韓国で浴衣を着ない理由と見えない「一線」
知り合いの韓国人女性は昔から日本に興味があって、ワーキングホリデーで来日し、東京に一年ほど住んでいた経験がある。
日本に対する彼女の「愛」は本物だ。
東日本大震災が起き、多くの外国人があわてて母国に戻るなか、彼女は親の声に逆らって日本に残ることを決意した。
そんな彼女が帰国してから、一度も使っていないものがある。
それは、夏祭りに参加するために買った浴衣だ。
捨てるにはもったいないから、「韓国で着る機会はないだろうな」と思いつつ一応持って帰ったら、その後10年以上まったく使わなかったという。
「韓国には反日感情があって、浴衣がそれを刺激して危険だから?」と聞くと、そうではなく、浴衣にふさわしい場所や機会がなかっただけだった。
浴衣を着て韓国の街を歩いたら、場違いで周囲から浮いてしまって変な目で見られるかもしれないが、それが理由で危険な目にあうことはない。
ただ運悪く、民族主義者のおっさんと出会ってしまうと、こちらが女性だと絡まれて嫌な思いをする可能性はあるという。
日本人が韓国を旅行しても、普通に行動していれば現地の人を不快にさせることはない。しかし、無意識にでも触れてはいけない一線はある。

景福宮の建物
景福宮と韓服体験
初めてソウルを観光で訪れた日本人が、まず間違いなく行くと思われる名所に「景福宮(キョンボックン)」がある。
ここは朝鮮時代(14世紀〜20世紀)の王宮で、色鮮やかな彩色はとても写真映えする。
景福宮では、韓国の伝統衣装である韓服(ハンボク)を着ていくと入場料が無料になるサービスがあり、周辺には韓服をレンタルする店がいくつもあった。
※今はどうなっているのか分からないので、興味のある人は要確認。
「文化盗用」への不安を感じた日本人
数年前、ある日本人はSNSでこのサービスについて不安を感じて、日本に興味のある韓国人が集まるグループにこんな質問をした。
「自分も韓服を着て景福宮を歩いて、いろんな所で写真を撮ってみたい。
でも、かつて日本は韓国を支配し、苦しみを与えた歴史があることを考えると、『そんなことをしていいのだろうか?』と不安を感じてしまう。
現地の人たちはどう思っているか、知っている人がいたら教えてほしい」
この質問の背景にあったのは、アメリカでよく問題になる「文化盗用」だ。
白人が先住民や黒人の伝統衣装や飾りを身につけると、その行為が「文化盗用」として強く非難される。
この考え方から、投稿主は「加害国」の人間が、「被害国」の伝統衣装を着ることに抵抗があったという。
寛容な韓国人の反応
しかし、その日本人が不安を打ち明けると、韓国人からは好意的なコメントが相次いだ。
・韓国の伝統文化を経験するいい機会です。何の心配もいりません。
・自転車でよく景福宮のまわりを走っています。外国人のみなさんに韓服を着てもらっているのをよく見かけますが、むしろ嬉しい気持ちです。
・政府と民間は違います。これは歴史問題ではなく、民間の文化交流ですからまったく問題はありません。
・韓国人は日本文化が好きだから、京都で着物を着て歩く人もいるんですよ。
・外国人が韓服をレンタルして景福宮を散歩するのは、ほとんどの人が誇りに思っています。
・わざわざ韓服を着てくれたと感謝して、喜んでいると思います。
・問題ないです。美しい服を着たいと思うのは自然なことですから。
韓国人からのコメントは歓迎一色で、「ソウルは寒いから風邪をひかないように対策をしてください」と気遣う人もいた。
でも、別の角度から「日本人は韓国の歴史を知らなさすぎますね」と、次のように訴える人がいた。
「日本で韓国の人気が高く、韓服を着て景福宮を散歩することはかまわない。でも、30年ほど前まで、そこに日本総督府があったことを知ってほしい。日本人がその歴史を知ると心苦しいかもしれないが、韓国の人がなぜ怒っているのか理解できるようになる。両国にとってとても大切なことだ」
これには多くの「いいね」が付けられた。
しかし、そういう人たちは、1910年の日韓併合後も大韓帝国の元皇族たちは王宮に住み続け、日本から巨額の資金を支給されて優雅に何不自由なく生活していたことを知っているのだろうか。
景福宮の所有権は日本に移り、500もの使っていない建物を保存すると、民衆に重い負担がのしかかることも。

誤訳が引き起こした「着物騒動」
このSNSのやり取りの中で、「無駄な騒動」が起きた。
ある韓国人が、自動翻訳の誤りで「韓服」が「着物」と変換された文章を読んでしまい、「景福宮を日本の着物を着て歩いていいか?」という質問だと勘違いしてしまった。
彼は韓国人が「気にしないで」「むしろ嬉しいです」と歓迎しているのを見て、こんな怒りのコメントを書き込む。
「日本はわが国の王室を滅ぼし、人々を苦しめて多くの命を奪った。それなのに、着物を着て景福宮を歩くことを喜ぶなんて、韓国人は正気を失ってしまったのか。本当に嘆かわしく、先祖に申し訳ない気持ちだ」
これに対しては反論や非難が殺到。
ほかの韓国人たちから「しっかり文章を理解しろ」「どこに目がついているんだ」といった返信が寄せられ、投稿はすぐに削除された。
韓服は歓迎、着物はNG:韓国のリアルな国民感情
「うっかりさん」への返信の中に、「もし着物であればそれは絶対にダメだ」という意見があった。
冒頭で紹介した、韓国で浴衣を「保存」している知人に聞いても、自分は日本文化が好きだけど、景福宮を着物で歩くことには否定的でこんな話をした。
「韓国人が韓服を着て皇居を歩いたら、日本人はどう感じますか? 韓国人はその何倍も不快な思いをします」
日本人が韓国を旅行して、韓服を着たりグルメを楽しんだりすることは歓迎される。
しかし、日本の統治時代という「歴史」を連想させるような行動は、たとえ無意識だとしても「NG」なのだ。
日本人が韓服を着て王宮を歩くことは誇らしいとしても、そこで日本の着物を着ることは感情的に受け入れられない。
きっとこれが韓国のリアルな国民感情だ。
おまけ
番外か論外か分からないが、勝手に誤解して嘆いたコメントにこんな返信が寄せられた。
「一度、過去の歴史は捨てて、韓日関係を考え直しましょう。第二次世界大戦でヨーロッパの国々は戦いましたが、利益のために結ばれています。
韓・中・日が団結したら経済的に繁栄し、お金持ちになります。
未来のために、それぞれの国の伝統衣装を着た若者が景福宮でデートする日を思い描いてみましょう」
ほかの韓国人から、「完全黙殺」されたのは言うまでもない。

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