何度も書いているのだけど、あらためて日本には、世界でもっとも長い歴史のある国という特徴がある。
もちろん、これには「現在までつづく」という条件があって、日本より先に誕生した国はたくさんある。
しかし、古代四大文明のように、そうした国々は滅亡の運命から逃れることはできなかった。
この他にも、日本には「回復力」という大きな特徴がある。
日本人の強さの秘密「レジリエンス」とは?
日本人の大きなストロングポイントは「レジリエンス」の高さだ。
レジリエンスとは、大きな困難や逆境を経験したとき、それにくじけることなく立ち向かい、状態を早く元に戻そうとする能力や精神力をさす。
レジリエンスは「回復力」「復元力」「再起力」と訳されることが多い。
強い負荷が加えられて変形しても、以前の状態に戻る柔軟性から、「弾力」と言われることもある。
想像を超える事故や失敗に直面したあと、元の状態に回復するには一般的に以下の過程がある。
・目の前のとんでもない事態に対して呆然となり、頭が混乱して何も考えられなくなる。怒りや悲しみ、不安があふれ出し、感情を整理することができない。
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・「なぜ起きたのか」「どうしたら避けられたのか」といったことを考え始め、頭の中で出来事を整理しようとする。
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・今の状況は「変えられないもの」だと理解し、つらい現実を受け入れる。そして、もう一度立ち直ることを決意する。
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・状況に適応する行動が始まる。誰かに相談したり、自分でできることを見つけたりして、少しずつ前に向かって進んでいく。
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・日常生活が戻り、感情が安定して自信も回復する。
最終的な結果はケースバイケース。
ショッキングな出来事が起こる前より良い生活になることもあれば、同じ状態に回復することもある。
親しい人を亡くした場合だと、心に痛みをかかえながらも毎日を楽しく生きることになる。
さて歴史を見ると、日本人は何度も挫折から立ち直ってきたことが分かる。日本人には高いレジリエンス(精神的な回復力)があるのだ。
日本が「不死鳥」と呼ばれるのはなぜ?
絶望的な状況からの「あり得ない」復旧スピード
1945年の3月10日に、無数の米軍の爆撃機が東京上空に飛来し、大量の焼夷弾を落として人や家を焼き尽くした。
この東京大空襲で10万人以上が死亡し、約85万戸の家が無くなった。一度の空襲による犠牲者数としては、これが人類史上最大になる。
同じ年の8月、広島と長崎に原子爆弾が投下されて都市は廃墟になり、何十万人の市民が犠牲になった。

空襲で焼け野原となった東京(1945年)
しかし戦後、日本人は驚くべきスピードで立ち直った。
壊れた道路や橋などはすぐに修復され、都市は機能を取り戻し、人びとの生活も安定した。
1956年(昭和31年)には、経済白書に「もはや戦後ではない」という言葉が登場し、敗戦からの復興が完了したことが国民に伝えられた。
その後、日本は高度経済成長期へ突入し、東京五輪が開催されたり新幹線が開通したりして、空前の発展をとげていく。
この急激な経済成長が世界を驚かせる。
1979年には、アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルがこの要因を分析し、日本的経営を高く評価して『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を出版した。
「死の土地」からの復活と海外メディアの驚き
東京大空襲があった次の日、(もちろん時代は違うが)2011年3月11日は東日本大震災が発生し、津波などによって、2万人を超える死者・行方不明者がでた。
原子力発電所の放射能漏れ事故も発生した。
しかし巨大な地震も津波も、人びとの心を完全に折ることはできなかった。
市民は避難生活から戻ってきて、建物が無くなって「死の土地」とまで言われた地域に戻ってきて、生活を立て直した。
日本人の高いレジリエンスに注目した海外メディアはいくつもある。
例えばこれは韓国の全国紙・朝鮮日報の報道だ(2026/03/11)。
【現地ルポ】「死んだ土地」に人が戻ってきた…廃虚と化した福島第一原発周辺の町に工場・研究センター・ワイナリー 3・11から15年
福島で工場を建てた日本人は、「ここを復興するのは無理だ」という話を聞いたが、広島と長崎に原爆が落ちた時のことを思い出した。
その時も『人が住めない場所だ』と言われたが、見事に復興した。だから「ここも素晴らしい都市になる」と強調している。
「銀座の柳」
日本人の「回復力」の象徴に、明治時代に街路樹として植えられた「銀座の柳」がある。
その後、大正時代の関東大震災や東京大空襲などによって、何度も壊滅状態になったが、「銀座の柳」はそのたびに復活し、現在もその姿を見ることができる。
海外で日本が「フェニックス(不死鳥)」と呼ばれる理由
海外では、日本人の「レジリエンス」をフェニックス(不死鳥)に例えることがある。
フェニックスのモデルは、エジプト神話に出てくる聖なる鳥「ベンヌ」とされている。ベンヌは炎へ飛び込んで死んだ後、翌朝、再びよみがえることを繰り返していた。
つまり、フェニックスとは「絶対に死なない鳥」ではなく、「何度も復活する鳥」という意味になる。
ある外国人は、第二次世界大戦で壊滅状態になりながらも、驚異的な復興によって、世界有数の大国となった日本を灰の中から立ち上がる「フェニックス」と表現した。
「Hiroshima – Phoenix Rising from the Ashes」
日本は東京大空襲や原爆投下といった「完全な破壊」を経験しながらも、平和でハイテクな社会へ生まれ変わった。
彼はその回復力に驚き、「日本はフェニックスのようだ(Japan’s rise “like a phoenix”)」と書いている。
また、アメリカのジャーナリスト、リチャード・カッツ氏は、日本経済は低迷しても再び栄光を取り戻すだろうと信じ、『Japanese phoenix(不死鳥の日本経済)』という本を出版した。
モースが驚いた日本人
明治時代、今の東京大学で教えていたアメリカ人のモースはこんな話を聞いた。
「大火事がまだ蔓延している最中に、焼けた跡に板でかこいをし、看板を出し、燃えさしを掃除している人々を見たといった。」
まだ火災は終わっていないのに、もう復興に向けて動き出す人たちがいる。
アメリカ人には理解できない光景だったのでは?
不死鳥と日本人
実は日本人も同じ発想をしている。
戦争や大災害で壊滅的なダメージを受けても、必ず立ち直ろうとする自分たちの精神力を「不死鳥」に例えることがある。
新潟県長岡市は、幕末には戊辰戦争、太平洋戦争では二度の空襲を経験した。しかし、長岡市は不屈の精神で復興し、魅力ある都市として発展するという願いを込めて、市章のデザインを不死鳥にした。

長岡市の市章
福井は空襲や地震、堤防の決壊で破壊されても、そのたびに復興した。そのことから、市民憲章に「不死鳥のねがい」の名が付けられた。
わたくしたちは 不死鳥福井の市民であることに誇りと責任を感じ
郷土の繁栄と幸福をきずくため 力をあわせ 不屈の気概をもって
このねがいをつらぬきましょう
また、1995年に大震災で大被害を受けた兵庫県では、復興計画に「ひょうごフェニックス計画」の愛称を付けることにし、同時に、漫画『火の鳥』をシンボルマークに採用した。
日本人特有の強さ「仕方がない」に込められた精神
レジリエンスが高い人には「現実逃避しない」という共通点がある。
「これは大失敗だ」「見通しがかなり厳しい」と現状をありのまま認めようとする。先に進むためには、まずは現実を受け入れないといけない。
面白いことに、「何とかなる!」と楽観的に考える人より、現実的な人のほうが回復が早いという研究もあるという。
避けられない悲劇や不条理に直面すると、日本人は「仕方がない」と言ってその事態に適応する。
日本人は何気なくこの言葉を使っているが、外国人から見ると「Shikata ga nai」には、実は日本人の独特な精神力が込められている。
「仕方がない」は決してあきらめの言葉ではない。
起きてしまった過去を変えられないと受け止め、「いま自分たちにできることを精一杯やろう」というスタートポイントになる。
この心理状態にならないと、前に進むことはできない。
日本ほど地震や津波、台風といった自然災害に襲われる国はあまりない。それにくわえ、何度も火災や戦災を経験してきた。
こうした歴史から日本人は、人の力を超えたものには抵抗しないで、「運命(仕方がない)」と思って受け入れ、早く未来に向かって進もうとする態度や考え方を身に着けたのだろう。
日本は一度も滅びたことはなかったが、部分的には何度も壊滅的な被害を受けてきた。
しかし、そのたびに復興したから、海外からは「不死鳥」に例えられる。
その驚異的な回復力の根底にあるのは、過酷な自然が生んだ日本人の強じんな精神力だ。

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