日本人と中国人の”法やルールを守る感覚”の違い。中国の人情社会。

 

明治時代、ベルツというドイツ人が日本にやってきた。

ベルツは東京医学校(今の東京大学医学部)の教師となって、多くの日本人に医学を教えていた。

彼は花見を見て、日本人の様子にこう驚いている。

入り乱れて行きかうすべてが、何という静粛で整然としていることだろう。乱暴な行為もなければ、酔漢の怒鳴り声もしないー行儀の良さが骨の髄までしみこんでいる国民だ

「逝きし世の面影 平凡社」

日本人はルールを厳しく守る。
今でも外国人は日本人の行動を見て、よくそんなことを言う。

例えば、日本のスタジアムでサッカー観戦をしたブラジル人がそのことに驚いていた。
試合が終わると、日本人は自分のゴミを持って整然とスタジアムを出て行く。

ブラジル人がサッカー観戦の後にゴミを持ち帰ることはないし、怒鳴り声やケンカが起こることもある。

でも日本人はサッカーの試合で興奮した後に、とても静かに集団で移動していた。
そのブラジル人はサッカーの試合よりも、日本人の秩序ある行動の方が印象的だったと話していた。

日本人はルールや法律を厳しく守る。
でも日本の近くには、そうでもない国があるらしい。

 

 

その国の名は「中華人民共和国」という。

この「中華人民共和国」という国名の7割は”日本語”というのは、ココだけの話。

いま中国は春節(日本でいう正月)の真っ最中。
そんなめでたい中国で、ある警察官のした行動がニュースになっている。

レコードチャイナの記事(2018年2月19日)のタイトルを見たら、警察官が何をしたか分かるだろう。

駐車違反車両に警察官「新年おめでとう!処罰しません」―西安市

 

中国の西安市で、駐車違反の乗用車があった。
それを見つけた地元の警察官が違反の通知書に、「新年おめでとう」「本日は処罰しません」と書いてそれを車に置いた。

日本で警察官が「新年あけましておめでとうございます。本日は処罰しません」と反則切符に書いたら、その警察官が処罰される。
日本はそういう社会だから。

これがネットで拡散して、中国では賛成・反対の声が上がっている。

 

地元の警察はこれをどうみたか?
その場所は駐車していても問題のない場所だったとしたうえで、こう言っている。

警察はさらに、法律の厳格な適用と柔軟な運用を組み合わせた「人間的公務執行」だと説明した。

駐車違反車両に警察官「新年おめでとう!処罰しません」―西安市

 

記事によると、人情味あふれるこの「人間的公務執行」に対して、新京報という中国メディアはこう論じている。

「温情ある公務執行理念は、心が温まる祝日にあって、われわれにもう少し温かさを加えてくれる。(この方法は)尊重されるべきであり、これからも実施してよい」との考えを示した。

心温まる祝日でも、駐車違反はダメに決まってる。
というのは日本の感覚で、中国ではメディアもこの行為を認めて「これからも実施してよい」と、むしろすすめた。
さすが中国。

 

これに賛成する人たちはこんなコメントをしている。

「交通に特に影響を与えていなければ、祝日のこういう公務執行は人情味があるよ」
「新年おめでとうとすれば、罰金を科すよりも(駐車違反をしてはならないということが)しっかりと記憶に残る」

反対派の人たちはこうだ。

「法制社会とは人治によるものではない。罰金は心情とは関係ない」
「仕事に対して無責任(中略)思想教育の欠如」
「ここは法治国ではないのか」

 

日本のネットではこんな反応があった。

・『賛』否両論あったのかよ
・昔の日本で正月3が日は酒飲んで運転しても許してくれたな~
・なかなか洒落てるじゃないか
・これ日本の警察に言われたら相当怪訝な目で睨めつける自信がある
・そんな恣意的な運用あるかよ
・さすが法治じゃなく、人治国家。
・放置国家

 

個人的には、この警察官の判断が正しかったかどうか聞かれたら、「間違っていた」と答える。
でも、好きか嫌いか聞かれたら、大好きだ。

日本には1ミリも関係ないし、中国のことだから中国人の好きなようにすればいい。

それにしても、現場の警察官が勝手にこんな判断をしたり、”証拠”を残していったりする感覚が日本人とは違いすぎる。
「だれもケガをしてないし、正月だからいいんじゃないの?」という気もしていた。

 

 

ルールや法を厳しく守る日本人も、昭和のはじめごろはそうでもなかった。
法律の厳格な適用と温情を組み合わせた「人間的公務執行」と似たようなことをしていたらしい。

その時代の日本にいたキャサリンという外国人がこう言っている。

日本人は厳格ですが、寛大でもあります。外国人はクリスマスの直前に限り玩具は関税を払わずに持ち込んでよいと決めたのは、実に日本人らしいと思います。話が子どものこととなるとどんなに厳しい日本人の心もなごむのです。

「逝きし世の面影 平凡社」

でもそれは昭和初期まで。
「メリークリスマス!本日は関税をいただきません」という日はもう二度と来ない。

 

ちなみに、日本でも中国でも「警察」という言葉を使っているけれど、この言葉は日本語だ。
日本から中国に伝わって、清朝末期(明治時代)に使われ始めたという。

レコードチャイナの記事(2017年7月28日)から。

清王朝時代に張之洞が光緒帝に「警察」の単語を採用するよう提案しており、袁世凱も日本人の三浦喜伝と共に警務規定を定め巡警局を設置していて、1900年ごろには「警察」という単語が中国で見られるようになったとした。

知らなかった!「警察」という単語も日本語由来だったのか!―中国ネット

同じ警察でも、日本と中国ではやっていることが大きくちがう。

 

おまけ

土楼という巨大な住居。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。