最近、ドイツ人留学生のシュタルク(仮名)と会って話をした。
日本に興味を持った彼は本格的に日本語を学び、文化や歴史を知りたいと思って来日して、もう半年ほどが過ぎた。
今回はそんなシュタルクとの会話の中から、以下のテーマをお届けしようと思う。
・「日本語ならでは」の漢字のむずかしさ
・ドイツ人から見た『葬送のフリーレン』の面白さ
・日本とドイツの意外な共通点:戦国時代と神聖ローマ帝国
「日本語ならでは」の漢字のむずかしさ
ーーシュタルクくん、君は日本に興味があって、来日する前から日本語を学んでいたと言っていた。で、もう日本に来て半年ほどが過ぎたわけだ。
シュタルク:そうだ。去年の9月に来てから、本当にあっという間だな。
ーーノスタルジックな気分に水をさして悪いのだけど、それだけの経験があって、大学では週4日ほど日本語のレッスンを受けているのに、シュタルクの日本語がポンコツでビックリした。
「今日はとても楽しいかった」というミスは、日本語を習い始めて2〜3ヶ月の外国人がするものだと思っていた。
シュ:日本語はむずかしいんだ。文法もそうだけど、とくに漢字がね。
ーー漢字には意味があるから、慣れるとラクなんだ。かんじのないぶんしょうなんてほんとうによみづらい。
シュ:漢字が優秀な文字なのは分かる。見てすぐに意味がわかるからな。
日本語をマスターしたドイツ人が、2つの言葉を比べてこんなことを言っていた。「同じ内容の文章でも、日本語なら漢字を拾い読みすれば大体意味がわかるから、ドイツ語よりも短い時間で要点を理解できる」ってね。
ーーイグザクトリー。
漢字の無い新聞記事なんて読めたもんじゃない。
といっても、漢字を廃止した韓国はそんな状態になっているけど、大きな問題は起きていない。だから、意外と何とかなるかも。
シュ:その点、中国人はズルいよな。
彼らはいちばん困難なところをスキップできる。
ーーそういうのを日本語で「うらやまけしからん」と言うから、覚えておくように。
といっても、日本と中国の漢字はすべて意味が同じじゃない。ボクも「老婆=新妻」と知ったときは衝撃的だった。

それに、日本語では1つの漢字に複数の読み方があるから、中国人だって日本の漢字を学ばないといけない。
シュ:それだよ。
同じ漢字なのに、音読みと訓読みがあるから頭がゴチャゴチャする。
日本人と話をしていて「ニホンウミ」と言ったら、「…ああ、ニホンカイか」と訂正されたりするとね、何かやる気がなくなるんだ。
ーーさらに戦意を喪失させるけど、「敵」は音読みと訓読みだけじゃない。
たとえば「行」の読み方は、イ、コウ、ギョウ、アン、オコナ(う)と山盛りあるし、「行く」の読み方は「いく」でも「ゆく」でもいい。
シュ:なんで読み方がそんなにたくさんあるんだよ。もう外国人への虐待だろ。
ーー「ギョウ」は呉音、「コウ」は漢音、「アン」は唐音と言ってそれぞれ違うんだ。
中国のいろんな時代に漢字が日本に入ってきて、新しい読み方が古いものを排除しなくて「共存」してきたから、今ではごちゃ混ぜ状態になっている。
シュ:ドイツ語では考えられないね!
ーーでも、シュタルクは「楽しいかった」と言っちゃう段階だから、呉音や漢音で悩むのはまだまだ先だと思う。
フォロワー100人のユーチューバーが「有名になると街を歩けなくなる」と心配するようなもんだろ。
シュ:まあな。まだその次元に達していないことは認める。
ーー日本語の理解が進んで、「ドイツを漢字で『独国』と表すのは差別的だ!」と言われても困るけれど。
※漢字の豆知識
漢字の読み方は時代によって、大きく3つに分けられる。
呉音:5、6世紀
漢音:7、8世紀(奈良・平安初期)
唐音:10世紀以降(平安中期〜江戸末期)

ドイツ語のサイン。
「マーケット」はわかる。
ドイツ人から見た『葬送のフリーレン』の面白さ
ーーそもそも、シュタルクが日本に興味を持ったきっかけって何?
シュ:俺と日本の最初の出会いは、子供のころに見たアニメだ。それが独創的なストーリーで印象的だった。それから日本という国を知るようになって、魅力を感じたんだ。
ーーやっぱり。外国人に日本の入口を聞くと、「アニメやマンガ」と返ってくることが本当に多い。で、今は何のアニメを見ている?
シュ:『葬送のフリーレン』。ドイツ人にとって、あのアニメには別の面白さがある。ドイツ語のキャラクターや場所がたくさん出てくるんだよ。
ーーあ〜、その話、どっかで聞いたことがある。
シュ:たとえば、メインキャラの『フリーレン(frieren)』はドイツ語で『凍る』という意味だし、『シュタルク(stark)』は『強い』になる。
アウラやヒンメルなんかもドイツ語だ。
ーーうんうん、キャラ設定に合っている。
シュ:地名にもドイツ語が多い。
帝国の首都「アイスベルク(Eisberg)」は「氷山」の意味だし、「シュトラール(Strahl)」は「 光」、「ヴァイゼ(Weise)」は「賢い」だ。
ーーいまネットで見たら、「フリーレン」は英語の「freeze(凍る)」と語源は同じなんだ。「ヴァイゼ」と「wise(ワイズ)」もそう。
日本人の感覚からすると、ドイツ語の響きのほうが「格調高い」ってイメージがあるのかな。
シュ:それは素直に嬉しいね。
アメリカのドラマに出てくるドイツ人は「悪者」が多いから。

「ディアブロ」はスペイン語で「悪魔」という意味。
日本とドイツの意外な共通点:戦国時代と神聖ローマ帝国
シュ:最近、「フリーレンにはドイツ語が多い」ということ以上に、面白いと思ったことがあったんだ。
日本の歴史にはドイツの歴史とよく似ている期間がある。
ーー第二次世界大戦のこと?
同盟を組んで連合国と戦って、そろって敗戦国になった歴史は「同じ」だな。
シュ:いや、その闇歴史じゃなくて、日本の『戦国時代』のこと。
その時代、日本には天皇や将軍がいたけど、各地に大名が支配する国がたくさんあったんだよな?
ーーそうだな、それを1590年に豊臣秀吉が統一した。
シュ:ドイツの歴史でも『神聖ローマ帝国』の時代にそれとソックリな状態があったんだ。中央に皇帝が存在していたけど、実際には地方の領主が統治する「独立国(領邦国家)」が300以上もあった。
ーーそういや、神聖ローマ帝国ってそういった諸侯の集合体だったっけ。
その中でも、皇帝になる資格のある有力な諸侯を「選帝侯」と言うんだろ? 世界史の授業で習った。
それにしても、選帝侯の「ザクセン公」とか「ブランデンブルク辺境伯」とか、やっぱりドイツ語には格調高い響きがあるな。
中2病心にグサリと刺さるというか。
シュ:それは知らないけど、神聖ローマ帝国の場合は1871年にやっと統一されて、今のドイツになった。
ーー確かに、「一応トップがいたけど国内は分裂状態になっていて、やがて統一された」という過程は戦国時代も神聖ローマ帝国の時代も似ている。
シュ:だから、今でも日本とドイツには、地方ごとに豊かな文化が残っていると思うんだ。
ーーでも、現在ではドイツのほうが地方の独立性が高い。
16の州にはそれぞれ憲法があって、高度な自治権が認められているから、州が税率を決めることができる(所得税などは全国共通)。
でも、日本の「県」にそんな強い権限はない。
シュ:それは第二次世界大戦の反省でもある。
ーーというと?
シュ:あの時代、ヒトラーに権力が全集中したから、取り返しのつかない悲劇が生まれた。だから、二度とそんな状態にならないように、地方に権力を分散したんだ。
ーーその歴史は日本とまったく違う!






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