韓国が指摘する「日本の嫌韓助長政治」が的外れの理由

 

韓国与党の大物政治家で、次期大統領候補の有力な一人とされている李在明(イ・ジェミョン)という人がいる。
京畿道の知事をしている李氏は現在の日本をこうみた。

中央日報の記事(2020.09.02)

「いま日本は極右勢力を支えてきた最長寿安倍首相の没落と新型コロナウイルス、経済低迷などでパニック状態だ。現実に苦しむ自国民の視線を外部にそらして敵対感を作り内部結束を強化する日本の極右勢力の伝統的戦略により、こうした危機状況で日本の極右勢力が選択した突破口は韓日関係をこじれさせることしかない」

韓国京畿道知事「日本内部結束強化のために韓日関係こじらせるのをやめよ」

 

こう言ったうえで李氏は、安倍首相を中心とする日本の“右翼勢力”について「結局彼らが望むのは反韓感情助長を通じた韓日対立」だと断じる。
次の韓国大統領になる可能性のある李氏は、国民や与党議員から大きな支持を受けている人物だから、この見方は韓国人の常識や価値観を表しているとみていい。

新型コロナの影響から、経済が低迷しているのは韓国をふくめて世界中の国が同じはず。
でもパニック状態というのは初耳で、そんな日本はどこにあるんだ?

ちなみに朝鮮日報の記事(2020/09/05)にあるように、この李在明氏の言うことには偏りがあって信用性はイマイチ。

今年7月にはテレビ討論会でうそを言った李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事に「積極性がなかった」として無罪を言い渡した。

金命洙大法院長の法解釈「味方は合法、味方以外は違法」

与党寄りの主張や反日発言なら、いまの韓国では「問題なし」とスルーされる傾向が強い。

 

「極右勢力」や「パニック状態」といった主観的で大げさな表現は韓国の政治家がよく言うことで、韓国メディアの報道をみると、いま韓国社会では日本に対してこんな見方が支配的だ。

・安倍首相など日本の与党政治家は韓国を敵視して、国民の怒りをそちらに向けさせて内部結束を強化する。
・そうした右翼的な政治家が支持率アップを目的に、国民の嫌韓感情を助長し韓日の対立をあおる。

そんな韓国空気は文春オンラインの記事(8/30)の見出しを見るだけで伝わってくる。

「“嫌韓”を政治利用した」韓国で歴代もっとも“嫌われた”日本首相・安倍晋三辞任、韓国国内の反応

 

さて、世の中には「ミラー・イメージング」という言葉があるのをご存知か。
これは自分の考え方をそのまま相手に当てはめることで、ときにはこれが深刻な外交問題につながると毎日新聞のコラム「余禄」(2020年8月12日)が指摘している。

相手も自分と同じように考えるだろうと思ってしまう錯誤をいう。国際政治では対立する国の相互錯視が途方もない危機をもたらすことがある

「ミラー・イメージング」とは…

 

先ほどの李在明氏だけでなく、韓国の政治家やメディアがいまおちいっているのがこの状態。

「現実に苦しむ自国民の視線を外部にそらして敵対感を作り内部結束を強化する」というのは、まさに韓国与党の戦略だ。
ことし4月に行われた総選挙では、与党「共に民主党」が候補者に配布した「総選挙戦略広報遊説マニュアル」で国内選挙を日本との対立にすり替えていた。

朝鮮日報の記事(2020/04/06)

「国民たちは今回の選挙を『韓日戦』と呼んでいる。日本政府には屈従的だが、韓国政府を非難することにばかりきゅうきゅうとしている未来統合党に審判を下してほしい」という内容を盛り込んだ。

4・15韓国総選挙、とにもかくにも韓日戦

 

これは与党と野党の争いで日本は関係ないはずけど、とにかく国民の反日感情をあおれば支持は集まる。
野党を日本と同一視させ、国民に「敵」と思わせれば選挙に勝てると判断した与党は、実際に大勝してしまった。
このとき国民は「土着倭寇を撲滅しよう」「今回の韓日戦は何が何でも勝とう」と声高に叫んでいたと記事にあるから、与党の望み通りに動いている。
「彼らが望むのは反韓感情助長を通じた韓日対立」という韓国側の見方は「ミラー・イメージング」で、自分の考え方をそのまま日本にも当てはめただけのこと。

日本の選挙で自民党が「これは日韓戦だ!」と強調しても国民の共感を得ることはなく、与党が議席を失うのはまず間違いない。
韓国側が極右と言う安倍首相でも、そんな反韓感情を助長するような選挙キャンペーンはしていない。
だから韓国での指摘は完全に的と現実を外している。

 

そもそも韓国と日本では“熱”がちがうのだ。
韓国人がもつ日本への対抗心やライバル意識はすさまじいものがあるけど、日本人は韓国に対してそれほど関心を持っていない。
それがよく表れたのが安倍首相の辞任会見で、このとき首相は日韓関係については何も話さなかったし、殺到した日本メディアの記者も誰一人そんなことをきかなかった。

これが韓国には不満だったらしく、全国紙のハンギョレがこんな記事(2020-08-29)を載せた。

安倍首相辞任会見1時間……韓日関係には言及も質問もなかった

 

韓国では政治家が国民に反日を訴えるのは効果的である一方、日本ではこのように韓国への関心や優先順位が低いから、政治家が嫌韓を叫んでもほとんどアピールにならない。
結局、「“嫌韓”を政治利用した」という韓国側の見方は、自分たちが反日を政治利用してきたことの裏返し、ミラー・イメージングでしかない。

「国民の視線を外部にそらして敵対感を作り内部結束を強化する」や「反日感情助長を通じた韓日対立」というのは、日本との合意や国際法を一方的に破った文政権がしてきたことだ。
まさに鏡。

 

 

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1 個のコメント

  • 自分たちの考え方・価値観以外があるとは思っていない、あるいは認めないから、相手に対して自己投影してるだけなんですよね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。