反日と反中感情が高まるなか、日本にいる中国人の思いは？

「あなたたちの富士山が早く爆発することを祈ります」
「なぜ私たちの中国に流すのですか。あなたはバカですか」

日本が福島原発の処理水を海へ放出すると、中国政府は大反発し、一部の国民がこんな迷惑電話をかけるようになった。
上の２つは、わが静岡県内の市役所や町役場にかかってきたイタズラ電話だ。
富士山が爆発することを祈ると言っても、いま富士山には、たくさんの中国人観光客がいるという話を聞いたのだけど。
日本のネットの反応を見ると、富士山より先に中国への怒りが爆発していた。

日本の海洋放出は国際原子力機関（IAEA）が安全性を確認し、欧米各国が認めたものでまったく問題はない。
そもそも、フランスや中国の原発も同じことをしているのだから。
でも残念なことに、いま中国から、迷惑電話が日本の各地にかかってきている。
反日感情に触発されると、日本でも反中感情が高まってしまうが、それでも、「敵」を間違ってはいけない。
日本の味方を敵に回すと、日本がダメージを受けてしまう。

最近、東京にある飲食店のオーナーが看板にこんなことを書いた。

「中国人へ。当店の食材はすべて福島県産です。」

これがSNSで大拡散され、物議をかもす。

どう考えても、「中国人へ」はいらなかった。
これだと皮肉ではなく挑発で、表現は丁寧でも、中国人への敵意や悪意がにじみ出ている。
欧米人が見たら、きっと差別的に感じる人もいる。
第三者の外国人からしたら、イタズラ電話をする中国人も、こんなコトを書く日本人もどっちもどっちに見えてしまうのでは？
これでは日本人の名誉が傷つき、評判が下がってしまう。
それに、ここで言う「中国人」とはどの中国人のことなのか、おそらくオーナーは深く考えていない。日本人の反応を意識して、からかっただけだろう。

日本のメディアの報道では、今回の騒動について、2012年に中国で日本企業が襲撃されるなどして、大きな被害が出た反日デモに言及するものがよくある。（2012年の中国における反日活動）
その反日デモの数年後、「あの時はとても大変な思いをしました…」と語る中国人と会った。

彼女は日本人男性と結婚した中国人女性で、反日デモが起きた時には中学生の娘がいた。
そのころの日本では、多くの人が日本に関わる企業や店が攻撃される様子を見て、反中感情が高まっていた。
その中国人女性はそんな空気を気にせず（または気づかず）、友人とファミレスへ出かけて、中国語で楽しく話をしていた。
すると、日本人男性がやってきて、「うるさい！　日本から出ていけ」と言う。
中国で暴れているバカどもと自分はまったく違うのに、こんな理不尽な目にあってしまう。
ほかにも不快な経験を何度かしたけど、いちばん辛かったのは、娘が学校でいじめられたこと。
この時だけは泣いたと言う。

デモが収束した後、もうあんなツライ思いをしないように、彼女は友人と協力して、自分たちにできることを考えた。
それで、中国のSNSで日本の良さを発信し、日本の魅力を広めることにした。
そうすると、先ほどの日本人とは逆に、「おまえは中国に帰ってくるな！」といったコメントがくることもあったが、そんなことは想定済み。
それでも諦めずに、彼女がはおいしい食べ物や行って良かった観光地などを紹介し続ける。
中国人が日本を旅行すると、日本人の丁寧なサービスに感動し、８割の人は日本を好きになって帰っていくという話を聞いた。
実際、そんな印象はあったし、ネットではなく、直接相手を知ることで、きっと日中関係は良くなっていくと信じて、地道に活動を続けていた。

その中国人とは、もう連絡をとっていない。
だから、いまでも彼女が日中友好や自分自身のために、日本の魅力を発信しているのかは分からない。
でも、今回の騒動で、それまでの努力のほとんどが消滅してしまい、落ち込んでいることは想像できる。
そんな中国人はきっと全国各地にいる。

中国の対応は政府にまかせるしかない。
中国外務省に呼び出された駐中日本大使は、中国が行っている輸入規制について「欧州連合（ＥＵ）諸国などが輸入規制の撤廃を進めている中で、中国のみが流れに逆行している」「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない」と、逆に中国側に抗議した。
き然とした態度で、言うべきことをキッパリと言う人もいる。

日本国内で「中国人へ」と呼びかけたところで、「あなたはバカですか」と言う反日中国人には届かない。
日本に住んでいて、日本に利益をもたらしてくれる中国の人たちを怒らせて、敵に回してはいけない。
日本人と中国人のハーフの子供たちに、悲しい思いをさせてもいけない。
とりあえず一般人にできることは、「当店の食材はすべて福島県産です」という店で食べて、福島を応援することだ。