16世紀末、豊臣秀吉が朝鮮出兵をおこない、韓国側で大きな被害が出た。韓国の人たちはこの恨みを忘れない。19世紀後半、朝鮮半島を旅したイギリス人女性イザベラ・バードの旅行記には、「三世紀にわたる憎悪をいだいている朝鮮人は日本人が大嫌い」と書かれている。
それについて、先日、日本軍の武将の子孫が400年の時を超えて韓国を訪れ、「祖先に代わって謝罪します」と頭を下げ、韓国側は「加害者の謝罪と反省」を歓迎した。受け入れることはなかったが。
そんなニュースが伝わると、日本では元寇で高麗軍が日本を襲撃し、多くの死者が出たことを指摘し、韓国に謝罪を求める人が現れた。
日韓の歴史問題では、こんなブーメラン現象がよく起こる。
自分は正しく、道徳的にも優れているという立場で、それが劣っている相手に「先生」のように振る舞う。韓国は他人に対し、そんな道徳的優越感をもって接することがあるが、名前負けすることも多い。
たとえば、市民団体の「正義連」(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)は、慰安婦おばあさんを支援すると称して寄付金を集めたが、実はそれを着服していたことがバレて、裁判で前代表が有罪判決を受けた。
韓国は日本にも、道徳的優越感をもって接することが常識的になっている。それにもとづいて謝罪や反省を求めるから、その感情が満たされると喜ぶ。しかし当然、日本とは摩擦が生まれ、結果的に大きなブーメランが返ってくる。
16世紀の朝鮮出兵で、日本軍が朝鮮半島で残酷な行為をしたという韓国メディアの報道に対して、日本では、ベトナム戦争で韓国軍がおこなった残虐行為を指摘する人がいた。韓国が日本に謝罪や反省を要求すると、カウンターとして必ずこういう人が現れる。
ベトナム戦争では、韓国軍が民間人を虐殺する事件が何度か起きている。
1968年に起きた「フォンニィ・フォンニャットの虐殺」について、ベトナムの被害者が韓国政府を相手に訴訟を起こすと、ことし1月、韓国の裁判所は「多数の非武装の民間人を対象とする故意で無差別な殺傷行為を正当化することはできない」と政府の責任を認めた。しかし、韓国政府はそれを否定している。
ハンギョレ新聞は、歴史に目を背ける政府を厳しく批判した。(2025-02-06 09)
ベトナム戦争民間人虐殺に対する記念碑的判決、しかし醜悪だった大韓民国【寄稿】
ここで言う「醜悪」というのは、韓国政府が被害者に対してした以下の言動を指す。
・「ベトナム人は金もないはずなのにどうやって韓国の弁護士を雇ったのか」と蔑視に近い発言をして原告を皮肉った。
・政府はあいまいな主張をしたため、裁判官から「主張を後押しする論文や判例はあるのか」と何度も問い詰められた。
・もしベトナム側の被害者およそ9千人が訴訟を起こした場合、損害賠償として3600億ウォン(約400億円)の支払いが見込まれ、これは韓国国民が負担することになると主張した。
これは戦後に起きた事件で証拠があり、韓国政府が否定するのは「無理ゲー」になっている。そのため、政府は事実関係についての論争は避け、論点をずらしをするなどして必死に自分を守ろうとしている。しかし、そんな努力もむなしく、韓国政府は前回2023年の一審につづいて今回も敗訴し、二連敗となってしまった。
10年以上前、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領がベトナムを訪れ、建国の父で初代首席のホー・チ・ミンの墓を参拝した。韓国の全国紙・中央日報はそのことを取り上げ、こう書いた(2013.09.13)。
ベトナムが非常に近くなった印象だ。歴史の浄化を経て、友人として変化の新しい時代を切り開く両国の姿に、こまやかで深い愛情を感じる。
【噴水台】歴史は和解し発展する…浄化経た新しい友人、韓国とベトナム
このとき中央日報は、政府が「ベトナム人は金もないはずなのにどうやって韓国の弁護士を雇ったのか」と言うなんて夢にも思っていなかったはず。
この年(2013年)、朴大統領は、日本と韓国の加害者と被害者という立場は1000年が流れても変わることはないと述べ、「千年恨(日本を千年恨む)」という言葉を生み出した。
こんな状態だから、日本の首相が韓国の初代大統領・李 承晩のお墓参りをしても、韓国側が「これで歴史の汚点が浄化された」とは認めるとは思えない。日本のメディアが「韓国が非常に近くなった印象だ」「歴史は和解し発展する」と評価したら、韓国側は怒るだろう。
韓日友好を願うのなら、過去を蒸して日本に謝罪を求めないほうがいい。でないと、またでっかいブーメランが飛んでくる。そのためにはまず道徳的優越感を無くし、加害者と被害者という関係性も否定して、日本と対等な立場で接してはどうか?
“世界語”となった韓国語:プルコギにキムチ、そしてネロナムブル

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