日本生まれの「アメリカンコーヒー」|意味や由来をわかりやすく解説

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ペリーが出したコーヒーに、日本人の反応は?

幕末、マシュー・ペリーが艦隊を率いて来日し、武力攻撃をチラつかせて幕府に開国を要求した。そんな彼の高圧的な姿勢は「砲艦外交」と言われているが、ペリーは日本の役人に食事を振る舞って友好的な態度も見せている。

役人たちは、アメリカから持ってきた瓶詰めの牡蠣(カキ)によろこび、メロンやバナナなどのデザートを気に入ってパクパク食べ、「役人たちの胃袋はまさに底なしだった」とペリーを驚かせた(または呆れさせた)。

しかし、役人が拒否したものがある。
ペリー側が「アメリカのお茶」と言ってコーヒーを出したが、彼らはそれには口をつけず、煙管を取り出してタバコを吸い、リラックスしたという。

当時の日本人にしたら、「何だこの真っ黒い液体は? こんなものを飲めるか!」という思いだったのでは?

しかし、時代とともに価値観が変わり、いまや日本人にとってコーヒーはすっかり身近な飲み物になった。そして、「アメリカンコーヒー」という飲み物も生まれた。

「アメリカンコーヒー」は和製英語だから外国人には通じない。ではこれから、この日本らしさ満載のコーヒーの謎を解き明かしていこう。

 

煙管でタバコを吸う日本人
AIのイメージ図だから、ペリーが経験した場面とは違う。

日本生まれの「アメリカン」——外国人が戸惑う理由

前回、カナダ人留学生のアレックスと『コメダ珈琲』へ行き、彼から聞いた話を書いた。

カナダ人から見た日本|木の文化・歴史認識・アメリカ好き・嫌なこと

このとき、アレックスはメニューにある「アメリカン」を見て、一時停止した。カナダでそんなコーヒーを見たことがないし、きっとアメリカにも存在しない。
彼には、これがどんな飲み物か分からなかった。

以前、日本に住んでいるアメリカ人やイギリス人とカフェに行ったときにも、同じ場面を見た。2人とも「アメリカンコーヒー」という文字を見て首をかしげる。
「Light Coffee(ライトコーヒー)」という英語の説明があっても、それでは意味が分からない。
アメリカ人は「アメリカーノ」のことかと思ったが、もちろんそれとは違う。

カナダ人、アメリカ人、イギリス人が「アメリカンコーヒー」という名の迷宮に迷い込むのも無理はない。それは日本で開発された「ジャパニーズコーヒー」なのだから。

日本生まれのくせに「アメリカン」なんて名前を付けたから、今では一周まわって「アメリカにアメリカンが無いの?」と驚く日本人もいる。

 

コーヒー豆の焙煎

「アメリカンコーヒー」とは?

「台湾ラーメン」や「トルコライス」が日本で開発されたように、アメリカンコーヒーも日本独自の存在だ。

※台湾ラーメンは台湾に逆上陸して、「名古屋拉麺(名古屋ラーメン)」として提供している店があるという話を聞いたことがある。

アメリカに無いアメリカンコーヒーとは、「ライトコーヒー」という説明のとおり、苦味が少なく、さっぱりとした軽い味わいが特徴のコーヒーである。濃いコーヒーが苦手な人でも飲みやすい。

しかし、味が薄いといっても、「普通のコーヒーをお湯で薄めたもの」という単純なものではなく、「浅煎り」の豆を使って丁寧に作られている。

コーヒー豆は生豆の状態で輸入されて、日本国内で熱を加える「焙煎」がおこなわれる。この作業がコーヒーの味を左右するのだ。
その際、焙煎する時間に応じて、コーヒー豆は大きく次の3種類に分けられる。

深煎り:じっくり時間をかけて焙煎することで、色は黒くなり、苦みのある味になる。
中煎り:そこそこの時間で焙煎し、酸味・甘み・苦みのバランスの取れた味になる。
浅煎り:短い時間で焙煎することで明るい茶色の豆になり、味に酸味がでてくる。

つまり、アメリカンコーヒーは最初から苦味が出にくいように作られているため、薄く感じるのだ。
ただし、最近はコスト削減のため、お湯で薄めて提供する店もあるらしい。

ちなみに、ブレンドコーヒーは複数の豆を配合したもので、アメリカンのようなストレートコーヒー(単一種類のコーヒー)とは作り方が違う。

なぜ日本で誕生したのか? アメリカンコーヒーの由来

では、なぜ日本でこの飲み物が生まれたのか。由来には諸説あるが、ここでは代表的なものを2つ紹介しよう。

由来1:日本人の注文がきっかけ説

1960年代の日本では深煎りコーヒーが主流だった。
アメリカで働いた経験のある日本人が、東京の喫茶店でたくさん飲めるようなコーヒーがほしいとリクエストすると、店主は大きめのカップに、豆の量を少なめにして抽出し、薄めのコーヒーを提供した。
これが後に「アメリカンコーヒー」と呼ばれるようになったという。

 

由来2:アメリカのコーヒーが元になった説

もともとアメリカでは、多めのお湯でコーヒーを淹れるスタイルや、濃いコーヒーをお湯で薄めて飲む習慣があった。
その文化が日本にも伝わり、「アメリカンコーヒー」と呼ばれるようになった。

いずれにしても、「お湯を多く使うアメリカのスタイル」が名前の由来であることはほぼ確実だ。

まとめ:名前はアメリカ、中身は日本

アメリカンコーヒーは完全な「メイド・イン・ジャパン」だから、アメリカやカナダ、イギリスには存在しない。
(ひょっとしたら、台湾ラーメンみたいに逆上陸しているかもしれないが。)

この味が受け入れられた理由は、苦味を避けて「ほどよいバランス」を好む日本人の味覚に合っていたからだろう。
また、あっさりしているため何杯でも飲め、長時間の作業にも向いている。昭和の喫茶店文化や仕事スタイルとも相性が良かった。

台湾ラーメンやトルコライスのように、日本生まれなのに、勝手に外国の名前をつけてしまうところも日本人らしい発想だ。

次にアメリカンコーヒーを飲むときは、それが日本文化の一つになった背景を思い出してほしい。
味に少し深みが加わるかもしれない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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