【スタバの闇歴史】なぜ米国・中国・韓国の人たちは激怒した?

世界最大のコーヒーチェーンは、アメリカ発祥のスターバックスで、世界80カ国以上に約4万の店舗があり、店舗数・売上規模ともに世界ナンバーワンを誇る。

ちなみに、スタバに次ぐ第2位のコーヒーチェーンはイギリス発祥のコスタコーヒーだ。

それほどのマンモス企業だから、これまでにさまざまな「失敗」をしてきた。
アメリカでは人種差別騒動を起こしたし、逆に人種差別をなくそうと「レース・トゥゲザー」キャンペーンをおこなったら、それも世間の批判をあびてしまった。

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これから、中国・アメリカ・韓国のスタバで起きた(起こした)「闇歴史」を3つ紹介しよう。
それらはどれも国民の感情を刺激し、激しく怒らせた。

大炎上するにいたった過程を通して、それぞれの国で重要とされている価値観や、人びとの気持ちを理解することができる。

 

目次

ケース1:アメリカで「9・11テロ」をめぐって大炎上

まずは、スタバが生まれた国・アメリカでの事例だ。

2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起こり、日本人24人を含む約3000人が犠牲になり、25,000人以上が負傷した。

その翌年、米スタバは新作の冷たい飲み物をPRするポスターを作成。
そこには2つの冷たい飲み物があり、斜め上空にトンボが飛んでいる絵が描かれていた。

キャッチコピーは「Collapse into cool」だ。
「Collapse into〜」は「〜に倒れ込む」と言う意味で、この場合は「この冷涼感に身をゆだねてリラックスしよう」といったニュアンスだろう。

 

オリジナルは著作権の問題がありそうだったので、AIにこの画像を作成してもらった。

 

このポスターが世に出ると、国民に「悪夢」を連想させ大炎上した。

同時多発テロでは旅客機がハイジャックされ、ニューヨークにあった「ツインタワー(世界貿易センタービル)」に突っ込み、多くの命が奪われた。

その衝撃的な光景は米国民のトラウマとなった。
スタバのポスターを見て、2つの飲み物が「ツインタワー」、そしてトンボが「激突した飛行機」を連想する人が多かった。

さらに、「Collapse(崩壊)」という言葉もマズかった。
もちろん、スタバ側に悪気は1ミリもなかったはずだが、このデザインは軽率すぎた。
事件のショックから立ち直っていない人たちを傷つける結果となり、ポスターはすぐに撤去された。

ケース2:中国で故宮の店舗にブーイング

次は、日本の隣国・中国での失敗だ。

北京には「故宮(紫禁城)」という、世界遺産にも登録されている世界的に有名な歴史的建造物がある。
ここは辛亥革命(1911年〜1912年)が起こるまで、明と清王朝の皇帝が住んでいた王宮で、中国の人たちにとっては歴史と文化を象徴する場所となっている。

ちなみに、「古宮」ではなく「故宮」と表記する理由について、知人の中国人にたずねたところ、故人や故事、故郷のように、故という漢字には「昔を懐かしむ」というニュアンスがあるという。
もちろん、これは彼の個人的な見解だ。

2000年に、スターバックス(星巴克)がこの故宮の敷地内に出店すると、

「中国の歴史的象徴を土足で踏みにじっている」
「私たちの大切な場所にアメリカの商業主義を持ち込むな」

といった批判の声が上がった。

しかし、店側が支払うテナント料は、この歴史的建造物の維持費にあてられていたという。
そのため、この店舗を支持する人も多く、「故宮のスタバ」は中国人民の議論の的となった。

日本で例えるなら、伊勢神宮の敷地内に海外のチェーン店がオープンするようなものか。
これは国民感情が許さない。

2007年に、有名なテレビキャスターが閉店を求めるキャンペーンをおこなうと、約50万人の支持を集め、大きな注目を集めた。
「伝統文化の冒涜(ぼうとく)」だと主張する議員も現れ、結局、その年に店は撤去された。

ちなみに、この話には「続き」がある。
その後、故宮の中にレストランがオープンし、ラーメン1杯を30元(約430円)で売り始めたのだ。

当時の物価からすると、これはかなり強気な価格だったため物議をかもした。
一方、撤去されたスタバは、一般的な店舗と同じ値段で提供していた。

雰囲気に合わない良心的な店が消えたら、伝統に沿った「ボッタクリ」店が登場したという、まさに中国らしいオチ。

ケース3:韓国で光州事件をめぐって特大炎上

最後に紹介するのは、韓国での直近の事例だ。

先日の5月18日、スターバックスコリアは「タンク(戦車)デー」として、タンクシリーズのタンブラーの販売をおこなうという、致命的な過ちをおかしてしまった。
しかも、キャッチコピーは「机にバン!」だ。

1980年5月18日、韓国の光州市で市民が軍事政権に対し、民主化を求めて立ち上がった。
政府は軍を投入し、装甲車を使うなどしてデモを鎮圧し、最終的には500人以上の死者がでた。
※公式には165人が死亡とされているが、正確な人数は神のみぞ知る。

このとき軍は非武装の市民を銃撃し、現代の韓国社会でもこの「虐殺」がトラウマになっている。
そんな「光州事件」がはじまった日に、韓国スタバが「タンクデー」キャンペーンをしたのは偶然であるはずがない。

 

しかも、「壁ドン!」ならいいとしても、「机にバン!」は絶対にダメだ。

光州事件では、学生の朴 鍾哲(パク・ジョンチョル)が、治安本部の取り調べ中に拷問をうけて死亡した。
その後の韓国で、彼の死は民主化闘争の象徴となった。

当時、朴の死について、治安本部は死亡原因を「持病による心臓発作である」とウソの説明をした。本部長が「机をバン!と叩いたら、(朴が驚いて)アッと叫んで死んだ」といった話をし、これが流行語となった。

「机をバン!」は、軍事政権の拷問と殺害を連想させる言葉だ。
その不適切さは「Collapse into cool」とは次元が違う。

市民運動を茶化すようなキャンペーンに市民が大激怒し、近年まれにみる特大炎上に発展する。
韓国スタバのCEOが電撃辞任したが、それだけで鎮火は不可能

 

市民はハンマーでカップを叩いて破壊する動画をSNSに投稿したり、メンバーシップを解約したりして、「さよならスタバ」キャンペーンが自然発生的に起きている。

この事態に政府も動いた。
李在明(イ・ジェミョン)大統領は「国家による暴力を美化したり犠牲者を侮辱したりする行為」を絶対に許せないとして、あらゆる手段をもって厳しく処罰すると強調した。

また、尹(ユン)行政安全部長官は、今後、政府が開催するイベントでスタバの商品を使用しない方針を表明し、この措置に多くの国民が共感することを期待すると呼びかけた。

実質的には、政府主導で不買運動をうながしたことになる。
特定の企業を想定し、政府が「犬笛を吹く」というのは日本では考えられない。
さらに、警察も動き出し、前代表らに対する捜査に着手したという。

ただし、韓国の世論は一枚岩ではない。
「反・李在明」派の中には、韓国スタバを支持する人もいる。

まとめ:スタバの「闇歴史」が伝えること

アメリカの同時多発テロ、中国の故宮、韓国の光州事件ーー。
内容はそれぞれまったく違っても、国民にとっては特別重要な出来事や場所だ。

人命や伝統文化は世界のどの国でも尊重されているが、それが象徴されるものごとは、それぞれの国によって異なる。
そこを侮辱するようなことをすると、人びとを深く傷つけるため、必ず激しい反発が返ってくる。

世界的な大企業にはさまざまな成功や失敗があり、一般人が学べるものも多い。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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