知人のタイ人女性は静岡の大学で学んでいて、帰国して日本企業で働いたあと、夫といっしょにアメリカにわたって、今はミシガン州に住んでいる。
ここでは、彼女を「レック(เล็ก)」と呼ぶことにしよう。
前に、レックに食文化の違いについて話を聞いてみた。
アメリカ在住タイ人が感じた食文化 「米国<日本≪タイ」の理由
今回の内容は、彼女にとって忘れられないものごとだ。

富士市にある「夢の大橋」と富士山(のイメージ)
富士山|日本で忘れられない風景
ーーレックが日本を離れてもう10年以上が過ぎた。
20代だったレックも、もうすぐ40歳になる。
レック:あなたは今日を命日にしたいの?
ーーすまない。
いま日本の生活をふり返って、印象に残っている風景や場所ってある?
レック:あるある、ありまくりよ。
富士山のあの圧倒的な存在感は、今でもわたしの心に深く刻まれているわ。
ーー富士山か。
新幹線から見たり頂上まで登ったりして、感動する外国人がよくいるよな。
レ:悪いけど、わたしとあの山の関係は特別で、そのあたりの外国人とは次元が違うのよ。
初めて日本に来たとき、富士市の日本語学校に通っていたから、夏はむずかしいけど、冬は毎日のように見ることができた。
ーーレックは富士市にいたんだ。
それなら、飽きるほど富士山を眺められるな。
レ:それが、そうじゃなかった。
富士市には1年半ほど住んでいて、富士山は何度も何度も見たけれど、最後まで飽きることはなかったの。
ーー静岡県民としては、そう聞くとうれしいね。
レ:あなたとは1ミリも関係ないけれど、勝手に感動するのは自由よ。
あ、でもやっぱりやめて。
素敵な思い出に汚点が入ってほしくないから。
ーー人権侵害レベルの発言だな。
レ:ごめんなさい。言い過ぎたわ。
わたしは汚物を消毒する主義なの。
ーーおまえは聖帝か。
「溺れた犬をたたく」とはまさにこのことだよ。
※元ネタは、中国作家・魯迅の「打落水狗(だらくすいく)」という言葉。

タイにも「温泉」はある。
しかし、どちらかというと「スパ」に近い。

温泉|日本で忘れられない体験
ーーじゃあ、次は体験だ。
レックは日本でいろんなことを経験したと思うけど、その中で、10年たった今でもよく覚えていることはある?
レ:それは温泉ね。
タイの価値観では、裸で他人と同じ空間にいるのは「はしたない」ことだから、その意味で日本の温泉文化はタイの真逆にある。
温泉のことはタイにいたときから知っていた。でも、日本で初めて入ったときはすっごくドキドキしたわ。
ーーインド人も同じことを言っていた。
人前で裸になるのは、インドの文化では超絶的なタブーとされているから、温泉に入るのはものすごく恥ずかしくて、もう「冒険」というレベルなんだって。
レ:ほんとそれ。
タイの女性はけっこう恥ずかしがり屋さんだから、知らない人がいるところで真っ裸になるのは無理な人が多い。
だから、タイの温泉では水着を着ることになっているの。
個人的に、日本の女の子もシャイな人が多いから、わりと気が合うと思う。
ーー知り合いのインド人男性は日本に3年住んでいて、温泉に入りたいと思っていたけど、どうしても抵抗を感じて後回しにしていた。
でも、インドでは絶対にできない体験だったから、帰国する前日、思い切って入ってみたんだって。
レ:そしたら、彼はなんて言ってたの?
ーーもっと早く勇気を出さなかったことに後悔していた。
料金も高くなかったし、すごい開放感があって、想像の10倍気持ちよく過ごすことができたから。
レ:それもホント。
わたしはそんな「チキン野郎」じゃないから、日本に来てすぐに温泉に行った。
恥ずかしさのマックスはいちばん最初で、それをクリアしたらハードルはだんだんと下がっていく。
ーーインド人もそれを言っていた。
その経験から、彼は「後でやる」を人生のタブーにした。
レ:タイ人は「サバーイ(心地よい、快適)」な体験が大好きだから、一度温泉を体験したら気に入る人はわりと多いのよ。
ーータイ人って「サバーイ(สบาย)」な体験が大好きだよな。
タイでマッサージ文化が発達した理由もそれがあると聞いた。
たいして働いていないのに、「リラックスしたい」と思うのは矛盾していると思うけど。
レ:あなたには自殺願望があるのかしら。
とにかく、富士山と同じで、温泉にも飽きることがなかった。
タイとアメリカには、裸になって開放感を感じながら湯船につかる文化はないから、九州や四国にも遠征して、もっといろんな温泉に入っておけばよかったって思うわ。
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