数年前、中国旅行で南部の広州というところに行ってきた。
広州はベトナムの近くで香港のすぐ上。
この地図では千葉の隣にあるところだ。
日本の漢字では広州だけど、中国の漢字(簡体字)だと「 广州」になる。
広州は北京や西安のように、中国の歴史では重要視されていなかったから、ぶっちゃけ観光名所にとぼしい。
そんな広州で訪れたのは「陳氏書院」という観光スポット。
*一番上の写真がそれ。
広州市のある広東省には「陳さん」がたくさんいて、「陳氏書院」はその先祖をまつる廟になる。
さらに血縁と教育を重視する彼らは、ここを一族の子どもを教育する「書院」にした。
そんな中国らしい建物の陳氏書院を現地の日本語ガイドと歩いていたら、こんなものを見つけた。
橋の上に馬に乗った武将がいる。
よく見ると、長いひげをしていて手には蛇矛(だぼう)のような武器を持っているじゃありませんか。
「これは張飛?とするとこれは、「長坂の戦い」の場面か」と思って、ガイドに聞いたらズバリ正解。
この彫り物は三国志の名シーン、長坂の戦いをあらわしていた。
日本なら弥生時代の3世紀、主君の劉備玄徳を守るために、張飛という豪傑がこの橋の上で曹操の軍を迎え撃った。
三国志好きなら誰もが知る場面だ。
張飛が目をいからせ鉾を横に構えながら「俺が張飛だ、死にたい奴からかかって来い!」と呼ばわると、あえて張飛に近付く者はいなかった。この為に劉備は逃げ延びることができた。
「よくわかりましたね!」と言って、ガイドはその場で5分ぐらい長坂の戦いの背景を説明する。
下に説明があった。
張飛と蛇矛
さすがは中国人ガイド、三国志のことをよく知っている。
それをほめると、「日本人のおかげです」と言われた。
そのガイドははじめ、三国志のことは知っていたけど詳しくはなかった。
でも中国にやってくる日本人のお客さんには、三国志好きの人がよくいる。
なかには彼には手も足もでないような深い質問をする人もいて、その答えを調べているうちに彼も三国志に詳しくなったという。
その中国人が日本語ガイドになって驚いたことのひとつに、「日本人は三国志を異常に好きだし、おそろしく知識がある!」ということがあった。
彼の感覚では、中国旅行に来る日本人は普通の中国人より三国志のことをよく知っている。
三国志が好きな日本人ならいつかは聖地巡礼をしてみたいと思うだろうし、そういう人は予習をバッチリすませておくはずだ。そんな日本人と会ったら中国人はきっとビビる。
日本人の三国志愛は不変で普遍で、いまも東京国立博物館で特別展が開かれている。
*2019年9月16日(月)まで。
本展は、「リアル三国志」を合言葉に、漢から三国の時代の文物を最新の成果によって読み解きます。
いまの日本では三国志を紹介するだけでは特別展は成り立たない。
「リアル三国志」みたいに独自のテーマをもつ必要がある。
WEB歴史街道にも三国志の記事があった。(2019年08月15日)
三国志の英雄・曹操、劉備、孫権は史実でも本当にすごかったのか
上の特別展にあわせて、月刊誌「歴史街道」9月号も「三国志・男たちの五大決戦」という特集記事を載せている。
その記事の中に三国志研究の第一人者、渡邉義浩氏が解説があって、曹操についてはこんなふうに評価している。
曹操は儒教第一主義を否定して新しい時代を開いた。
人材登用では、儒教の知識やその教えに合った人物を官僚にするのではなく(漢の孝廉を参照)、曹操は才能を重視した。例えばワイロを受け取るような心の汚れた人間は儒教的にはNGだけど、能力があれば曹操は問題にしなかった。
記事には、「中国史上でも、儒教に異議申し立てをしたのは、ほかに近代以降の魯迅と毛沢東しかいません」とある。
中国社会で儒教が重要視されなくなった結果、仏教が注目されて、その後中国で仏教が普及することにつながった。
遣唐使が中国で学んだ大事なことに仏教がある。
曹操が儒教を否定しなかったら中国仏教は別ものになっていて、日本の歴史も変わっていたはずだ。
キリがないから、劉備や孫権については歴史街道9月号を読んでほしい。
代わりにネットの反応を見てみよう。
毎度のことながら、三国志ネタは食いつきがいい。
・あいつらはマジですごかったよ
・関羽が全部悪い
・義に厚い劉備と自分勝手の曹操、そのどちらでもない孫権。
・関羽と曹操しか認めない
・劉備が無能だったらエンショウや曹操暗殺計画で捕まってしんでるぜ。
・いや関羽は史実を知ると何で光栄のゲームで関羽の知力が80超えてるのか聞きたくなるよ
・劉備の仁徳に優秀な人材がたくさん集まってくるところが三国志演義の面白いではあったな
まじめに生きれば、いい人と会えて、いい仕事が出来るのかと希望が持てるという意味では
ストーリーとして成功してると思う
博物館が三国志展を開けば人や注目が集まるし、雑誌も特集記事を組む。
日本にはそれなりの需要があるということだ。
するとネットでも話題になって、山のような書き込みがされて三国志談義がはじまる。
そんな書き込みを読んでるだけでも、けっこう勉強になる。
そういう人が中国に行くと、「日本人は三国志を異常に好きだし、おそろしく知識がある!」と中国人を驚かせることになる。
そしてそんな日本人と出会って中国人も三国志に詳しくなる。
日中には共通の古典があるから、こういう好循環が生まれる。
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