日系ブラジル人、「日本人のステレオタイプ」に戸惑うの巻

 

20年ほど前に見たテレビ番組で、白人の両親のもとに生まれ、大坂で育った小学生の男の子が登場した。
その子は金髪&青い目をしていても、中身はコテコテの大坂人。
英語は簡単な単語しか知らなかったけど、大阪弁なら、ネイティブだから完璧に話すことができる。
白人の外見・ポンコツな英語・流ちょうな大阪弁というコンボで、「白人でも英語なんて無理やで~」(この大阪弁あってる?)と嘆く小学生に、スタジオにいたタレントや観客が爆笑した。

 

いまの日本にいる人の約 98%は日本人と言われている。
移民大国のアメリカやオーストラリアなどでは、白人や黒人、アジア人、ヒスパニック系など、さまざまな人種の人たちが街を歩いている。
でも、島国の日本は自分たちの都合で”鎖国”ができたし、現在でも全国のどこへ行っても同じ色の髪と目、肌を持つ人々が圧倒的に多い。
ちなみに、この同質性の高さは隣国の韓国にも当てはまる。

日本人はそんな国で育つから、英語がダメでも完璧な日本語を話す白人がいると驚くし、逆に、白人や黒人が流暢な日本語を話すとビックリする。
外国人、特に欧米人からすると、日本人には外見から言語を判断する傾向が強くあって、「外国人は日本語を話せない」という信念を持っているらしい。
そんな日本人のステレオタイプを大げさに表現し、もはや偏見のように見える動画がこちら。

 

 

*動画が削除される可能性があるから、簡単に内容を書かせてほしい。

ある日本のレストランで、「すみませ~ん」と客に呼ばれたウェイトレスがテーブルへ行くと、そこには3人の白人と1人の黒人、そして見た目が日本人のアジア人が座っていた。
そんなパーティーを見たウェイトレスは、「この中で日本語を話せるのはこの日本人っぽい人だけだな」と思い込み、彼女はその人に日本語で話しかけてオーダーを取ろうとする。
でも、実際には逆で、そのアジア人はアメリカ人で彼女だけが日本語を話せず、残りの外国人たちはみごとな日本語を話すことができた。
その中の1人の白人は千葉県で生まれ育ち、千葉は漁業とラッカセイで有名だとアピールする。
それでもウェイトレスは「外国人は日本語を話せない」というステレオタイプを壊すことができない。
日本語を話す外国人を無視して、日本語が分からない日系アメリカ人に日本語で話しかけてオーダーを取ろうとする。

もちろんこれはコメディだ。
実際の日本でこんな状況はまずあり得ないし、もしあったとしても、ウェイトレスは外国人と日本語でコミュニケーションを取るはず。
でも、特に欧米人から見ると、日本人は外見から「この人は日本語を理解できない(できる)」と判断する傾向が強い。
そんなステレオタイプとぶつかって、日系ブラジル人が戸惑ったという話を聞いた。

 

その人は日本で生まれ育ち、小さいころに両親と一緒にブラジルへ移住した。
現地の小学校から大学まで卒業した彼は完璧なポルトガル語をマスターし、また両親と自由に話すぐらいの日本語能力も身につけた。
でも、日本語能力試験に合格することが目標ではなかったから、彼のスピーキング能力は高かったものの、漢字の理解は小学校の低学年レベル。

そんな彼が日本にやってきて、ある時、電車で移動するためにチケットを買おうとした。
でも、路線図には漢字で駅名が書かれていたから、彼にとっては謎文字が並んでいて、ほとんど読むことができなかった。
「困ったな」と思って彼は振り返り、後ろに並んでいた日本人のおじさんに、「すみません、〇〇まで行きたいのですが、いくらですか?」と尋ねた。
するとおじさんは驚いて、「え? そこに書いてあるじゃないですか」とその場から表示にある駅を指さす。
「え~っと、どこですか?」と戸惑う彼を、おじさんは黙って見つめる。
「なんでこの日本人は、こんな簡単な漢字を読めないと言うんだ?」と不思議に思っていることを察した彼は、自分の人生を超簡単に説明すると、「そうなんですか」と謎が解けて笑顔になったおじさんに、目的地までの料金を教えてもらった。
これにて一件落着。
でも彼としては、「おまえは何を言っているんだ」という顔でじ~っと見られたことには戸惑ったし、かなり恥ずかしかった。

これは30年ぐらい前の出来事。
現在の日本の都市部なら、どの駅の路線図にもローマ字表記はある。
このころ日本にいた日系ブラジル人の話だと、日本人の外見でカタコトの日本語を話すと、日本人から不審がられるのは「日系人あるある」だった。
そんな日本も国際化・多文化共生の波を受けて、30年前に比べると、外国人が住む環境は大きく変わった。
人々の意識も変化したから、いまのテレビ番組で「英語を話せない白人を笑う」ような内容が放送されたら、きっと「差別的だ!」といった批判が殺到する。
その一方で、外見と言語の日本人のステレオタイプはあまり変化していない気がする。

 

 

【日系人の評判】ブラジル人がサッカーで日本を応援する理由

【日本とブラジルの関係】移民した理由と背景、苦闘と成功

日本への世界の評価や印象・中南米編「科学と伝統と平和の国」

世界よ、これが日本の夏だ。蒸し暑さに外国人「軽く死ねる」

試合終了からのゴミ拾い。日本人のマナーと世界の反応。

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。