昭和の時代、いろんなモノゴトを独特の漢字で表すヤンキー文化があった。
「魔苦怒奈流怒」がマクドナルド、「摩武駄致」はマブダチ(親友)という意味になるのは、令和の日本人でも想像できると思うが「陀異守鬼」はどうだろう?
これは「大好き」らしい。
話は変わって漢字の母国・中国だ。
中国語にはカタカナがないから、すべての物事は基本的に漢字で表さないといけない。
それでマクドナルドはこうなった。
「麦当劳」でマクドナルドに近い発音になる。
ちなみに中国と台湾では使っている漢字が違うから、台湾のマクドナルドは「麥當勞」となる。
このほか肯德基(ケンタッキー)も元の発音に近い漢字を当てはめた音訳で、このパターンは人名に多い。
マルクスは「馬克思」、アインシュタインは「愛因思坦」、ニュートンは「牛頓」だ。
「牛頓」ならボクでも音ならつかめるけど、意味はさっぱり。
漢字は表意文字だから、言葉に意味を与えることができる。
「麦当劳」ではなくて「魔苦怒奈流怒」にするとただの音訳ではなく、禍々しい、おどろおどろしいといった悪い雰囲気を込めることができる。
こんな感じに、もとの言葉に近い発音と意味を兼ね備えた訳語が中国語にはいくつもあるので、今回はその中でも特に有名な言葉を紹介しよう。
中国の街を歩いていて、「蝌蝌啃蜡」という漢字を見かけたらどんな印象を持つか。
「虫へん」が気になると思うけど、これは「Coca-Cola(コカ・コーラ)」のこと。
コーラが初めて中国に登場したのは1920年代の上海らしく、そのころは「蝌蝌啃蜡」という漢字訳があてられていた。
でも、売上はイマイチ伸びず。
*「蝌蝌啃蜡」はひょっとしたら、薬のイメージだったかも。
それで懸賞金付きでCoca-Colaの新しい漢字表記を募集した結果、「これは素晴らしい!」と審査した人たちをうならせたのが「可口可乐」という言葉。
これなら「コカ・コーラ」の音に近いし、漢字の意味としてもふさわしいということで可口可乐が採用され、コーラの訳語としていまにいたる。
といっても1949年に共産主義の中華人民共和国が成立したあと、コカ・コーラ社は一度中国市場から撤退した。
その後1979年に中国・米国で国交を樹立したあと、再び中国に舞い戻って現在にいたる。
「可口可乐」は中国の漢字表記で台湾だと「可口可樂」、日本語では「可口可楽」だ。
「口と楽しい」だから日本人でも、この中国語が何かとってもポジティブなものだという想像がつくと思われ。
これで「口にすべし(可口)、楽しむべし(可樂)」、「口あたりがよい、美味しい」といったとにかくハッピーな意味になる。
ペプシコーラの中国語の「百事可乐(可楽)」もセンスのある訳語だ。
音は近いし、意味も絶妙で「すべてのこと(百事)が楽しくなる(可乐)」みたいに気持ちが明るくなる良い言葉。
想像してごらん、Coca-Colaの中国訳語が「蝌蝌啃蜡」の世界を。
真っ黒い飲み物でこんな複雑で重そうな名前だったら、口にするにはためらってしまうし、売れ行きが伸びないのも当たり前。
子どももハッピーになれる店を目指して、「魔苦怒奈流怒」と名付けることはありえない。
「可口可乐」となったコカ・コーラはいまの中国で大成功をおさめた。
漢字を変えただけで、消費者の受ける感じが大きく変わる。
これが表意文字のもつ、アルファベットやカタカナにはない力だ。
いまネットでたまたま「好山病」という言葉を見た。
「高」を別の文字にするだけで印象がガラリとかわるのは、まさに漢字のマジック。
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> 中国語にはカタカナがないから、すべての物事は基本的に漢字で表さないといけない。
うーん、正確には、カタカナもひらがなも表音文字がないから、「基本的に」ではなく、「絶対に」漢字で表さないといけないのですけど。
> マルクスは「馬克思」、アインシュタインは「愛因思坦」、ニュートンは「牛頓」だ。
音訳だけでは芸がないなぁ。せめて「可口可乐」「可口可樂」「可口可楽」くらいの「意味あり音訳」くらいは工夫してほしいところです。
意味だけだったら、マルクス→「軍神」(語源の「マルス」から)、アインシュタイン→「一個石」(独語の意味の通り)、ニュートン→「新頓」、とかでもいいと思うのですが・・・。でも、それでは誰も読めないでしょうね。
中国語では英語のアルファベットをそのまま表記する場合があります。
> 中国語では英語のアルファベットをそのまま表記する場合があります。
それは間違い。なぜなら英語のアルファベットは中国語じゃないですから。
あなたの主張は「中国語にはカタカナがないから、すべての物事は基本的に漢字で表さないといけない」ですよね。それが間違いだと、私は指摘しているのです。日本語をよく読みなさい。
英語のアルファベットをそのまま表記する場合があるのは、日本語でも同じですよ。
じゃあそれでいいんじゃないですか。
卡拉OK(カラオケ)を「中国語ではない」と言う中国人はいないと思いますが。
台湾の人に、漢字をどうやってスマホ入力するの?と聞いたら表音文字があるんだと言っていました。どんなのだかは分かりませんが。
ハッキリおぼえていないのですが、知人の台湾人は漢字の部首みたいなものから入力してましたね。