「ドイツを漢字で『独』と表すのは差別的だ!」
と、日本に住んでいるドイツ人が怒っているらしい。
東京新聞の記事(2017年4月1日)
「独」国名の当て字やめて 漢字愛するドイツ人・八王子のシュミッツさん
このシュミッツさんは漢字の研究者で漢字の本も出している。
そんなドイツ人の目には、ドイツを意味する「独」の漢字が差別的に見えてしまう。
「独」は「けものへん」だからそう思うらしい。
そんなことでこのドイツ人は、「『独』の漢字を使うのはやめてほしい」と前から考えていたという。
意外にも、漢字の第一人者である白川静氏もこの考えに賛成していた。
ドイツを「独」の字であらわすことを「それは日本人の中華思想ですよ」といって同意したと記事にかいてある。
それでこの人は、「ドイツを『独』ではなくてカタカナ表記にしてほしい」とうったえている。
新聞を読んでいて、ドイツの出来事を報じた記事の見出しに「独」があると悲しい気持ちになる。「余計な意味が込められないよう、漢字を使わない国には当て字をせず、カタカナで統一してほしい」
「独」国名の当て字やめて 漢字愛するドイツ人・八王子のシュミッツさん
ドイツがカタカナでの表記になるとしたら、「ドイツ」か「ド」になる。
「ド」はさすがに定着しないだろう。
でも「独」を使えないとしたら、世界史に影響がでてくる。
1940年の「日独伊三国同盟」が「日ドイツ伊軍事同盟」となるとゴロが悪い。
慣れの問題かもしれないけど。
これと同じようなニュースを数年前に、ニューズウィーク誌で見たことがある。
モンゴル人が「モンゴルを漢字で『蒙古』とかかないで!」と日本人にうったえる記事で、たしかにその記事を読んだ記憶はあるけれど、ネットで探してもその記事が見つからない。
「でも絶対に読んだんだ!」ということで話をすすめていきたい。
たしかに漢字を見ると「蒙古」は良い意味ではない。
というか、かなりの悪意を感じる。
「古」よりも「蒙」の漢字のほうがひどい。
「蒙」という漢字は、「道理をわきまえず、愚かなこと。無知なこと(デジタル大辞泉の解説)」という意味になる。
司馬遼太郎氏も「街道をゆく」で「蒙古」という漢字についてこう書いていた。
「蒙古」という漢民族がことさらモンゴルの音にあてた漢字には、馬鹿、無智と いう語感が重なっている
だから「啓蒙」なんて言葉もある。
「無知で愚かな人たちに、正しい知識をあたえて教え導く」ということを「啓蒙:蒙を啓(ひらく)」という。
そんなことで蒙古という漢字には悪い意味合いがあるから、日本ではこの言葉の使用をやめるよう求める運動をしているモンゴル人や日本人もいる。(蒙古)
とはいえ「蒙古襲来(元寇)」や蒙古斑みたいに、すっかり日本社会に定着していて変えるのがむずかしい言葉もある。
個人的には「独」が差別的というのはピンとこないけど、「『蒙古』は差別的だ!」というのは理解できる。
日本人が「蒙古」という言葉を使うことを嫌がり、それに反対する活動は以前からおこなわれていた。
これは2007年のハワリンバヤルのパンフレットに掲載された意見広告のキャプチャー
ハワリンバヤルは日本最大のモンゴルフェス(モンゴル祭り)。
2018年は5月の4日と5日におこなわれる。
くわしいことはここを。
今の日本にはモンゴル人がたくさんいる。
相撲ではモンゴル人の力士の活躍は目ざましく、日本人の力士がかすんでしまうほど。
「蒙古」という漢字を嫌っているモンゴル人がたくさんいて、「『蒙古』の漢字は使わないでほしい」という主張は前からしていた。
そのせいか、今では日常生活で「蒙古」という漢字を見る機会が少なくなったと思う。
でもそういえばちょっと前に、しゃぶしゃぶ屋で「蒙古炎鍋」というのは見たぞ。
「独」ではなくてカタカナで書くようにしほしい!
という主張も受け入れられて、そのうち日本の新聞やテレビで「独」という漢字が消えるかもしれない。
*最近、モンゴル出身の力士照ノ富士関に対して「モンゴルに帰れ」という人種差別的なやじが飛んで問題になった。
これはアウト!
先ほど司馬遼太郎氏が、漢民族(中国人)がつくった「蒙古」という漢字には、馬鹿、無智と いう語感が重なっていると書いていた。
漢民族はよくこういうことをするのだ。
中国のまわりにある国に対して、悪意をもって差別的な漢字をあてることがよくある。
世界史を学んでいたとき、「匈奴」・「鮮卑」・「烏孫」という北方の遊牧民族のことを知ったときにそれを感じた。
「奴隷の奴、卑(いや)しい、鳥」といった言葉にはあきらかに漢民族の蔑視(べっし)がある。
鮮卑族がつくった仏像(中国の雲崗石窟)
韓国の韓服に似ているような?
おまけ
特定の国に悪い感情をもったため、その国の言葉をなくしてしまった。
湾岸戦争のときに、アメリカ人がそんなことをしている。
米国ではフライドポテトをフレンチフライ(French fries 「たっぷりの油で揚げたフライ」の意)というが、フランスがイラク戦争への加担を拒否したため、これに腹を立てた一部の米国民が不買運動などの反仏活動を行い、その一環としてフレンチフライドポテトを「自由のフライ」と言い換えた。
(ウィキペディア)
差別ではないけど悪意があっていやらしい。
それよりなにより、子どもっぽい。
でもアメリカ人はこんなイタズラのようなことをよくする。
下院のカフェテリアのメニュー
アメリカでは議会までもこんなことをしていた。
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蒙古は蒙古斑や蒙古襲来以外はあまり使用しないから、実際問題はあまり問題ない。さすがに現代の文章でモンゴルの国を「蒙国」と表記するのはそしりを受けても仕方ありません。いっぽう、「独」なんて何ら悪い意味を持たない漢字だけどね。中途半端な漢字知識しか持たない外国人の話が話題になること自体が異常だけど
歴史教科書で蒙古はないと思いますが、日常生活では例えばきょねんセブンイレブンが「蒙古タンメン」というカップラーメンを発売しました。
商品に侮辱的な意味はないはずですが、モンゴル人が見たらどう思ったか。
「蒙古はダメ」という意見は前からありますが、なかなか一般的にはなりません。