知人のタイ人女性は静岡の大学で学んでいて、帰国して日本企業で働いたあと、夫といっしょにアメリカにわたって、もう10年ほどミシガン州に住んでいる。
ここでは、彼女の名前を「レック(เล็ก)」としよう。
タイでは「チューレン」と呼ばれるニックネームをつける文化があって、「小さい」を意味するレックは、タイで「あるある」のチューレンだ。
食文化の良さは「米国<日本≪タイ」
そんな国際経験が豊富なタイ人に、日本・アメリカ・タイの中で「最高 of 最高」の料理について話を聞いてみた。
ーー料理を作ることより、食べることが好きなレックに聞きたいんだけどさ、タイ、日本、アメリカの中で、どの国の食べ物がいちばん良かった?
独断と偏見でいいから、ハッキリ言ってくれたほうが分かりやすい。
レック:独断と偏見?
わたしのレビューはいつも中立公平で客観的、「宇宙の真理」と言っても過言ではないわ。
ーー大言壮語もはなはだしいな。
で、その謎の自信にもとづくと、どんなランキングになるんだ?
レ:1位は断トツでタイ、2位が日本で、そのすぐあとに3位のアメリカが続くって感じね。
タイ料理が1位の理由
ーータイがぶっちぎりか。
その理由は何なんだよ。
レ:それは、やっぱりわたしはタイ人だから。
外国にいると、タイのことを意識する機会が多くなるから、タイのことが前より好きになったの。
とくにタイ料理には誇りを感じるわね。
ーーこっちは主観と偏りしか感じないけどな。
レ:でも、客観性はあるのよ。
3つの国に住んでみて、やっぱりタイ料理は世界最高じゃないかって思うようになって、こっちに住んでいるタイ人に話したら、みんな納得してくれたわ。
ーーみんな「愛国補正」っていう魔法にかかってるだけだろ。
レ:いえいえ、ネットで調べたら合理的な理由も見つけたの。
タイ料理って、『甘い・辛い・酸っぱい・しょっぱい』というバラバラの要素が、奇跡的なバランスで共存している。
だから味が複雑で、底知れない深みがあるんだって。
まるで私の魅力のように、と言えば分かりやすいかしらね。
ーータイ料理を踏み台にして、それを言いたかっただけだろ。
日本料理への本音
ーーでも、日本の食べ物だって美味しいだろ?
外国人が日本旅行をする最大の目的はそれなんだぜ。
レ:それはもちろん。
勘違いしないでほしいのだけど、日本の食べ物は美味しいし、見た目もきれいで洗練されている。
ただ、全体的に味が薄くて、格調高く言うと「お上品」。
ラーメンやカレーみたいに濃い食べ物もあるけれど、日本料理は味が単調だから美味しさを理解するのに時間がかかる。
もちろん、わたしは日本を愛しているけれど、タイ料理と比べるとどうしてもそう感じてしまう。
ーーそう言えば、15年ぐらい前にタイを旅行した時、日本語ガイドもそんなことを言っていた。
日本食はパンチ(刺激)が弱いから、日本を旅行するタイ人の中には、ナンプラーや粉唐辛子を持参する人が、いつも一定数いたんだって。
まぁ、食レポは宇宙の真理じゃなくて、個人の感想だから何を言ってもいいよ。
アメリカ料理への本音
ーーじゃあ、3位のアメリカはどうなんだ?
レ:日本食と反対で、全体的に味が濃い。そして単調だから、飽きるのも早い。
それに、油も食べ物の量も多くて、油断するとすぐに太っちゃう。
ーーその場合の「アメリカ料理」って、具体的には?
レ:ハンバーガー、ホットドッグ、バーベキュー、フライドチキン、マカロニ・アンド・チーズとか、「ザ・アメリカ」みたいな食べ物のこと。
ーーそれぞれこだわったら奥深いんだろうけど、一般的に売っているのはたしかに大味っぽい。
アメリカの食の多様性と現実
レ:でも、アメリカって移民の国だから、タイ人がシェフをしているレストランへ行けば本場と同じタイ料理を楽しめる。
ーーそうか、ニューヨーク出身のアメリカ人が言っていたことを思い出した。
それと同じ理由で、本格的な中国料理、レバノン料理、ウクライナ料理、日本料理が食べられる。
世界中の食べ物があって、選択肢が多いのがアメリカのいいところだよな。
レ:その発言で、あなたがアメリカを一面的にしか知らないことがよくわかったわ。
ニューヨークはそうかもしれないけど、ミシガンの郊外に住んでいるわたしには夢の世界の話ね。
最寄りのタイレストランへ行くのに車で2時間ぐらいかかるし、気軽に行けるレストランもあまりない。
「食の選択肢」なら、静岡のほうがまだ多かったくらい。
だから、スーパーで買い込んで家で作ることがほとんどね。
ーーつまり、アメリカ料理が大味で単調というより、普段そういう食べ物しか食べてないってことか。

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