日本と韓国の「平和の少女像」の明暗
どの国にも国民的な悲劇があり、過ちを繰り返さないために「平和の象徴」が作られる。
日本と韓国には、それぞれ少女をモデルにした像がある。この2つは海を越えてアメリカやドイツへ渡ったが、その後の運命は対照的なものとなった。
一方は世界中で愛され、もう一方は激しい対立の火種となり、結局は撤去された。
その背景を解説していこう。
韓国の「平和の少女像」
2011年、初めて「平和の少女像」がソウルの日本大使館前に設置された。この呼び方は韓国側のもので、日本では一般的に「慰安婦像」と呼ばれている。
日本を怒らせ、外交問題になった「11歳の少女」
韓国側の主張では、第二次世界大戦中に日本軍が朝鮮人女性を強制連行し、性奴隷にしたとされている。その悲劇のシンボルとして、市民団体が11歳の少女をモデルにした像を作ると、韓国各地で競うように設置されるようになった。
しかし、日本側はこの動きに強く反発している。
「強制連行」や「性奴隷」という説を裏付ける客観的な証拠はなく、日本軍に慰安婦は存在したものの、「11歳の慰安婦」という設定は事実と異なるフィクションだからだ。
日本の加害性を強調するために、事実を誇張した表現がなされているとの見方が強く、日本側は事実を無視した言動に抗議を続けている。
2018年には、韓国側は一線を越えた。
ある植物園に「永遠の贖罪」と題し、安倍首相(当時)が少女像の前でひざまずいて謝罪する像が設置され、日本政府を激怒させた。当時の菅官房長官は「国際儀礼上、許されない」と非難し、日韓関係に決定的な悪影響を与えると警告した。
ドイツでの対立と強制撤去
「平和の少女像」は海外へも進出し、2020年にはドイツ・ベルリンのミッテ区に、現地の韓国系市民団体「コリア協議会」がこの像を設置した。
ドイツの公共の場所で、「平和の少女像」が登場したのはこの時が初めてだ。
しかし、碑文には、事実にもとづかない「日本軍による強制連行」という説明があったため、日本の外務大臣や首相がドイツ側に抗議し、国際問題に発展。
その後、「平和の少女像」をめぐり、ミッテ区とコリア協議会が対立を深めていく。
事情を把握したミッテ区は像の撤去を命じたが、コリア協議会はこれを拒否。最終的に、2025年10月、区によって像は強制撤去された。
コリア協議会は反発したが、ベルリン行政裁判所も「撤去命令は正当」との判断を下している。
聯合ニュースの記事(2025/10/15)
ベルリン少女像の撤去命令は「正当」 韓国系市民団体の存続訴え認めず=独司法当局

晴れ着を着た佐々木禎子
日本の「平和の少女像」
一日本で「平和への願い」を象徴する少女といえば、佐々木禎子さだこ)だ。
1945年8月6日、2歳だった彼女は広島で被爆した。禎子は懸命に生き続けたが、「お父ちゃん、お母ちゃん、みんなありがとう」と言い残し、12歳のときに原爆症(白血病)で亡くなった。
その後、彼女をモデルにした「原爆の子の像」が広島の平和記念公園に建てられた。
「折り鶴」の物語がアメリカ市民の心を打つ
入院中、回復を願って折り鶴を折り続けた彼女の物語は、多くの人の心を打った。ノーベル平和賞候補にもなったアメリカの平和活動家フロイド・シュモーもその1人で、彼はシアトル市に働きかけて平和公園を作り、そこに禎子の像を設置した。
この像は核兵器の恐ろしさと平和への願いを伝えていて、広島と同じようにアメリカ市民から愛された。
世界が共感する平和のシンボル
佐々木禎子は、核戦争がもたらす影響の象徴となり、平和な世界を願う国際的なシンボルとなった。特に、2022年から続くロシアのウクライナ侵攻の中にあって、その象徴としての意義は一層強まっている。
Sasaki has become a leading symbol of the effects of nuclear war and has become an international symbol for peace and a peaceful world, especially during the ongoing 2022 Russian invasion of Ukraine.
プロパガンダか、純粋な祈りか
韓国の11歳の少女像と、日本の12歳の少女像。どちらも「悲劇を繰り返さない」という名目を掲げているが、その本質は大きく違う。
佐々木禎子の像に対して抗議する国は、アメリカや韓国を含めて世界のどこにもない。彼女の生き方や思いが、平和を願う純粋なメッセージとして届いているからだ。
一方、韓国の少女像は「実在しなかった」という点で、禎子の像とは決定的に違う。
平和を語りながらも、実際には、日本を攻撃する政治的な意図(プロパガンダ)が含まれている面は否めない。それが、海外でトラブルを引き起こす原因になった。
この像が特定の国を責めるためのものではなく、純粋に「命の尊さと平和の大切さ」を訴えるものだったら、もっと違う展開になっていたはずだ。
ちなみに、韓国人の知人の話によると、韓国国内でも、この像に熱心なのは一部の人だけで、日本との関係悪化を懸念する国民もいるという。
日本人が知っておくべき「平和」の伝え方
韓国の「平和の少女像」への対応は日本政府にまかせるとして、一般の日本人は、自国の「平和の少女像」が世界でどのように受け入れられているかをもっと知るべきだ。
シアトルに禎子の像があり、核攻撃への不安が高まる世界において、彼女が「国際的な平和のシンボル」として、高く評価を受けていることを知らない人も多いだろう。
事実にもとづいた純粋な平和への祈りこそが、国境を越えて人々の心に届くのだ。

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