2020年の今年の漢字は「密」。
コロナコで始まって、コロナで終わった一年だった。
来年は「脱」になるといいのだけど。
こんな感じで漢字は音だけでなく意味も表すことができる有能な文字だから、その年一年を漢字で象徴するイベントは中国、台湾、シンガポールなどでも行われている。
中国が選んだ今年の漢字は「民」だった。
「民」にきまった理由は新型コロナ症対策などで、国民の暮らしに深く関わる取り組みが印象的だったからという。
やっぱり中国もコロナだったか。
ところで、この民という漢字の成り立ちはご存じだろうか。
クリスマスの日の話題にふさわしくない、かなり残酷な話だ。
カタカナのない中国語ではコカ・コーラも漢字表記
言うまでもなく、漢字の歴史はめっちゃ長い。
3000年以上前の中国最古の王朝・殷の時代には、漢字が文字として使われていたと考えられている。
ちなみに日本では6世紀ごろから漢字が使用されたという。
日本ではこの王朝を「殷」と呼んでいるけど中国では「商」、殷は「商の別称」になっているから「商=殷」と考えておこう。
数千年前は地球上のどこにも、人権なんていう“ぜいたく品”はなく、ミカサの言うように「この世界は残酷だ」という状態で、戦争に負けて捕まった人間などは奴隷として売買の対象となっていた。
殷王朝の時代にも奴隷は当たりのようにいて、中国の高校生用の歴史教科書によると彼らはモノのように簡単に“破壊”された。
商朝の奴隷制度は非常に残酷で、その一つの表現は「人祭」と「人殉」を実行したことだ。人祭とは奴隷主貴族が神霊と祖先を祀る時に、奴隷を殺して供え物にしたことである。人殉とは奴隷主を死後葬る時に、奴隷を殺し、あるいは活き埋めにして殉葬品としたことだ。
「中国の歴史 明石書店」
*「活き埋め」は「生き埋め」だと思うけど、中国ではこう書くのかもしれない。
貴族か王かわからんが、たとえば安陽にある大きな墓には400人ほどの奴隷が殉葬されていて、殷の時代には一回の宗廟の祭祀で約500人の奴隷を殺したと教科書にある。
「民」という漢字はそんな社会の中で生まれたのだ。
「民」とは君主やその家臣に仕える奴隷を意味しています。逃げてしまわないように足をクサリでしばり、目までつぶしてしまったのです。
「図解 漢字の成り立ち事典 (教育出版) 辻井京雲 」
つまり「民」という漢字は、針のような物で目をつぶされた奴隷が起源だった。
ただ別の説もあって、漢字博士の白川静氏によると、奴隷ではなく神への従事者が目を傷つけて見えなくしたという。
どっちにしても、あえて目をつぶすことには変わらない。
民の字の大きな「跳ね」はその針を表している。
こんな成り立ちから、「それは現代も変わらない。多くの人は真実が見えない盲目状態になっている!」なんて話を展開するかは読者しだい。
ちなみに日本語の「たみ」の語源は、田んぼの稲を見て育てる人を表す「田見(たみ)」という説がある。
上の本にある説明
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「殷」と言えば、「殷の紂王」「妲己」「酒池肉林」といったとんでもないエピソードばかりを連想します。
殷の別名が「商」であることが、後々、儒教において卑しむべき身分の者として「商人」を否定する元になったという話を聞いたこともあります。でもって「士農工商」で「商」が一番下になったと。