歴史認識に触れることもできません
    同時に、アジア解放という理念も、思想弾圧打破もどちらも正しい事実であり、右左翼とも事実に基づくと主張します
    統一される歴史認識を形作るには、現代社会の草創期つまり敗戦から時間が経ち過ぎた

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。