ことし令和8年は「昭和100年」でもある(満100年)。
それを記念して「昭和の日」には、政府主催で昭和100年記念式典が開催された。
日本で昭和に対する見方は大きく二つに分けられる。
高市首相は、日本が戦後復興をとげて世界的な経済大国となったことにふれ、こう強調した。
「私は日本と日本人の底力を信じてやみません」
「日本の誇るべき国柄を、未来を担う次の世代へとしっかり引き継いでいく」
一方で、太平洋戦争で大きな被害を出したことを、もっと大きく取り上げるべきだと考える人たちもいる。
ザックリ言って、保守派は昭和時代の「光」に目を向け、リベラル派は「闇」を重視する。
では、隣国は「昭和の日本」をどう見ているのだろうか?
韓国における「昭和」のイメージと記念硬貨への反発
韓国における「昭和の日本」の一般的なイメージとはどのようなものか。
昭和は62年ほど続き、日本の歴史の中でもっとも長い元号となった。
日本のリベラル派はおもにその前半を、保守派はその後半に目を向ける。
それに対して、韓国では一般的に戦前も戦後も、昭和という時代全体をネガティブに見ている。ときには敵意や憎悪すら感じさせるほどに。
日本の朝鮮統治(1910年〜1945年)は、韓国では「日帝強占期」と呼ばれている。
日本政府は合法的な併合だったとの立場をとっているが、韓国では、日本が国際法に反して強制的に占領していたと見なすことが一般的だ。
だから、「昭和の日本」に対する視線はとても厳しい。
それがどれだけ冷ややかかは、韓国の全国メディア「聯合ニュース」の記事の見出しを見るだけで伝わるはずだ(2026.04.22)。
日 ‘쇼와100년’ 은화발행 논란…침략·식민만행 지운 ‘역사세탁’
(日『昭和100年』銀貨発行議論…侵略・植民蛮行を消した『歴史洗濯』)
「昭和100年」を記念し、日本で硬貨が発行されることになった。
そのコインの表には、高度経済成長を象徴する東京タワーや新幹線、高速道路が描かれ、裏には富士山と桜、そしてハトが描かれている。
戦後の日本が平和国家として歩んできたことを、ハトで示しているのだろう。
聯合ニュースはこのデザインに大きな不満を持っている。
昭和の時代、慰安婦や徴用工を強制動員するなど、日本は非人道的な犯罪をおかしたと糾弾し、こう訴えた。
「일본이 식민 지배와 전쟁 범죄에 대한 진솔한 사죄 없이 ‘부흥’만을 찬양한다는 점에서 이번 은화 발행은 우려를 낳고 있다.」
(日本が植民地支配と戦争犯罪に対する真摯な謝罪なしに「復興」だけを称賛するという点で、今回の銀貨発行は懸念を生んでいる。)
韓国の専門家の間では、日本は戦争責任と被害を深く反省する必要があり、昭和100年の記念コインが「過去を美化する道具」になりかねないという指摘が出ているという。
つまり、この硬貨を発行することは、日本の侵略や植民地支配の蛮行を消し去る「歴史の洗濯」になるというのが韓国側の受け止め方だ。
こうした厳しい見方は一部のメディアだけでなく、韓国社会の一般的な歴史観や常識として共有されている。
韓国の学校教育では、日本の属性として「抑圧・被害の歴史」が深く結びつけられているため、それが否定的な感情のベースとなっているのだ。
ハンギョレ新聞はそんな視点から、「日本は反省どころか、恥ずべき歴史を打ち消すことに汲々としている」と書いた(2021-08-14)。
[寄稿]日本、「反省なき」その構造
歴史認識の埋まらない溝
一方、日本はこうした韓国の見方を否定している。
まず、戦争犯罪をおかした人間は戦後の裁判で裁かれていて、現在の日本に戦争犯罪人は存在しない。
日本政府の立場からすれば、当時の制度は合法的に行われていたものであり、「非人道的な犯罪」という批判は受け入れられない。
日本は歴史問題について何度も謝罪し、「最終的かつ不可逆的な解決」として韓国政府とも合意しているため、「さらなる真摯な謝罪」はありえない。
そもそも日本は過去に50回以上も謝罪しているのだ。

記念硬貨を発行することが、過去の侵略や蛮行を消す『歴史ロンダリング(洗濯)』になるという発想は、日本人の常識や感覚からすると飛躍しすぎている。
「昭和100年」の記念硬貨に、慰安婦や徴用工の人たちをデザインにするのはまったく現実的ではない。
韓国が戦後の発展を記念する硬貨を発行するときに、ベトナム戦争で自国がおこなった蛮行をデザインにしないはずだ。


ベトナムにある戦争博物館を訪れたとき、ベトナム戦争で派遣された韓国軍兵士の写真と説明を見た。

「韓国・ベトナム混血児1万人」というのは、いわゆるライダイハンのこと。
慰安婦 vs ライダイハン問題①ベトナム人や外国人の反応は?
慰安婦 vs ライダイハン問題②外国人に指摘された韓国人の反応
こんな感じに、日本の「暗黒面」を取り上げて反省や謝罪を強調するから、韓国には触れたくない昭和史がある。

日本人が工場で軍用機を修理している(朝鮮戦争)
朝鮮戦争と戦後復興をめぐる認識のギャップ
日本の戦後復興についても、韓国では冷ややかに見る人が多い。
1950年に韓国と北朝鮮による朝鮮戦争が勃発すると、多くの日本企業が兵器や砲弾など戦争に必要な物資を生産し、米軍に売っていた。
このため、韓国の教育やメディアでは、一般的に「朝鮮戦争において、日本は韓国を踏み台にして経済成長を実現した」と伝えられている。
しかし、当時の日本はアメリカの占領下にあり、「アメリカから資源を買い、アメリカのために生産し、アメリカの言い値で売る」という状況だった。
この朝鮮特需については、日本の発展にとってはむしろ阻害要因であったという指摘すらある。
ちなみに、日本は1954年の神武景気から「不況」を脱したと考えられている。
朝鮮戦争について、韓国の政治家やメディアは語ろうとしないことがある。
当時、日本が米軍の武器を製造したり、戦車や戦闘機などの修理を行ったりした後方支援が、韓国の祖国防衛に大きく貢献したという点だ。
現在、日本政府が防衛装備品の輸出ルールを緩和したことで、韓国メディアの中には「戦争ができる国」に大きく前進したとレッテル貼りをするところもある。
しかし、これは二重の意味で二重基準(ダブルスタンダード)だ。
まず、現在の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、世界4位の武器輸出大国をめざすという目標を掲げ、実際に海外への輸出を拡大し、着実にそのゴールに向かって進んでいる。
だから正確には、日本は「戦争ができる国」になったというより、大韓民国に近づいているのだ。
それに、朝鮮戦争という韓国最大の国難において、多くの日本人が必死に働いて兵器や物資を米軍に供給した。
その最大の受益者となったのは、国家の滅亡を免れた韓国自身だったといえる。
韓国のメディアはその点に触れようとしない。
朝鮮戦争の際、韓国防衛のために犠牲になった日本人の存在も忘れ去られている。

「反日」と「日本文化への親しみ」が混在する韓国社会
最近、「X」に自動翻訳機能がついて、韓国語の投稿が簡単に読めるようになった。
それで先日、日本の認識を嘆く韓国人ユーザーのコメントを見かけた。
「개인적으로 일본 내에서 한국인은 일본인을 싫어한다는, 소위 ‘반일’ 정서가 팽배하다는 인식이 안타깝다.」
(個人的には、日本の中で「韓国人は日本人を嫌っている」という、いわゆる「反日」感情が広く蔓延しているという認識があるのは残念だ。)
韓国では日本について、戦前戦中は「侵略や残虐な行為をした」、戦後は「その歴史を否定し、まともな謝罪もしてない」というネガティブなイメージが根強い。
しかし、国家を全体として見れば「悪」の面ばかりが強調されがちだが、「光」が無いわけでもない。
最近、韓国のテレビ番組の影響で日本の昭和時代の歌がブームになり、近藤真彦、中森明菜、松田聖子といった歌手の人気が上がっている。
日本のポップカルチャーが好きで、日本旅行を楽しみ、日本人に親しみを感じている人たちは本当に多いのだ。
韓国の人たちが「昭和の日本についてどう思う?」と聞かれたら、きっと日韓の暗い歴史が最初に思い浮かぶ。
先ほどの韓国人ネットユーザーもそれを前提にしているからこそ、「日本人は、韓国が反日感情に満ちていると思い込んでいる」と考えたのだろう。
しかし実際の韓国社会には、多くの人が日本文化に慣れ親しんでいるという一面がある。
だから、日本人が韓国を旅行しても普通は「反日」を感じることはなく、むしろ親切を受けることのほうが多い。
そんな経験から、「韓国に反日はない」と一気に結論づける日本人もいるが、韓国社会の根底には依然として日本に対する複雑でドロドロした感情があるのも事実。
日本が記念硬貨を発行しただけで、全国メディアが「侵略や蛮行のロンダリングは許されない」と非難するほどに。
韓国が日本に向ける視線は多面的であり、「嫌いと好き」のギャップが激しいため、とても複雑だ。
台湾と韓国の違い
それと対照的なのが台湾だ。
台湾も同じ時代に日本の統治を受けていたが、多くの人はその時代の「良い面・悪い面」の両方を理解しているため、全体的に昭和の日本を好意的にとらえている。
だから日台間では、日韓のように過去の歴史をめぐって外交問題に発展することはない。
韓国でも、戦後の日本がさまざまな形で協力してきた事実を知る人が増えれば、きっと日本を見る視線はもっと温かく、シンプルなものになるはずだ。
メディアや政治家はそういう側面をほとんど報じないが、SNSを見ていると「日本の貢献」について発信している人をわりと見かける。
個人的には、そうした草の根の動きが広がって、日本のイメージが変わっていくことを期待している。

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