【目がテン】日本人が超戸惑ったタイ人の発想・行動のワケ

 

ネットを見てたら、たまたまバンコクで働いている日本人のグチを見つけた。
最近タイへ移動した彼はみんなをまとめる立場にあったから、距離を縮めて職場の雰囲気をアゲていこうと、4人のタイ人スタッフを連れて日帰り旅行を計画する。
もちろん費用はすべて会社持ちだ。

で当日の朝、待ち合わせ場所には6人がきた。
4人のスタッフと初めて見る中年女性が2人いたから、「この人たちは一体…」と思ったら、2人の女性スタッフがそれぞれ母親を連れてきたことが判明する。
娘の見送りと上司へのあいさつのために来るなんて、よくできたお母さんだなと感心したこの日本人は、まだタイ人のことをまったく分かっていなかった。
用意した車にその母親も乗り込むのを見て、はじめて彼は事態を理解する。
彼は日本人らしく事前にしっかり旅行の計画を立てていたけど、スタッフが上司に無断で母親を連れてきて、一緒に旅行をしようとする事態は完全に想定外。
「おまえら、マジで何してくれてんの!?」とプチパニックになるも、非常識だからとここで親を帰らせたら、娘も怒って帰る予感しかない。
さいわい余裕をもって大き目の車を用意していてスペースはあったし、この親睦会を台無しにするわけにもいかないから、仕方なく親も連れて行くことにした。
4人のスタッフが旅行を楽しんでくれたのはいい。
でも、オプションの2人も観光地で写真を何枚も撮って、食べ放題のレストランで満腹になって旅行を満喫したことには、彼としてはどうしても納得いかない。
それでもさすがに、職場のあるビルへ戻ってきて解散する時には、「今日はありがとうございました。これからも娘をお願いします」と母親が頭を下げてくれた。
というのは彼の幻想で、感謝の言葉もなく母親と娘はサッサと帰ってしまった。

職場の親睦会にどうして親を連れてくるのか?
なんで事前に自分の許可をとろうと思わなかったのか?
「ありがとう」のひと言もなかったのはなぜなのか?

さっぱり分からないのは自分だけで、他のスタッフは何の違和感も感じていないのを見ると、彼にはタイ人の価値観や発想がさらに一層分からなくなった。
これから彼らと一緒にやっていけるか不安になったと、日本人リーダーがSNSでグチってた。

 

この話を知って、なつかしい思い出がよみがえってきた。
15年ほど前にこれと同じ話を、バンコクの日系旅行会社のオフィスでも聞いたことがある。
1日ツアーの予約をしにそのオフィスへ足を運ぶと、30代の日本人社員が対応してくれて、ツアーの予約をしたあとアレコレ話をしてたら、彼は最近感じたタイ人スタッフへの不満を話し始める。
「1+1+1」は団結力によって5にも10にもなると、少年ジャンプみたいなことを考えていた彼も親睦会としてスタッフと旅行をすることにした。
そしたら当日、スタッフが母親を連れてきて一緒に旅行をするというから、出だしからワケが分からなくなる。
タイ人の考え方が理解不能になった彼は、長年バンコクで働いている日本人に聞アドバイスを求めると、その人はタイ人を理解する2つのキーワードを紹介してくれた。
それが「マイペンライ」と「家族愛」。

*マイペンライとは「大丈夫、気にすんな、ノープロブレム」といったタイ人気質で、どんな事態も受け入れる銀河系のような広い心だと個人的に思ってる。

 

乗客を降ろした後、素足になってハンモックでリラックスするバスの運転手。
タイ人のマイペンライ精神を象徴しているよう。

 

その日本人がバンコクで仕事をしていたある日、部下のタイ人がちょっとミスをやらかしたことが分かった。
みんなの前で怒ると彼のメンツを無くしてしまうから、部下と一対一になって、会社や本人のためにもしっかり注意しつつ、でもまあ、仕事で失敗はつきものだとフォローも入れておく。
すると彼の口から、「マイペンライ」という言葉が出てきたから絶句する。
「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」という考え方は分かるとしても、怒られた側が「そんなミスは大したことない」と度量の大きいところを見せるのはまったくの想定外で、その日本人はカルチャーショックを受けた。

それともうひとつ、タイ人には家族、特に母親をすごく大切にするという特徴がある。
タイ人の男性が出家する理由に家族の幸せを願うことがあるし、家族の生活を支えるために、自分を犠牲にして性産業で働く女性も多い。
それと何か良いことがあると、それを家族とシェアしようと思うのはタイ人にとって自然なことだと、タイに長く住む日本人は言う。
親を大事に思う気持ちは人類共通でも、日本人から見るとタイ人の家族思いは際立っていて、ネットには日本人のこんな感想がある。

・タイ人の家族愛は日本人には理解ができないくらい
・タイ人はなぜあそこまで、親を大事にするのでしょうか?
日本人感覚だと異常なレベルに感じられます。

タイ人は細かいことを気にしないマイペンライな人たちで、家族をとても大切にして幸せを共有するから、会社の旅行にも平気で親を連れてくるのだとその日本人は理解した。
でも、タイ人の「配慮しなさすぎ問題」は彼にとって大きな不満だったから、ついついグチりたくなるらしい。

 

会社の旅行に無断で母親を連れてきて、(他人の金で)思いっきり楽しんだ後、2人そろってひと言の感謝もなく去って行く。
始めから終わりまで、日本人には理解に苦しむこの行動をタイ人はどう思うのか、知人のタイ人に聞いてみた。
ちなみにそのタイ人はアラサーの女性で、イサーンという田舎で生まれてバンコクの大学で学んだ後、日本の大学に留学してそのまま日本に住んでいる。
そんな経験を持つタイ人からすると、それにはマイペンライ精神と母を思う気持ちと、もうひとつ別の要素があるという。

「わたしならしないけど、そういう身勝手なことをするタイ人は確かにいる。そんな配慮のない行動をするのは地方のタイ人で、バンコクで生まれ育った人ならきっとしない。自分も田舎の出身だから、まわりのことを考えない身勝手な行動をしているのに、「ジコチューで行こう!」という自覚のない人のことはよく分かる。わたしはバンコクにも住んでいたから、特にお金のある人たちはマナーが身についていると感じた。タイは超格差社会だから、カネと高い学歴のあるバンコクの人間がイサーンの人間を『礼儀しらず』とバカにすることはよくある」

ということで、物事を深く考えないマイペンライ精神とただまっすぐな家族愛、それと田舎出身の素朴な発想から、会社の旅行で勝手に母親を連れてきて、何も言わず帰ってしまう現象が発生したらしい。
でも本人は善意のカタマリだから、「なんでこんなことをするんだ!」と問い詰められたらきっと泣きだす。
「郷に入っては郷に従え」の法則で、日本人がタイ人の価値観や発想を理解していくしかない。
それか、分からないことは理解しようとしないとマイペンライ的に考えるか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。