今回登場するのは、静岡の大学に通うリトアニア人とポーランド人の留学生だ。
彼らの名前を仮に「トマス」と「アントニ」としよう。
両国は隣り合っていて、16世紀に成立したポーランド・リトアニア共和国は、当時ヨーロッパで最も大きく、最も人口の多い国のひとつだった。
現在では、リトアニアもポーランドもEUに加盟している。
中央ヨーロッパ出身の2人を全国的なファミレスに誘って、食文化や日本人の距離感について話を聞いてみた。

ペペロンチーノ
サイゼリヤの感想は?
ペペロンチーノは日本料理?
ーーここは「サイゼリヤ」といって、日本では誰もが知っているイタリア料理のファミリーレストランなんだ。
トマスは初めてって言っていたけれど、どう思った?
トマス:メニュー表を開いたら、値段が意味不明なほど安くてビックリしたよ。
パスタが300円なんて、バグっているとしか思えないね。
アントニ:わかる。俺も最初は二度見、三度見したから。ヨーロッパのレストランなら、「ゼロ」がもうひとつ多いほうがまだ現実感がある。
トマス:でも、出てきた料理の少なさにも驚いた。
ヨーロッパの感覚なら、一人前のパスタを取り分けた後の量という感じだな。
ーーサイゼリヤの値段でヨーロッパサイズの料理を提供できるレストランなんて、地球上に存在しないだろ。少なくとも先進国ではね。
サイゼの料理は日本風にアレンジされているって言われるけれど、そう感じた?
トマス:確かにヨーロッパでは見たことがない、独自の料理が多いと思った。
アントニ:たとえば、このペペロンチーノとかな。
ーーえっ?
トマス&アントニ:えっ?
ーーペペロンチーノって日本でよくあるパスタ料理だけど、ヨーロッパではそうじゃない?
トマス:そうなのか?
俺は日本で初めて見た。
アントニ:俺も。「ペペロンチーノって何だろう」って思った。
※このパスタは本場イタリアにもある。
「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」を略して、日本では「ペペロンチーノ(イタリア語で唐辛子の意)」と呼ばれているため、外国人にはこの言い方は通じない可能性が高い。
イタリアではシンプルな家庭料理として作られることが多く、レストランのメニューにはあまりないらしい。

小さい料理と細い日本人
トマス:量は少ないけれど、信じられないほど安いから、総合的にはサイゼリヤに満足だ。きっとまた来る。
ーー日本滞在中に全メニューを制覇してくれ。
アントニ:このレストランだけじゃなくて、日本の食べ物は全体的にサイズが小さいと思わないか?
トマス:そうだな。だから、日本にはやせている人が多いんだよ。
美意識が違うんだろうけど、日本人や韓国人は細すぎて、ヨーロッパでは「あまり健康的に見えない」って言う人もいる。
ーー前にドイツ人もそんなことを言ってたな。
「日本人がやせているのは、きっと社会的なストレスと無関係ではない」って。
アントニ:だから、「ジャパニーズ・ファット(日本人の太っちょ)」は、ヨーロッパならきっと普通の範囲内にある。
そして、規格外に太っている人のことを、俺は個人的に「アメリカン・ファット」と呼んでいるんだ。
ト:www。
日本や韓国とは反対の意味で、アメリカもあまり健康的に見えないよな。
ーー好き勝手言ってくれるな。
今でも「ヨーロッパ中心主義」があるんじゃないのか?


ポーランドの街なみ
アジア人、ヨーロッパ人、日本人の距離感
ーー2人から見ると、日本の食べ物は全体的にサイズが小さいと。
じつは、日本人の心もそうかもしれない。
アントニ:どういうことだ?
ーー日本人の「対人感覚」のこと。
日本に住んでいる外国人に聞くと、日本人はいつも一定の距離をとっているから、「心を閉ざしているようだ」「仲良くなった気がしない」と話す人が多い。
2人もそう感じる?
トマス:今の俺の環境には、バングラデシュ人、インド人、インドネシア人、ベトナム人といったアジア人の留学生がたくさんいて、何人か知り合いもできた。
彼らと日本人では、確かに「距離感」が違う。
アントニ:同感。
俺が知っているのはベトナムからインドまでのアジア人で、韓国人や中国人はわからないけれど、その経験から言うと、彼らはすぐに距離を縮めようとする。
トマス:それな。
ヨーロッパ人なら初めて会って知り合いになり、何度か言葉を交わして仲良くなっていく。
でも、アジア人は一度パーティーで話をしたら、すぐに距離がなくなって友人になる、という感じなんだ。
ーー知り合いのインド人もそこに悩んでいた。
土曜日に飲み会をして、彼は日本人と話をして仲良くなったと思った。
でも、月曜日に大学で会ったら、以前と変わらないそっけない態度をされて、「距離が縮んでいない」とショックを受けていた。
アントニ:アジア人は良く言えばフレンドリーで、悪く言うなら馴れ馴れしいところがある。
俺にはヒゲがあるだろ?
あるインド人が「いいヒゲだな」と言って、手を伸ばしてヒゲを触ってきたから驚いたよ。
ヨーロッパの感覚からするとその態度は失礼だから、正直イラッとした。
トマス:もちろんヨーロッパは広いから地域差はある。
一般的に北に比べると、南のスペイン人やイタリア人は身体的な接触(スキンシップ)が多い。でも、知り合ったばかりで、相手の顔に触れることはないだろうな。
ーー日本人の感覚でもそれは失礼だ。
トマス:そう思う。
日本人は礼儀正しくて、自分と相手との間に一定の距離を保とうとする。アジア人よりはヨーロッパ人に近いと思うね。
ーー福澤諭吉の「脱亜入欧」を、こんな形で実現していたとは!
アントニ:いや、それを超えていないか?
俺の日本語が下手なせいもあると思うけれど、日本人は「壁」を作って、ヨーロッパ人よりも距離があって、人を近づけさせない意識が強い気がするよ。
トマス:アジア人とヨーロッパ人を足して、2で割ると日本人になるかもな。
ーーなるほど。
インド人が「日本人と仲良くなれる気がしない」とボヤく理由が見えてきた。

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