韓国人が知らない、朝鮮戦争で韓国のために死んだ日本人

日韓関係の発展や平和は自然には得られない。だから朝鮮通信使の歴史を教訓に、相互尊重の精神を固めていくことが大事だ。
そんな気持ちでいま日本を訪れている韓国の議員が、両国の議員による「サッカー日韓戦」を提案するらしい。
ということを前回に書いたわけですよ。

【これからの日韓関係】反日の甘えはなし、相互尊重の精神で

歴史を教訓に相互尊重の精神を大事するのなら、韓国にはぜひ他に知ってほしいことがある。

北朝鮮との関係改善を悲願とする韓国政府がいま全力で進めているのが、朝鮮戦争（1950年 – 1953年）の終戦宣言を出すことだ。
でも日本やアメリカはこれに消極的で、なかなか先には進まない。
その朝鮮戦争について、韓国の人たちはどう思っているのか？

韓国の歴史認識を知るには歴史教科書を見るのが一番で、高校生用の歴史教科書には朝鮮戦争についてこう書いてある。

北韓の南侵は不法な軍事行動であり、平和を破壊する侵略行為であると規定し、大韓民国を守る支援することを決議した。アメリカ、イギリス、フランスなど16ヵ国の軍隊で構成された国連軍は、韓国軍とともに反撃を開始した。

「韓国の歴史教科書　（明石書店）」

この戦争は北朝鮮（北韓）の侵略によって始まった。それを国連が不法と判断し、米英仏などの国連軍と韓国軍が協力して戦って祖国を守った。
朝鮮戦争とはそんな救国戦争だった、というのが一般的な認識だ。
この戦争と日本との関わりについては、アメリカ軍に必要な物資を提供するなどして朝鮮特需で「かなり儲けた」とする見方が韓国ではよくある。

たとえばこれはハンギョレ新聞の報道。（2019-07-19）

日本は1950年の朝鮮戦争で超好景気を享受した。米国が地理的に近い日本で戦争物資を調達したことで、朝鮮戦争の3年間で日本は米国から計25億ドルの収入を上げた。当時日本の首相の吉田茂は、朝鮮戦争を“天の恩恵”と言った。植民地で苦難を負った朝鮮半島は戦争で焦土化されたが、日本は超好景気の戦争特需を得た。

［寄稿］東アジアの未来は過去の歴史の結び目をほどくことから

へ～、吉田茂が「天の恩恵」なんて言ったんだ。
と思っていまネットで検索しても、このハンギョレ新聞の記事しかヒットせず。

それはともかく、この戦争で韓国は塗炭の苦しみを経験した一方、日本は好景気を迎えてウハウハになったというように、明暗を強調することが韓国では多い。
たしかにあの戦争によって韓国では150万人の犠牲者が出て、多くの戦争孤児が生まれたし、国土は焦土となり、建物、道路、工場、発電施設などが破壊された。

日韓の歴史について特に学んだという日本語ガイド（50代の男性）は、「朝鮮戦争で韓国は地獄、日本は天国になりましたね。あのときの儲けたカネを、少しは韓国に返してほしいですよー」とあっけらかんに話す。
でも日本が米軍に物資を提供し、それが韓国の独立を守ったことに直接つながったのだから、これは「ウィン・ウィン」だ。

朝鮮特需についてはよく知っているのに、このガイドは日本人が「参戦」していた事実をまったく知らなかった。
朝鮮戦争で防戦一方だった韓国側が反撃に転じた「仁川上陸作戦」という重要な局面では、2000人の日本人が活動し、57人が戦死したといわれる。

「日本人は朝鮮半島には何度も行っているから、海岸の地形について非常に詳しかったです。彼らは敵から攻撃を受けながら、ゲートを開き、荷下ろしを必死で担いました。我々は協力し合い、作戦を成功させたのです」

と元米海兵隊員が話すように仁川上陸作戦では、その辺の水路をよく知る日本人の協力はマストだったのだ。

日本特別掃海隊の掃海活動は、国連軍の元山上陸作戦、鎮南浦からの撤退作戦及び上記港湾を使用しての後方支援作戦等に必要不可欠であった。

日本特別掃海隊

でも、それによって多くの「戦死者」が出た。
朝鮮戦争に参加して亡くなった日本人がいることをガイドに話すと、「それはまったく知らなかった！驚きました」と目を丸くする。
日本の貢献は韓国では語られていないらしい。
たしかに韓国の歴史教科書や報道では朝鮮特需についてはよく出てくるけど、こうした日本人が紹介されるのを見た記憶がない。

とはいえ、皆無でもない。
きょうの「コリア・エコノミクス」の記事によると、台湾人と日本人の「犠牲がなかったら、ソウル奪還作戦はさらに遅れ、興南撤収作戦は円滑に施行できなかっただろう」とクォン・テオ予備役陸軍中将が述べたという。（2021年11月17日）

韓国軍幹部「朝鮮戦争には日本や台湾も《参戦》した」「無名の勇者たちの犠牲…記憶しなければ」

先日15日には、1950年に韓国の元山沖でアメリカ軍の大型曳船が機雷によって沈没し、乗っていた日本人22名が死亡した。
歴史を教訓に、相互尊重の精神を固めていくことが大事と韓国が主張するのなら、朝鮮戦争で韓国のために命を落とした日本人と韓国人を合同で慰霊する機会をつくればいい。
こうした人の魂に手を合わせることは、“嫌韓”の日本人だって反対しないだろう。
議員によるサッカー日韓戦よりは、この方が日韓友好の役に立つ。