SNSを見ていたら、あるアメリカ人が日本旅行中に、アメリカでは当然のものが“無い”ことに喜んでいた。
それは「チップ」の習慣だ。
アメリカではレストランやホテル、ネイルサロンなどを利用したら、10〜20%ほどのチップを渡すのが常識になっている。
その人は日本に来て、そんな常識から解放されて気持ちがラクになったらしい。
さて、知人にニューヨーク在住のアメリカ人がいる。
50代の黒人男性で、ここでは「ボブ」と呼ぶことにする。
彼は日本人女性と付き合っていた経験があって、日本に何度か行ったこともある。
彼にニューヨークでの生活やリラックス法について話を聞いたから、今回はその内容を対話形式で紹介しよう。

ゴジラ、ニューヨークのマンハッタンに上陸
文化の違い?「内側を整える」日本と「外に吐き出す」アメリカ
ーー久しぶり、最近ボブはどんな感じ?
ボブ:最近か? 仕事がめちゃくちゃ忙しくて死にそう、それだけだね。
でも今はピークを越えて、少しはラクになったよ。
ーー「忙」って字は「心が亡くなる」と書くし、そんな状態が続くのはマズいな。
日本で仕事や生活で疲れている人は「癒やし」を求めて温泉に入ったり、自然の中で過ごしたりする。
ボブはどうやってリラックスするんだ?
スポンジで体をゴシゴシ洗うとか?
ボブ:何の話だよ。
※織田信長は初めて黒人を見たとき、「墨を塗っているに違いない」と思いこみ、体を洗わせて確かめた。

俺は毎朝、起きたらすぐに瞑想をしているし、たまにビーチへ出かけるのも好きだね。
ーーオーストラリア人もそんなことを言ってたな。
疲れた心を癒やすときは、個人的にお寺や神社みたいな静かなところへ行くと考えていたから、「俺ならビーチやバーに行く」と聞いたときはちょっと違和感があった。
ボブ:俺も同じだね。
リラックスすることが目的なら、教会とかの宗教施設は選択肢に入らない。
私:「脱・日常」を求めるという点では日本人と同じでも、やっぱり西洋人の発想はちょっと違うな。
「癒やし」というよりはストレス発散。
ボブ:どっちも同じに聞こえるが。
ーーネットを見ると、日本人は疲れを感じたら「内側(心)を整える」ことが重視されて、一人で静かな環境にいる傾向が高いらしい。
西洋人では「外にはき出す」ことが基本で、友人とバーへ行って飲んだり話したり、カウンセリングを受けたり、スポーツをして汗をかいたりするんだって。
もちろん個人差はあるけど、この説は正しいと思う?
ボブ:ニューヨークにはアジア人もたくさんいて、いろんな価値観が混ざり合っているから、一言ではまとめられない。
でも、心が疲れたら、話したり体を動かしたりすることで、心を「軽く」する人が多いと思う。
ーー日本では禅や神道の影響から、静かなところにいると落ち着きを感じ、心が「回復」される。
いっぽう、西洋ではキリスト教の「告白」の影響から、体の中にある悪いものを外へ吐き出すことで、「心」が落ち着くらしい。
ボブ:「告白」だって?
あれにそこまで大きな影響があると思えないけどな。

ニューヨーク市民がビーチですること
ーーニューヨークって近くにビーチがあるのか?
ボブ:…。
そうか、「おまえは本当にニューヨークを知らない」という前提で話をしないといけないのか。
ここにはビーチがいくつもあって、地下鉄で簡単に行くことができるんだ。
おまえが住んでいるところにもビーチはあるのか?
ーー日本は島国だからね。ボクが住む浜松には、日本三大砂丘のひとつ「中田島砂丘」がある。
で、ニューヨーカーはビーチで何をするんだ?
ボブ:その最適解は「何でも」だ。
海で泳ぐ、サーフィンや凧揚げをする、読書やゲームをする……本当にいろいろだ。
ーーそれは中田島砂丘でも見かけそうな光景。
ビーチですることは人類共通で、ニューヨーカーも浜松市民も変わらないか。
ボブ:ほかにも音楽を聴く人、踊っている人、屋台で買ったホットドッグを食べる人、トップレスで日光浴をする人、集団でヨガをする人たち、パーティーをしているゲイの人たちもいる。
ーーいくつか、日本のビーチでは見られそうにない光景が含まれているな。
「狂った物価」と無料のビーチ
ボブ:そんな人たちを眺めたり潮風に当たりながら、ボードウォークを散歩するのが気持ち良いから、俺はたまにそれをする。もちろん素足で。
※ボードウォークは木の板を敷き詰めた遊歩道(木道)のことで、湿地や砂丘など足場の悪いところに設置される。
この発想は世界中にあって、日本では縄文時代後期の遺跡からボードウォークの痕跡が発見された。
ボブ:昔、俺が格闘技を教えていたころ、ビーチや公園で生徒たちにレッスンをしていたんだ。
ーー道場とかの建物の中じゃないんだ。
ボブ:おまえ、ニューヨークの物価を何も分かってないな。
ここの物価は本当に狂っている。
ーーすこしは知ってる。日本でもたまにそれがニュースになるから。
卵12個が1000円するとか、ベッドルームが4つある一軒家を買った場合、毎月のローンが6000ドル(約100万円)になるというのは、控えめに言っておかしい。
ボブ:そのとおりだ。
俺はいま一人暮らしをしていて、生活費が月にだいたい5000ドルかかっている。
ーー5000ドル…って、円に換算すると約76万円!
東京の生活費の約4倍なのに、ニューヨークでは「庶民」なんだ。
でも、収入も世界最高レベルなんだろ?
ボブ:俺はフリーランスで働いていて、最低でも1時間に300ドル(約4万7000円)はもらっている。
ーーワオ! 日本の感覚だと夢の世界だな。
ボブ:それぐらい稼がないと、ここでは生活できないからな。
ーー日本に住んでいたメキシコ人の留学生を思い出した。
彼は近所のスーパーでアルバイトをしていたけど、ネットでアメリカ企業がシステムエンジニアの仕事を募集していたから、それにスイッチした。
そしたら、時給が千円から6000円にはね上がった。
アメリカはすごい国だと思ったね。
ボブ:そう、この国は何でもカネだ。
カネがあれば本当に楽しめる。
ーーロサンゼルスに住んでいるアメリカ人もそんなことを言っていた。
彼女は日本の地方都市に住んでいた経験があって、日本では無料で楽しめるところがたくさんあることを評価していた。
ロサンゼルスでは何をするにもお金がかかって、無料で楽しめるところはビーチぐらいしかないらしい。
ボブ:ニューヨークも同じだね。
アメリカは貧乏人には厳しい国なんだ。
だから、お金のないニューヨーク市民はビーチへ行くんだよ。

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