近くて遠い国――日本と韓国の気質の違い
海を隔てた隣国なのに、政治的にはよく衝突する。
そんな日本と韓国の関係は「近くて遠い国」と表現されることが多い。
これは国民にも当てはまる。
日本人と韓国人の見た目はよく似ていて、第三者の外国人には見分けがつかないが、性格や気質には大きな違いがある。
日本人は「和を以て貴しとなす」という飛鳥時代からの伝統から、一般的に周囲との調和を大切にして、自分の感情をあまり表に出さない。
それに対し、韓国人は喜怒哀楽の感情表現がとてもストレートで、気持ちがすぐに行動に結びつく。
とくに「怒りの力」は激しく強く、これまで社会に大きな影響を与えてきた。
W杯惨敗と国民の激しい反応
そんな感情の激しさを見て、いま多くの日本人が「やっぱり近くて遠い国だなあ…」と感じている。
サッカーW杯で、韓国代表が「格下」と思われていた南アフリカに負け、上位のノックアウトステージに進むこともできず、48カ国中34位に終わった。
これは韓国にとって、W杯史上最悪の結果と言われている。
洪明甫(ホン・ミョンボ)監督が惨敗の責任を取り、辞任を表明したが、国民の怒りはそれぐらいでは全く収まらなかった。
街のドーナツ屋、コンビニ、ジムなどがホン・ミョンボ監督を「出入り禁止」にし、ホン氏の乗車を拒否する市バスまで現れた。
(さすがに入国禁止にはならなかったけれど。)
そのような険悪なムードから、韓国代表は帰国時の式典すら開いてもらえなかった。
ホン監督を待っていたのは屈辱だった。
午前4時ごろだったにもかかわらず、仁川空港には大勢のサポーターが待機していて、監督が姿を現した瞬間、怒号が飛び交った。
太鼓をたたきながら、「ホン・ミョンボは金(報酬)を出して(韓国から)出ていけ」と大声で叫んでいた。
大韓サッカー協会会長が遅れて現れると、「犬用ガム」が投げつけられた。これは相手を犬扱いすることを意味し、韓国社会では最大級の侮辱になるらしい。
日本では、マスコミ報道でこうした韓国サポーターの姿を見て、あまりの激しさに驚く人が多かったことは、SNSの書き込みを見ればわかる。
・こんなことをしてたら、誰も韓国の監督をしないよな
・ここまで叩く事なのか…理解不能
・集団でキレ散らかすのは何なんやろな
・批判はしていいが、ここまで徹底して攻撃するのはどうかと思う
・凄いね、日本では考えられない
・勝ち負け関わらず、頑張った方々を労うという文化が…ムリか
ホン氏は「柏レイソル」でプレーしたこともあるから、日本への避難を呼びかける人もいた。
「怒り」が社会を動かしてきた韓国の歴史
先日、韓国人の知人と話していたとき、「いくら何でもあれはやり過ぎでは?」と聞くと、こんな言葉が返ってきた。
「複雑ですね。叩きすぎの気もしますが、ホン・ミョンボやサッカー協会がしたことは許されませんから」
いま韓国社会で、監督と協会は「罪人」という扱いを受けているらしい。
この韓国人は韓国にある日本企業で働いていて、日本語はペラペラで日本の事情もよく知っている。
彼からみると、日本人は感情を抑制するから、きっとこんな騒ぎは起こらないし、空港の様子を見て驚く気持ちも理解できるという。
一方で、韓国の歴史をみると、この「怒りを抑えずに外に出す力」が社会を大きく動かす強力な原動力になったという。
韓国は1980年代以降、多くの市民が積極的に行動し、自分たちの力で民主化を実現してきた。
たとえば、1987年の軍事政権下で起きた「6月民主抗争」だ。
このとき政府側が数万人の武装警察官を動員しても、民主化を要求するデモを止めることはできなかった。
知人に言わせれば、韓国人は不当な状態に対し、「見て見ぬふり」をすることができない。だから、市民や学生はそれを正すために立ち上がり、催涙弾が飛び交うような危険な状況の中でも正義感と怒りを持って、弾圧には屈することなく民主化運動をつづけた。
「6月民主抗争」では、最終的には市民のエネルギーと圧力が政府を動かし、大統領直接選挙制の導入などを認めさせた。
こうした民主化運動が、「自分たちの手で政治を変えられる」という成功体験になり、国民に自信を与えたという。
その後も、不正や汚職に対しては激しい抗議行動が展開された。
2016年には当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、友人を国政に介入させたことが判明すると、100万人規模の大規模デモが起きて大統領を弾劾・失職に追い込んだ(蝋燭革命)。
最近では、2024年12月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を宣言すると、民主主義の危機と感じた人びとがすぐに抗議活動をおこない、戒厳令を撤回させた。
その後、朴氏と同じように尹氏も弾劾されて失職した(2024年大韓民国非常戒厳令)。
感情のエネルギーが生み出す功罪
このような歴史から、「韓国民には社会の不正に屈しないエネルギーがあり、それが怒りとなって表れて社会を変えてきた」と知人は話す。
今回の騒動でもW杯の惨敗だけでなく、ホン監督が選ばれた手続きでも「不正」があったとされ、市民の心に火がついたという。
しかし、彼は市民の情熱的な行動を全面的には肯定していなかった。
「正義」は主観によって左右されるし、間違った情報に動かされるといったマイナス面も指摘する。
つまり、韓国の人たちの感情的で行動的な性格は、状況によって良くも悪くも作用するのだ。
それは、過激な個人攻撃につながることもあるが、不正に立ち向かう力として発揮されると、国家の体制を変えて社会を前進させる力になる。
感情を抑えて調和を重視する日本と、感情を表に出して状況を動かそうとする韓国は本当に対照的だ。
もちろん、これはどちらが優れているという話ではない。
隣国への理解を深めるためには、彼らのダイナミックな気質を知っておくことは重要だ。

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