【2020年の日韓関係】譲らない日本 vs 無責任に期待する韓国

 

東京大学で学んだ経験があり、韓国でも日本通として知られるカン・チャンイル氏が韓日議員連盟の会長をしていたことし1月、冷え切った韓日関係の解凍に向けて新年の決意を語ったから、その言葉を中央日報の記事から見てみよう。(2020.01.10)

韓日議員連盟会長「韓日関係改善すれば日本企業の資産現金化も延期に」

「今年は本格的に韓日関係の改善に向けた動きがあるものと期待する」
「日本の議員と会って安倍晋三首相が韓日関係改善の確かな意志があることを何度も確認した」
「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、輸出規制、強制徴用問題を同時に解決することを提案した。意志さえあれば、同時に解決できる」
「韓日関係がうまく解決すれば、日本企業の資産現金化の時期も延期できる」

 

最後にサラリと、とんでもないことを言ってないか。
韓日関係が最悪となった最大の原因は、韓国側が1965年の日韓請求権協定をひっくり返して国際法違反の状態をつくり出したことにある。
この状態を是正してほしいという日本政府の要求に対してムン政権は、韓国は三権分立が確立された国だから、政府が司法に介入できない!と何度も言っていたはずなのに、現金化の時期を延期できると言う。
これはつまり、政治が司法判断をコントロールできるということだろう。
政府は司法判断を尊重するっ、というのはただのやらない言い訳だったらしい。

それはおいといて、「意志がある」とか「意志さえあれば」というカン氏の精神論には新年早々、不安を感じたし、「期待する」という態度には絶望感しかない。
問題を解決しないといけない側が成り行きを見守るような無責任な言い方をするのを見て、これじゃ2020年も日韓関係は1ミリも未来に進まないだろうなと思った。

そんな予感は的中。
ことしもあと1か月で終わりで、一年を振り返る段階にきたのだけど、日韓関係は最悪ゾーンから一歩も抜け出てないし、現金化が迫ってむしろ状況は悪化している。

北朝鮮との融和を悲願とする韓国ムン政権は、来年の東京五輪でそのきっかけを作ろうと考えた結果、そのためにはまずホスト国である日本との関係を改善しないといけないことに気づく。

それで切り札として政府は、韓国きっての日本通である先ほどのカン・チャンイル氏を駐日韓国大使に任命することをきめた。
カン氏には去年のような「日本の安倍政権は悪賢くて稚拙だ。政治論理を経済問題に広げた」なんて失言をしないことを願うばかり。

でも、隣国との関係改善は日本政府も望むところ。
そのためには悪化原因をすみやかに取り除く必要があるから、現在の国際法違反の状態を韓国政府が解決しないといけない。

その韓国政府は今年最後のビッグイベントとして年内に韓中日首脳会談をソウルで開きたいから、いま菅首相に訪韓を熱心に呼びかけている。

そんなラブコールに対して、日本の外務事務次官を務めた外交のプロ、佐々江賢一郎氏が朝鮮日報とのインタビューでこう話す。(2020/11/20)

「常識的に見ると、日韓関係が悪化している状態で日本の首相が、うまくいくという見込みもなしに訪韓することは考え難い」とし、その上で「徴用問題は両国関係の根本に触れるもので、その障害物を除去しないことには困難」と語った。

「徴用問題の解決なしに菅首相の訪韓は困難」

 

記事によると「この発言は事実上、日本政府の立場を代弁する」というものだ。
韓国に理解があって「日本の知韓派」と韓国メディアに呼ばれる佐々江氏も、まず韓国政府に徴用問題の現実的な解決案を示すことを求めている。

いまは韓国が合意を守るかどうかの一点にかかっているから、「韓日が協力して一緒に問題を解決しよう!」という少年ジャンプ的なノリを日本は韓国と共有する気はまったくないようだ。
どう見ても日本は韓国を突き放していて、譲る気はゼロらしい。

同じく「知韓派」の毎日新聞も社説で、いまは韓国政府が先に動くよう主張する。(2020年11月18日)

最大の懸案である徴用工問題では、韓国側が前向きな対応を取る必要がある。韓国で差し押さえられた日本企業の資産の現金化が実行されてしまえば、さらなる対立激化は避けられない。

日韓対話の動き 情勢変化を打開の契機に

 

日韓関係の悪化を放置する余裕はないと毎日新聞が言っているにもかかわらず、もうすぐ駐日韓国大使になるカン・チャンイル氏は徴用問題について、「対話をして知恵を絞ればすべてうまくいくのではないだろうか」と相変わらず根拠もなくハッピーエンドを夢見ている。

韓国が約束や国際法を守るかどうかは韓国が決断することで、日本との対話は必要ない。
知恵と汗をしぼるのは韓国ムン政権であって、日本はその報告を待っている。
資産の現金化が始まれば現在の日韓関係は一度終わってしまうのに、「すべてうまくいくのではないだろうか」と遠い目をして言う。
「うまくいくという見込みもなしに訪韓することは考え難い」という日本と正反対だ。

徴用問題という「障害物を除去しないことには困難」と言う現実的な日本に対して、韓国側は「意志さえあれば、同時に解決できる」と無責任な精神論を語っていた今年はじめと変わっていない。だから2020年も韓日関係は1ミリも未来に進めなかった。

来年1月になると、カン氏はまたこう言うのだろうか。

「今年は本格的に韓日関係の改善に向けた動きがあるものと期待する」

 

 

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4 件のコメント

  • いよいよ日本企業の差し押さえ資産現金化の予定期日が迫ってきましたね。文政権は、何とかして国際法を守らせる気はないのかな? このままだと日韓関係は破滅に向かわざるを得ないでしょうね。
    ま、ある意味、私はその方が両国のためであるという気もしますが。
    でもなぁ、おそらくバイデン大統領がそのような動きを止めるでしょう。でもその場合、韓国側へ厳しい措置を取るのではないかな。ただ、米国内における韓国側のロビー活動がよほどうまく行けば、そのような動きも避けられるかもしれないですが。
    今頃、バイデン新政権に対して、韓国は必死で仲裁を頼み込んでいるのでしょうね。

  • 来年は一歩進んで  元年となることを祈念したいとおもいます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。