日本と韓国はすぐ隣にありながら、歴史認識では埋められない深い溝があるため、昔から政治的な対立が繰り返されてきた。
そんな事情から、日韓関係は「近くて遠い国」と言われることが多い。
いまSNSを見ると、違う意味でそれを実感している日本人がたくさんいる。
スタバ不買運動の引き金「タンクデー」と光州事件
最近、韓国のスターバックスが「タンクデー」というキャンペーンを始めたところ、国民の怒りのトリガーを引いてしまった。
その理由を理解するには、1980年に起きた「光州事件」を知る必要がある。
この年の5月、韓国の全羅南道・光州市で、市民が民主化を求めて抗議デモをおこなうと、政府は軍隊を投入して鎮圧し、結果として数百人の市民が死亡した(正確な犠牲者数は不明)。
今回のスタバのキャンペーンはその悪夢を連想させ、市民の犠牲を冒とくしているとして、多くの国民を激怒させたのだ。
スターバックスコリアは公式に謝罪したが、スターバックスの「不買運動」は急速に全国に広がっていて、SNSを見ると、スタバのコップをハンマーで叩き割る動画などがいくつも流れている。
代表は解任され、今は警察の捜査対象になっている。

こんな状況は、一週間ほど前は誰も想像できなかった。
ガラガラのスタバに驚く日本人
韓国でスタバは大人気だから、これまでは週末になると満席がデフォルト(普通、標準)だった。
しかし、それが突然一転。
韓国メディア『MBC』のニュースでは、取材チームがソウル市内にあるスタバの店舗10ヶ所を見て回り、通常に比べて客が激減していたと報じている(2026.05.23)。
「주말에도 한산‥’정용진 퇴진’에 집단소송 움직임까지」
AI翻訳:「週末でも閑散‥『鄭溶鎮(チョン・ヨンジン)退陣』に集団訴訟の動きまで」
SNSを見ると、韓国に住んでいる日本人で、先週末にスタバの店舗を見てそれを実感した人も多かった。
いつもは客でごった返しているのに、ガラガラで不自然な空間が広がっていたから、「休業日かと思った」「影響すごすぎ」「韓国ほんまにすごい!」と驚く日本人が続出している。
終りが見えない韓国の「スタバ叩き」
スターバックスに悪意はなく、「タンクデー」の企画から実施までには複数の人が参加し、問題がないかチェックしていたはずだ。
それに、「光州事件」に対する見方も一つだけではない。
しかし、韓国社会はいま「スタバ叩き」一色で、異論や反論を言える雰囲気はない。
ある俳優はスタバの店舗を訪れて写真を投稿しただけで大炎上し、謝罪に追い込まれた。
「自分はとても軽率で未熟であり、社会的な雰囲気をもっと注意深く見る態度が必要」だと深く反省したが、それでは世間に許されず、彼は出演中のミュージカル作品を降板した。
また、スタバに対し、未使用のプリペイド前払い金(約480億円)の全額返金を求める訴訟が提起された。
日本でもさまざまな企業がヤラカシて炎上騒ぎを起こすが、ここまで大規模で激しい反応は記憶にない。
韓国人が嘆く「全体主義」への危機感
韓国にいて、社会の空気を肌で感じている日本人の投稿を見ると、全体が一つの方向へ向かって進んでいることに、何か異様な統率力のようなものを感じる人もいる。
政府が不買運動をあおり、店から客が一斉に消えてしまう現象は、今もこれからも日本では発生しないだろう。
韓国は民主主義の国で、さまざまな意見があるから、今のこの洪水のような一方的な流れに危険性を感じる人もいる。
ある市民団体は「国民にスタバ不買運動を強要した」として、李在明大統領を告発した。
また、保守系の論客は、今回の不買運動を「表現の自由」に対する危機と考えた。
1930年代にナチス・ドイツがユダヤ人商店をボイコットした黒歴史と重ね、「憲法が保障する個人の自由と責任の原則に違反する全体主義的な発想だ」と主張した。
朝鮮日報の記事(2026/05/25)
韓国政府のスタバ不買運動に元・月刊朝鮮編集長「ナチスによるユダヤ人経営商店ボイコットを思わせる」
政府の介入がもたらす社会の危うさ
日本でも不買運動は起こるが、韓国の場合、「スイッチ」が入ったときの加速がすごい。ネットで拡散され、すぐに目に見える形で結果が現れる。
さらに、政府がボイコットに「介入」するところに、日本との大きな違いを感じてしまう。
時の政府が一定の方向を示すと、国民がそこに向かって一斉に走り出す社会は危ない。
「韓国ほんまにすごい!」と変化の驚いた日本人も、せっかくいま韓国にいるのなら、社会的な雰囲気をもっと注意深く見て、日本との違いや韓国社会について学んだほうがいい。
日本と韓国は本当に「近くて遠い」のだ。

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