「地震の原因」をキリスト教徒は神、日本人はナマズと考えた

 

きょう11月24日は、1833年にインドネシアでマグニチュード8.9の巨大地震が発生した日。
この地震の規模は、2004年に約22万人が亡くなったスマトラ島沖地震に匹敵するとか。
22万人というと、ちょっとした都市が全滅したレベルじゃないか…。
さらにこの日は、1859年にチャールズ・ダーウィンがイギリスで『種の起源』を出版したことから、「進化の日」という記念日にもなっている。

この2つの出来事をキリスト教の観点で考えると、どうなるか?
キリスト教では、神が世界を創造し、この世で起こることはすべて「神の意思」とされている。
人類が“サル”から進化したという「種の起源」の考え方は、キリスト教の「創造説」に反しているため、アメリカでは現在でも、熱心な信者は進化論を学校で教えることに反対している。
一方、日本人は創造説のような考え方を知らなかったから、明治時代にアメリカの学者が大学で進化論を教えても、それに反発する日本の学生はいなかった。
アメリカの学者には、そんな無反応が意外だったという。

キリスト教的には、地震も創造主である神のしわざ。
米ミシガン大学のウェブサイトに、地震を神の怒りと考えた18世紀のアメリカの牧師の記録がある。
Earthquakes a Token of GOD’s Anger
それを読むと、当時のキリスト教徒が地震をどう理解していたのかが分かる。

・That ’tis GOD who maketh the earth to shake, and the pillars thereof to tremble.
(大地を揺るがし、その柱を震わせるのは神である)
・pungent sense of the power and greatness of God.
(神の力と偉大さを痛感する。)
・we were afraid of this tremendous judgment of God
(私たちは、このとてつもない神の裁きを恐れた。)

地面を動かすことができる存在は、偉大な神以外にはありえない。
人が神に反する行動をとっていたから、神は“罰”を与えるためにそれをした。
キリスト教の考え方からしたら、地震は神の怒りと理解される。

 

1833年にインドネシアで大地震が発生した少し後、日本でも、1855年にマグニチュード7クラスの安政江戸地震が発生し、江戸の町が破壊されて約1万人の死者が出た。

 

安政の大地震絵図

 

キリスト教徒は地震の原因を「神」に求めたが、江戸時代の日本人は、地震は「巨大なナマズ」によって起こると考えた。
江戸時代の人々は、日本列島の地下に大ナマズがいて、それが何かのきっかけで動くことで地震が発生し、地上は大騒ぎになると信じていた。
そんなことから、安政の大地震の後、人々は地震から身を守るため、またはその恐怖や不安をなくすために、以下のような「鯰絵」を買い求めた。

 

「おまえのせいだ!」とばかりに大ナマズをたたく江戸の庶民

集団リンチなのだけど、ナマズは適度な刺激を感じて、むしろ気持ちよさそうな顔をしている。
「神の力と偉大さを痛感する」や「神の裁きを恐れた」というキリスト教徒とはまったく発想が違う。

 

ナマズの妖怪

 

人間の姿をしたナマズが被災者の救助をしている。
だったら、地震を起こすな。

 

この鯰絵は地震後の再建によって、大金を得た職人たちを描いている。

 

科学が発達した現代では、地震は地下で動くプレート(岩盤)同士がぶつかることによって発生すると判明している。
江戸時代の日本人はプレートを「大ナマズ」と考えたようだ。

いまの日本では、地震の原因をナマズに求める人はいないけど、キリスト教の場合はそう簡単にはいかない。
「この世界で起こることはすべて神の意思による」という考え方は変わらないから、2011年に東日本大震災が起きたとき、マダガスカル人から聞いた話によると、熱心なキリスト教徒の多くがこれを「GOD’s Anger(神の怒り)」と理解した。
彼らは、日本人の信仰心が薄いことに神が怒り、“罰”を与えたと信じ、津波にのまれる都市の映像を見て震えた。
その恐怖から、キリスト教徒は神への信仰をさらに深めたという。
これじゃ、18世紀のアメリカのキリスト教徒と変わらない。
でも、信仰とはそんなものだ。

 

中世のヨーロッパで黒死病が流行したとき、キリスト教徒たちはその原因も“神の怒り”と考え、それをしずめるために各地のユダヤ教徒を虐殺した。
もし、当時のヨーロッパで大地震が発生したら、同じ悲劇が起きたとしてもおかしくない。
地震の原因を大ナマズと考えて、想像上で「コイツめ!」とポカポカする日本人とは価値観や考え方が違う。

 

 

日本 「目次」

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。