日韓ハーフの苦悩|韓国の強い同調圧力と「個」として生きたい本音

ニュースで日韓の対立が報じられると、韓国で暮らす日韓ハーフの人たちの中には、プレッシャーを感じる人もいる。
「普通の韓国人以上に愛国心を示さなければならない」という同調圧力だ。
そんな重圧に苦しむ人の本音に耳を傾けてみよう。

目次

韓国民にとっての「三一節」

3月1日は、韓国民にとっては一年でもっとも重要な日のひとつ。
1919年のこの日、日本に対する独立運動が起きたことで、現在ではそれを記念して「三一節」という祝日になっている。

「抗日精神」は韓国の建国理念にもなっているのだ。
「三一節」には大統領が国民に向かって演説をおこない、国のために立ち上がった先人たちを尊敬するよう訴え、愛国心を刺激することがお約束。

とはいえ、現在の韓国が日本を切り離すことはできない。
きのう李在明(イジェミョン)大統領は過去の問題を直視しつつも、韓日が未来を切り開いていくべきだと強調した。
改めて未来志向の日韓関係を重視する姿勢を示した。

しかし、日本と韓国では歴史認識があまりに違うため、過去と未来の両立がとてもむずかしい。
テレビやネットのニュースでは日韓の政治的な対立がよく報じられ、両国の間には常に一定の緊張感や複雑な空気が流れている。
そんなニュースを見て、「もし自分が、日本と韓国両方の血を引いていたらどう感じるだろう?」と想像したことはあるだろうか?

 

日本語ガイド一推しの「広蔵市場」。
韓国が日本の保護国となった1905年に、韓国初の常設市場としてこの市場が誕生した。
京都の錦市場と同じく、今では外国人観光客の洪水状態になっている。

1.「見えないプレッシャー」と戦う日韓のハーフ

今では日本人と韓国人の結婚は珍しくないから、ハーフ(ダブル・ミックス)の存在を知って驚く人はいないはず。
彼らの生活や思いは、ひとことで言ったら「人それぞれ違う」ということになる。

10年以上前、ソウルを旅行したとき、韓国人男性の日本語ガイドのお世話になった。彼は日本人女性と結婚していて、ハーフの息子がソウル市内の学校へ通っていた。
その日本語ガイドから聞いたのは、息子が「見えないプレッシャー」と日々戦っているということだった。

その子が抱えていたのは、単なるアイデンティティの悩みではない。
クラスメイトから「お前は本当に私たちの仲間なのか?」と迫られ、「普通の韓国人以上に、韓国人らしく振る舞わなければならない」という疲労感だ。

これから、日韓の間に立つ当事者の本音と、その背景にある韓国社会の「同調圧力」について書いていこう。

2.日韓ハーフのリアルな本音:「どっちの味方?」という無意識の暴力

日韓関係が悪化したりすると、その子は周囲の友人(韓国人)から、こんな質問をされることがあったという。

「歴史問題について、ぶっちゃけ日本のことをどう思う?」
「韓日のどっちの言い分が正しいと思う?」

質問する側は、ニュースの感想を聞くような軽い気持ちが多いらしい。
しかし、両方の国にルーツを持つ当事者にとって、この質問は「踏み絵」を迫られるようなものだ。
ガイドの息子は韓国の歴史認識を正しいと考えていたが、「おまえは本当はどっちの味方なのか」と聞かれて良い気持ちがするわけない。

 

マッコリを飲みながら、話をするガイド。

 

どちらの国も自分のルーツである以上、片方を完全に否定することは、自分自身の半分を切り捨てるのと同じこと。
「あいまいさ」が認められる日本社会と違って、韓国では「白か黒か」「味方か敵か」の明確な答えを求めてくる。

それは歴史認識だけではない。
サッカーや野球などスポーツの「日韓戦」が近づくと、教室の雰囲気が盛り上がってくる。そんな中、友人が彼にこう尋ねてくる。

「お前はどっちを応援するんだ?」

友人たちからしたら、これは“半分日本人”の彼をからかう「ジョーク」に過ぎない。
しかし、彼にとっては、大げさに言えば「教室という小さな社会で生き残るための重大なテスト」となる。

だから、彼は内心では「またこの質問か」とウンザリしつつも、「韓国に決まってるだろ!」と答えていたという。
「両方頑張ってほしい」と中立的な答えを言えば、「あいつはやっぱり半分日本人だ」と心の距離を置かれてしまうかもしれない。
彼にはそんな小さな恐怖があったのだろう。

「日本か韓国か?」という質問をされると、その子は、自分の体に流れる「日本人の血」を嫌でも意識させられてしまう。そのうえで「韓国が正しい」「韓国に勝ってほしい」と言わされるのは残酷だ。
これは「自覚のない言葉の暴力」で、彼はそれに疲れていた。

※戦前の日本で、キリスト教徒の内村鑑三が神と天皇のどちらを尊重するか聞かれたことを思い出す。
彼はジーザスとジャパンの、「二つのJ」を尊重すると言った。

仲間外れへの恐怖。「愛国心アピール」が招く疲労感

読者諸兄は、「チョッパリ」という言葉をご存知だろうか。これは、韓国社会にある日本人に対する差別用語だ。

強い民族主義を持つ韓国人の中には、日本人と結婚した韓国人を「パン・チョッパリ(半分日本人)」と呼ぶ人がいて、実際、日本語ガイドもそう言われたことがあった。
知人の在日韓国人は韓国へ行ったとき、そう言われてショックを受けた。

日韓戦の翌日、学校へ行くと、先生が「チョッパリのヤツらなんかに負けて、我が国の選手は本当に情けない」とサラリと言うから、その子はドキッとしたという。
「仲間外れにされたくない」という思いから、もし韓国チームが勝てば、誰よりも大げさに喜び、逆に韓国が負ければ、誰よりも大げさに悔しがってみせた。

「“親日派(裏切り者)”だと思われたくない」という一心で、彼は普通の韓国人の生徒以上に、「韓国人らしさ」や「愛国心」を強烈にアピールしなければならない。

周囲の顔色をうかがって、「完璧以上の韓国人」を演じることが何度もあるから、彼の心は深く疲れてしまう。

3. 韓国社会特有の「愛国心」と「同調圧力」

日本と韓国では同じ人間が95%を占めていて、どちらも同質性の高い社会だ。それにくわえ、韓国には「ウリ(私たち)」という独特の文化がある。

一度、「ウリ」として自分たちの仲間と認められたら、家族のように温かく、深いきずなで結ばれる。

※「ウリ」という韓国独特の考え方については、「NHK出版デジタルマガジン」の記事にくわしい説明がある。

親しき仲には……遠慮なし!? 日本とはまるで異なる、韓国の人間関係

韓国社会で「ウリ」の連帯感はとても強いから、自然とナム(他人)は明確に区別され、風当たりは強くなる。

日韓ハーフは「ボーダー」にいるから、「半分ナム(外側の人)」と見なされがちだ。
だからこそ、自分が間違いなく「ウリ(韓国側)」の一員であることを、周囲が納得するレベルで証明し続けなければならなくなる。

さらに韓国では、日本に統治(支配)されていた歴史的な背景から「愛国心を持つこと」が社会における正義や常識とされている。

日本にも「空気を読む」という同調圧力はあるけれど、韓国の「国を思う気持ち」は日本とは次元が異なる。
国家や歴史に対して怒ったり喜んだり、悲しんだりして、感情を具体的な行動で表すことが要求される傾向が強い。

ナショナリズムにおける同調圧力は、きっと日本の比ではない。

もし、韓国で「正しい」とされている歴史観に反する説を唱えると、「親日派(裏切り者)」というレッテルを貼られ、社会的に抹殺されるリスクすらある。
この息苦しい空気が、ハーフの子に「愛国ポーズ」を強要している根源になっていた。

4. 「日本人」「韓国人」の前に、ただの「私」でいたい

ガイドの子どもは、普通の小学生(中学生?高校生?)として、好きな音楽を聴いたり、友だちと遊んだりして、自由に自分の人生を生きたい。
「国」という大きな主語で縛られ、アイデンティティを確認させられることに、もう疲れ果ててしまった。

ここまで書いてきたことはガイドから聞いた話で、それ以上でも以下でもない。「盛った」部分もあったかもしれない。

しかし、韓国で生活する日韓ハーフの人たちは、多かれ少なかれ、「日本代表」として過去の歴史の責任を背負わされたり、「韓国代表」として愛国心を強要されたりして、ウンザリする経験をすると思う。
「日本とは過去を直視しつつ、未来に向かっていこう」という大統領のスピーチを聞けば、「自分たちはどこへ向かっていけばいいのか」と複雑な気持ちになるかもしれない。
もちろん、自分のアイデンティティが韓国人と完全一致していれば、迷いはなくなる。

ガイドの息子のように、周囲から「どっちの味方だ?」と迫られることなく、シンプルに「ただの自分」として生きたいと願うハーフの人は多いだろう。
1919年の三・一独立運動で、朝鮮の人たちは日本の抑圧的な支配からの解放を求めた。
韓国に住む日韓ハーフの人たちは、今、「歴史の審判」や「ラベル貼り」からの解放を求めているのでは?

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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