日本人の謝罪を喜ぶ韓国に、“元寇の蛮行”という巨大ブーメラン

近年、米ニューヨーク・タイムズ紙が使うなどして、「ネロナムブル」という韓国語が海外で有名になりつつある。これは、言っていることとやっていることが違う「言行不一致」を意味し、韓国人にとっては不名誉な言葉だ。

“世界語”となった韓国語:プルコギにキムチ、そしてネロナムブル

韓国のメディアや政治家はよく歴史問題を取り上げて日本を非難する。しかしそうすると、日本から「ネロナムブル」(二重基準)というブーメランが返ってくることがよくある。最近もそんなことがあった。

 

「あなたの大っ嫌いな日本人は?」

韓国でそんなアンケートを取れば、豊臣秀吉がワーストワン、少なくともトップスリーには入る。日本では天下を統一した英雄でも、秀吉は二度の朝鮮出兵(韓国では壬辰倭乱)をおこなったことで、韓国では蛇蝎のように嫌われている。

韓国では朝鮮出兵について、知人の韓国人は気にしていないけれど、今でも憎悪をいだく人が多い。だから、全国紙の朝鮮日報が伝えるこんな“勇気のある日本人”が現れると歓喜し、熱烈歓迎する(2025/10/11)。

「祖先に代わって謝罪します」 壬辰倭乱で朝鮮を侵略した日本の武将の子孫たちが許しと和解を求め来韓 /沃川

朝鮮出兵のさい、日本軍の武将だった人物の子孫2人が韓国をおとずれ、李舜臣の子孫など、当時の朝鮮軍の武将の子孫と会い、頭を下げて「許しと和解を求めた」という。韓国側が「謝罪の場をあっせん」しようと働きかけ、日本人の子孫がそれに応じてこの行動につながった。
式典に参加した子孫は、

「きょうを契機として多くの日本人が過去の過ちを反省し、平和の時代を共に進んでいくことを望む」

と語ると、韓国側はこう応じた。

「壬辰倭乱が起きてから433年が過ぎたが、今回の懺悔(ざんげ)の意味は極めて大きい」
「加害者の謝罪と反省には和解と許し、ひいては平和の未来を共に歩もうという趣旨が込められている」

 

韓国側はこの出来事を「韓日和解」の象徴として熱烈歓迎しているが、日本でも同じように好意的な見方をする人は、ネットで捜索しても見つけられなかった。今の日本でそんな人は、絶滅が危惧されるほどの超例外だ。
歴史問題で韓国にフレンドリーな報道をする日本のメディアでも、この話を取り上げたところは見当たらない。韓国のテンションと違って、日本にとってこれは両国和解の“美談”にはならないのだ。

ネットの反応を見ると予想どおり、韓国(高麗)と元軍が先に日本を侵略した元寇について“謝罪と賠償”を求める人がいた。
13世紀の元寇で日本では、赤ん坊が股(また)を裂かれて殺されたり、女性は手に穴を開けられ数珠つなぎにされたりしたが、現代の韓国人はそんな非人道行為を知らない。

韓国人の知らない日韓の歴史 朝鮮出兵・元寇であった悲劇

蒙古・高麗の連合軍が九州を襲って残虐な行為をしたことから、日本人は「蒙古と高句麗の鬼が来る」と恐れ、「むくりこくり」という言葉が生まれたとされる。また、高麗軍は多くの日本人の子どもを強制連行し、男女200人を国王とその妃に献上したという記録が残されている(元寇・対馬侵攻)。

韓国のメディアや政治家が朝鮮出兵を取り上げて日本を非難すると、必ず日本では元寇を持ち出して対抗する動きが出てくる。
歴史を全体的に見れば、加害者と被害者は入れ替わるが、韓国ではそれが固定されている。いつも「日本=加害者、自国=被害者」という設定になっているから、元寇で蛮行をおこなった武将の子孫が、

「きょうを契機として多くの韓国人が過去の過ちを反省し、平和の時代を共に進んでいくことを望む」

と祖先に代わって謝罪することはありえない。また、日本が韓国に対して、

「加害者の謝罪と反省には和解と許し、ひいては平和の未来を共に歩もうという趣旨が込められている」

と評価するような、そんな「上から目線」の態度を取ることを韓国は認めない。
歴史は流転する。400年以上前の蛮行を蒸し返すと、700年以上前の残虐行為を掘り起こされて、かえって「韓日和解」は遠のくのだが、韓国側に“被害者ポジション”を手放す気配はない。今回の時空を超えた謝罪を受けても、韓国側は「許した」と言っていない。
だから、こんな「日韓のブーメラン現象」はきっとこれからも続く。
次回はそのベトナム戦争編をお届けしよう。

 

おまけ

韓国が放ったブーメランで自分が傷つくことは、元寇のときにもあった。
日本では高句麗と元軍を撃退することに成功したが、幕府は武士たちに恩賞を出すことができなかったため、生活が困窮して海賊(倭寇)となる者が出てきた。いっぽう、高句麗は二度の日本遠征をおこなったことで木材がなくなり、船を建設することができなくなってしまった。防衛力が弱体化したため、倭寇の襲撃に苦しめられて大きな被害が出た。

 

 

日本 「目次」

韓国 「目次」

鎌倉幕府が滅亡した理由:元寇で打撃、元弘の乱でトドメ

「元寇をどう思う?」モンゴル人に聞いたら、予想外の反応が

日本も歴史問題で苦しんでいる? 韓国の「問題化」という大問題

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 知らなかった事実を知るようになりました。
    ‘麗蒙(麗元)聯合軍が日本でそんなに残酷なことをしたとは知りませんでした。
    韓国ではその遠征が神風に会って失敗したということだけ知っています。韓国でこの事件に対して罪悪感を感じないのは、自意による攻撃ではなく、モンゴル(元)によって強引に参戦することになったという考えからです。
    韓国人は歴史的事件を理解できず、ただ感情的思考に埋没していて、過去の戦争に対して復讐心を捨てることができません。太平洋戦争で戦死したり死亡したりした日本人の数はおよそ310万人で、アメリカ軍は12万人余りだということです。韓国人の思考なら、アメリカと日本は永遠に和解できない敵でなければなりません。

    *** ちなみに上記本文中、”高句麗”は誤記です。高句麗ではなく”高麗”です。
    高句麗は韓半島の三国(新羅、百済、高句麗)時代の国で、高麗は朝鮮以前の国です。

  • 高句麗ではなく、高麗の間違いでした。ご指摘ありがとうございます。

    >韓国でこの事件に対して罪悪感を感じないのは、自意による攻撃ではなく、モンゴル(元)によって強引に参戦することになったという考えからです。

    私の知人の韓国人も同じ考えをもっていました。しかし実際には、高麗王の子(後の忠烈王)が元の皇帝フビライ・ハンに日本を攻めるべきだと進言して日本遠征が決まりました。下の記事に書いてありますが、忠烈王は元寇で主導的な役割を果たしました。
    韓国はたくさんの侵略を受けて苦しんだ経験があります。そのせいか、自分を被害者にする傾向が強いと思います。

    https://gendai.media/articles/-/96437#google_vignette

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