知り合いに、日本の会社で働いているメキシコ人がいる。
ここでは仮に彼の名前を「ホセ」と呼ぶことにしよう。
前にホセと会って、両国民の「性格の違い」について話を聞いたので、これからその模様を書いていこう。
時間感覚|15分の遅れは遅刻じゃない
ーー「コークスクリューパンチ」の使い手のホセに聞きたいんだけど、おまえは日本にどのくらいいるんだ?
ホセ: そんな必殺技を持っていたら、サラリーマンなんてしてないよ。
日本かい? もう、かれこれ5年になるね。
ーーその経験から、日本人とメキシコ人の性格にはどんな違いがあると思う?
ホ:メキシコ人の性格はとても大らかなんだ。
だから細かいことは気にしない。
ーー最近、インドネシア人に同じ質問をしたら、同じ答えが返ってきた。
日本人に比べるとかなり大ざっぱで、「気にしない」以前に気がつかないことも多いんだってさ。
ホ:僕にはね、そのインドネシア人の気持ちがわかる気がするね。
世界中で日本人ほど、繊細で厳しい人間はいないんじゃないかなってよく思うんだ。
ーーなんでそう感じるんだ?
ホ:日本に来たころ、文化の違いに驚いた経験がある。
待ち合わせに15分遅れて行って「こんにちは〜」って挨拶をしたら、日本人の友人に「遅刻したんだから、『ごめん』のひとことぐらいは言え」って言われた。
たった15分だぜ?
それで遅刻扱いされるなんて、日本人は本当に厳しいなって思ったよ。
ーーいや、それは遅刻の定義を満たしているだろ。
おまえ、そのときにゆうゆうと歩いてきて、今みたいに香水をつけていたんじゃないのか?
ホ:身だしなみは大切だよ。それに夏だったから、走ったら汗をかいてしまうじゃないか。
メキシコなら、15分ぐらいの遅れは常識の範囲内にある。
そんなことで、謝罪を要求するなんて非常識だね。
ーーなるほど、国民性の違いが見えてきた。
相手が待っていることがわかっているのに、自分のオシャレや快適さを優先させる。
メキシコでは普通のことでも、日本人だったら、相手を待たせたことへの誠意を見せないといけないから、それは「挑発行為」になりそうだ。
ホ:日本人は真面目だから、時間やルールを絶対的なものと考えてしっかり守る。
でも、メキシコ人にとってそれは「目安」に過ぎないから、守るかどうかはそのときの自分が決める。
僕から見た国民性の違いはそこだね。
ーーなるほど。
『走れメロス』の主人公がメキシコ人だったら、まったく別の物語になるな。
妹の結婚式でメロスがテキーラを飲んで踊っている間に、人質になった親友が処刑されるパターン。
ホ:そのときは、世界中の誰よりも深く親友の死を悲しむさ。
まぁそれは知らないけど、日本みたいに人を簡単に信用できない社会であることは間違いない。
メキシコ人の言うことは、あまりあてにならないからね。

メキシコ人から見た日本人の「無礼」な態度とは?
ーー日本人が時間を守るのは、相手のことを尊重するからだよ。
だから、外国人の間で日本人は「礼儀正しい」って評判だ。
ホ:必ずしもそうではないと思うけどね。
日本人は基本的に礼儀正しいけど、すごく無礼に見えるときがある。
ーー具体例をどうぞ。
ホ:客が店に入ると、店員が必ず「いらっしゃいませ」って声をかけるだろ?
なのに、日本人は素通りしてしまう。
あの態度だよ。
ーーそれは色々な外国人からも聞いたな。
アメリカ人もトルコ人もインド人もアフリカ人も、日本人が何の反応も見せないのは失礼に感じるらしい。
ホ:そう感じないほうがおかしいね。
「こんにちは!」と言っても無視する客なら、店員は会計のときにお釣りを投げて渡せばいい。
ーー海外とは習慣や文化が違うけど、それについては外国人が「無礼」と言うのもわかる。
ホ:人を待たせていると急いで来て「誠意」を見せるのに、相手が店員だとエラそうになる。
メキシコ人とは反対だね。
ーーそこは、「大らかだから気にしない」にはならないんだ。
ホ:挨拶を返さないのは、「細かいこと」じゃない。
それは、相手をまともな人間と認めないことと同じじゃないかな。

インドネシアのコンビニスタッフ。
インドネシア社会はかなり「ユルい」。
店内で商品を選んでいると、2人の笑い声が聞こえるほどおしゃべりを楽しんでいた。
日本とメキシコの女性観|「レディーファースト」の違い
ーーほかに、ホセが感じた日本人とメキシコ人の性格や考え方の違いは?
ホ:僕にとっては女性観の違いだね、あれには戸惑ったよ。
日本語学校に通っていたとき、日本では恐ろしいものを「地震 雷 火事 親父」と言うって習った。
日本らしい表現だね。
ーーそれはもう古くて、今の日本の男は「草食」を超えて、「ザコ化」している気がする。
妻からもらう昼食代が、ペットのランチ代より少ないって嘆くサラリーマンを見たことがある。
ホ:メキシコや中南米では、昔から母親が強い力を持っていて、父親は頭が上がらないんだ。
社会的にも「レディーファースト」の考え方が浸透しているから、男は女性に敬意をもって接している。
でも、日本では昔から「男尊女卑」の空気が強くて、今でもその影響が残っているだろ?
ーー大昔はそうでもなかったけどな。
鎌倉時代には女性が尊重されていたよ、天皇の先祖神である天照大神は「女」だったということでね。

ホ:どれだけタイムスリップしてるんだよ。
とにかく、メキシコじゃ日本より女性の立場が強くて、レディーファーストは一般的な常識になっている。
だから日本でも、女性が車に乗るときにドアを開けてあげたんだよ。
そしたら、どんな反応をされたと思う?
ーーこの流れでハッピーエンドはないだろ。
日本では、そういう気のつかい方をされると、嫌がる女性のほうが多いだろうな。
ホ:そうなんだよ。
「そういうのは“重い”から、やめてほしい」って言われて、驚いたし少し傷ついた。
文化の違いは残酷だ。
ーーそうか。
中南米式のエスコートをしたら、エスケープされてしまったと。
ホ:もし僕がコークスクリューパンチを使えるなら、ここで放っていたよ。
ーー前にSNSを見てたら、ロシア人男性もそんなことを言っていた。
日本人女性とデートしたとき、そうやってドアを開けてあげたり、花をプレゼントしたりしていた。彼としては常識的なことをしていたら、その女性に引かれてしまったんだって。
大切なことは「郷に入っては郷に従え」だね。
ホ:「言うは易く行うは難し」とも言う。
日本人もメキシコ人も、相手のことを思いやることを大切に考えている。
でも、待ち合わせ、店員への態度、女性への接し方とか、具体的な場面で配慮するポイントが違うからむずかしいんだよ。

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