漢字の国・中国を旅行していて、日本人だけが困ること

 

先ほどの記事で、中国旅行で広州へ行ったときのことを書いた。
内容は三国志のことだけど。

中国人ガイドも驚く「日本人の三国志好き」、その背景は?

 

 

日本も中国も日常生活で漢字を使うけど、使っている漢字は違う。
日本語の漢字では広州だけど、中国の漢字(簡体字)だと「 广州」になる。
ちなみに、香港と台湾の漢字(繁体字)では「廣州」だ。

 

日本人同士の場合、「広州へ行った」と文章ならすぐに理解できるけど、これが話し言葉だとそうもいかない。
中国には広州と杭州があるから。

中国旅行をしていて宿で日本人旅行者と会うと、

「どこから来たんですか?」
「コウシュウです」
「コウシュウ?広いほうですか?それともクイのほう?」
「広いほうです」
「ああ、広州ですね」

みたいなやり取りを何度もやった。
中国語の発音だと杭州は「ハンジョウ」、広州は「グワンジョウ」になるけど、日本人はふつうは日本語で読むからこんな手間がかかる。
ちなみに下の都市を中国語ではこう発音する。

成都「チェンドゥ」
重慶「チョンチン」
西安「シーアン」
南京「ナンジン」
太原「タイユェン」
瀋陽「シェンヤン」

ボクはこれらの都市を「せいと」「せいあん」「じゅうけい」と呼んでいたから、中国旅行をしていて、アメリカ人やヨーロッパ人など日中以外の外国人旅行者から、「どこから来たんだ?」と質問されるとわりと困った。
「form セイト」「from じゅうけい」と答えても、相手はまったく分からない。
「は?」という顔をされる。
ボクは中国語読みが分からないし、紙に都市名を漢字を書いても欧米人はその漢字を読めない。

いまならスマホを使えば簡単に伝えられるけど、インターネットがなかった時代は「地球の歩き方」を取り出して、地図を開いて「ヒア」と指さすしかなかった。
そんな「ゴー☆ジャス」みたいなことをやっていた日本人は、きっとボクだけではなかったはずだ。

でも例外はある。
上海の現地ガイドから、「なんで日本人は上海を「じょうかい」「うえうみ」と呼ばないで、中国語発音で呼ぶのですか?」と質問されたけど、まったく答えられなかった。
青島も「チンタオ」と現地の発音で言う。
中国の都市名で、日本語読みする場合と中国語読みする場合がある理由はわからない。

 

日本と中国には三国志や水滸伝など共通の古典があるから、中国人と話すときのいい話題になる。
でも、やっぱり漢字の読み方が違うから困る。
この前の記事に登場した「張飛」は、中国語の読み方だと「ジャン・フェイ」となる。誰が分かるかと。
漢字だと「张飞」だから、中国人がそう書いてくれたら類推はできた。

曹操は簡単で、「ツァオ・ツァオ」だからまあ分かる。漢字も「曹操」だ。
劉備は「リウ・ベイ」だから何とか分かったけど、「刘备」だけだと苦しい。
むずかしかったのが「スン・チュアン」だ。
耳で聞いても謎で、漢字で書いてもらっても「孙权」だから、それが「孫権」と気づくにはすこし時間がかかる。
「ジューガー・リャン」は「诸葛亮」のこと。

 

ここまで書いてきたプチ・トラブルの原因は、日本人が中国の漢字を日本語で読むからだ。
だから外国人旅行者や中国人と話すときに、中国語の読み方が分からなくて困ったという日本人旅行者はよくいた。
中国旅行をしていてこんな思いをするのは、例外的な人をのぞけば世界で日本人だけ。
いまはスマホやタブレットがあって旅行も別次元で変わったけど、いまも中国を旅行していて、日本語読みのせいで苦労する日本人はいると思う。
これはもう宿命だ。

 

ちなみに中国人の場合、テレビやラジオで人名を日本語で読んでもOK。
だから国家主席の習近平氏を「シー・チンピン」ではなくて、「シュウキンペイ」と呼んでもいい。
でも韓国人の場合、日本語読みはダメで現地発音が原則だ。
だから文在寅大統領を「ブンザイイン」ではなくて「ムン・ジェイン」、朴槿恵氏を「パク・クネ」と呼んでいる。

 

 

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4 件のコメント

  • 日本人と中国人は筆談が通じると言っても、お互いなんとなくニュアンスは分かるという程度ですからね。
    ところで、アルファベットと一口に言っても言語によって形や文字数、発音は違ったりしますから、英語という共通語があるお陰で表に出ないだけで、実は日本人と中国人の悩みみたいなものは、世界で普遍的なものなのかもしれません。

    地名の日本語読みと中国語読みの基準は分かりませんが、上海、青島ともに古くから列強の租界や植民地があり、国際都市として栄えた港町であること、日本も当時から深い関わりがあったことから、国際的に通じる中国語読みが日本でも定着したのかもしれません。
    そう考えると、中国語読みしている地名は沿岸部に多い気がします。

  • 中国旅行では筆談が楽しい、と言う日本人は多くいました。
    少しでも意思の疎通がはかれるとうれしいですからね。
    現地読みとそうではない場合の区別はそうかもしれません。これについては調べてみても分かりませんでした。

  • 中国都市名の日本語読み・中国語読みですが、「シャンハイ」「チンタオ」「ナンキン」「シーアン」「ペキン」というふうに、ことさら中国語に似せて発音するようになったのは、おそらく、外交や貿易で本格的に交流が始まった明治期以降の話だと思います。江戸期以前には、たとえば三国志に都市名が出てきた場合なんかでも、日本語漢字読みを使っていたに違いないです。そもそも当時の一般人は中国語読みなんて知らないはずだから。
    また、地元中国の人々だって、これまで漢字の読みがずっと一定していたわけではなく、時代や地域によって大きく変化してきました。そのことは、例えば日本語の漢字一文字に対して、その読み方に「唐音」「呉音」「漢音」という中国の時代名称を冠した読み方が色々あることから分かります。「北京」を「ペキン」と読むのは江戸時代くらいから? 現代中国語では「ベイジン」の方が近いようですね。
    そもそも、現代標準中国語(北京官話)は、中国東北地方において官僚(=マンダリン)が独自に使用していた言語を、西洋人が発音(四声など)を再整理して体系づけた人工言語であり、各々の地元で使われている「伝統的中国語」や「中国語読み」とはかなり違いがあります。

  • 中国には時代と地域で漢字の読み方が違いますし、いまの日本での読み方は幕末・明治神宮に中国との付き合いが本格化してから伝わったのでしょうね。
    確証がないので、推測ですが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。