【日系人の評判】ブラジル人がサッカーで日本を応援する理由

 

「日本がブラジル以外の国とサッカーの試合をするとき、ほとんどのブラジル人は日本を応援します。これは本当です」

知り合いの日系ブラジル人からそんな話を聞いて意外に思ってワケを聞いたら、「ブラジル人は日本が好きですから。ブラジル社会で日本人や日系人には、教育レベルが高くて熱心に仕事をするし信頼できるという良いイメージがあります」とサラリと自分をふくめて言う。

数年前にそんな話をしていた日系ブラジル人が先週の木曜日、「国際日系デー」ということでSNSでこんな投稿をシェアしていた。

 

 

日露戦争の勝利から3年後の1908年、多くの日本人移民を乗せた船・笠戸丸(上のKASATO MARU)がブラジルのサントス港に到着。
この日が6月18日だったから、政府の定めた「海外移住の日」になっている。
今年はそれから112年目で、上の投稿にも「112 anos(年)」とある。

日本にいる日本人でこの記念日に関心のある人は少ないと思うけど、せっかくの機会なので、ブラジルで人生をかけた日本人移民や現地で生まれ育った日系人について知っていこう。

 

781人の移民を乗せ、笠戸丸は神戸港を出港してブラジルへ向かった。

 

 

これがサッカーとサンバの国ブラジルだ。

面積:851.2万平方キロメートル(日本の22.5倍)
人口:約2億947万人
首都:ブラジリア
民族:欧州系(約48%),アフリカ系(約8%),東洋系(約1.1%),混血(約43%),先住民(約0.4%)
言語:ポルトガル語
宗教:カトリック約65%,プロテスタント約22%,無宗教8%

以上の数字は外務省ホームページ「ブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)基礎データ」から。

 

 

「日本人は教育レベルが高くて信頼できる」というブラジルでのポジティブ・イメージは、ブラジルへ渡った日本人移民や現地で生まれ育った日系ブラジル人の努力のたまもの。

いまのブラジルにいる日系人の2世や3世には、弁護士や教師、政治家といった社会的に高い評価の仕事をしている人が多いから、ブラジル社会ではそれがそのまま日本のイメージにつながっている。

ブラジルへ進出した日本企業が現地で好意的に受け入れられたのも、それまで彼らが築いた「日本人は信用できる」という評判のおかげだ。
それはこんなエピソードからも分かる。

日系ブラジル人と日本人は不渡り手形をめったに出さないので、非日系ブラジル人は「Japones Garantido」(日本人は確実に信頼できる)とよび、小切手の受け取りを拒否しなかった。

ブラジルでの日系人への評価

 

ブラジルでは日本人に対するイメージがすごく良いから、2016年にリオデジャネイロでオリンピックが開催されたとき、観戦を終えた日本人が競技場のゴミ拾いをしているのを見て、本当にビックリした人も多かったという。

ブラジルではそういうことは清掃員のやることと思われていて、清掃員に対する社会的評価は差別的と言っていいほど低いから、自分たちが敬意を寄せる日本人が進んでそんなことをするとは思わなかった、という現地の反応を先ほどの日系ブラジル人から聞いた。

 

コーヒーの収穫をしている日本人移民

 

2018年のサッカーワールドカップ・ロシア大会で日本がベルギーと戦ったときも、多くのブラジル人が日本を応援していていた。
だから、2-0からのまさかの逆転負けにブラジル人もショックを受けたらしい。

「sportiva」の記事(2018.07.06)によると、このときブラジル人が日本のサポーターになって声援をおくった理由も、現地の日系人が築いた名声によるところが大きい。

ブラジルは世界で一番、日系人の多い国で、その数は160万人を超えるといわれている。ブラジル人なら誰もが日系二世、三世もしくは四世の知り合いがいるし、勤勉で礼儀正しい彼らは、ブラジルでも一目置かれる存在だ。

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ただサッカーについてはジーコ、カレッカ、ドゥンガといったブラジルのスター選手が日本でプレーしたり、その後も日本人選手を指導したりしたことで、「自分たちが日本のサッカーを育てた」という自負がブラジル人にはあるから、日本が好きで親しみを感じているという。

いまも現役の三浦知良選手の場合はブラジルで学んだサッカーを持ち込んで、日本のサッカーを革命的に変えた。

ブラジルは言ってみれば、サッカーで「恩返し」をしてくれたわけだ。

師匠にとっては弟子が自分を超えることが最大の恩返しで、それを「出藍の誉れ」なんていうけど、いまの日本はまったくこれができていない。
サッカーで日本がブラジルを超えるのは、あと112 anos はかかりそうだ。

 

これは安倍首相がウルグアイを訪れたときの様子。
「祖国の恥にならぬよう、日系人としのて誇りを失わず」という思いはブラジルの日本人や日系人も同じはず。

 

 

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4 件のコメント

  • >この日が6月18日だったから、政府の定めた「海外移住の日」になっている。(改行)今年はそれから112年目で、上の投稿にも「112 anos(年)」とある。
    >サッカーで日本がブラジルを超えるのは、あと112 anos はかかりそうだ。

    全くその通りです。たぶん、それでも無理だろうけど。

    >非日系ブラジル人は「Japones Garantido」(日本人は確実に信頼できる)とよび、小切手の受け取りを拒否しなかった。

    そうなのですよね。南北アメリカ大陸に滞在していると、人に関する「信用」が即ちクレジットでの「信用」と同じであることに、しばしば思い至らされます。これ、日本人にはあまり備わってない感覚なのですけど。

  • 南米の人たちは楽天的でテキトーなところがあると思います。
    日系人から、彼らは貯金をあまりしないと聞きました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。