アニメがきっかけで日本が好きなって、いまは日本語を学んでいるメキシコ人(20代の女性)と話をしたから、今回はメキシコの歴史や文化や社会とか、この国についてまるごと紹介しようと思う。
まずは基本情のチェックから。
人口:約1億2,601万人(2020年)
面積:196万平方キロメートル(日本の約5倍)
首都:メキシコシティ
言語:スペイン語
宗教:カトリック(国民の約8割)
ソース:外務省HP「メキシコ合衆国(United Mexican States)基礎データ」
ーーおはようございます。
今朝はどんなものを食べましたか?
おはようございます。
ウチの朝ご飯はパンと卵や豆の料理、それと飲み物にコーヒーがでます。
日本の朝ごはんは、白米と味噌汁と焼き魚ですよね?
ーーよく知ってますね。
メキシコでは日本のアニメが人気で、わたしも朝食のシーンを何度も見て食べたくなったから、日本食レストランへ行ったときに注文しました。
味はイマイチでしたけど。
ーーそんな完璧な日本の朝食が、メキシコでも食べられるというのはチョット驚きです。
ところで日本人はお茶をよく飲みますが、メキシコで国民的な飲み物はありますか?
メキシコ人がよく飲むのはコーヒーやコーラで、大人ならテキーラですね。
パンとコーヒーは本当に身近なもので、お葬式の参列者や地震の被災者に出します。
では次に進まえに、メキシコの歴史をザックリ確認しておこう。
・1492年にアメリカ大陸がコロンブスに見つかっちゃって、ヨーロッパ人がやってくるようになる。
・16世紀はじめにやってきたスペイン人によって、アステカ帝国やマヤ文明が滅ぼされた。
・メキシコはその後、300年ほどスペインの植民地として支配される。
・1810年に独立戦争が始まり、1821年にメキシコはスペインからの独立を達成して現在にいたる。
これを別の世界線にある日本でたとえるなら、きっとこんな感じになる。
・16世紀の戦国時代、海の向こうからやってきたヨーロッパ人との戦いに負けて、天皇も将軍もいなくなり日本国は滅亡する。
・その後、異民族による支配がつづいて、19世紀になると日本人が立ち上がり、独立戦争に勝利して300年ぶりに独立を果たす。
もしこんな歴史があったとしたら、日本を支配した異民族に対していまの日本人はどう思うのか?
期間でいえば日本による朝鮮統治の10倍近くだから、いまの韓国の人たちのように強い恨みを持っていてもおかしくない。
ということで、そのへんを聞いてみた。
ーーあなたはスペインにどう思っていますか?
いまのスペインは好き。
でも、昔のスペインは超嫌い。
だけど、植民地時代には良い面もあったから、苦しみと悲しみしかなったわけでもないです。
わたしはいまカトリックを信仰していて、それはわたしが生きる基盤になっています。
それ以外にも、現在のメキシコには建物や食べ物などにスペインの影響が強く残っていて、それらはもうメキシコ文化にとけ込んでいるから、切り離すことはできません。
スペイン時代に人々の生活や文化が豊かになった面はありますから、それは良いことです。
*日本が300年間スペインに支配されて、神道も仏教も日本語もほぼ社会から消え去ったとする。
国語はスペイン語になって、国民の8割がキリスト教徒だったとしたら、スペイン文化を否定することは自己否定になるかも。
その時代につくられた「プエブラ」という都市があって、歴史を感じさせるすごくステキなところだから、わたしも大好きです。
いまでは世界遺産になっていて、観光客がたくさんやってくるから地元の人はとっても助かっています。
わたしが生まれた「ベラクルス」という街は、スペイン人が初めてやってきた場所で、スペイン人による都市建設が始まったところでもあります。
ベラクルスは特別な都市でメキシコが独立した後も、19世紀にフランスやアメリカ占領されましたから、フランスにもアメリカにも恨みがあると言えばあります。
でも、すべてを憎んでいたらキリがありません。
どこかで過去に区切りをつけないと。
ーーメキシコの一部がフランスに支配された期間もあったんですね。
*詳しくは「フランス干渉戦争」で。
そのときにケーキ・ウォー(お菓子戦争)っていう戦いがありました。
変な名前でしょ。
*1838年にメキシコシティにいたフランスの菓子職人が、メキシコ軍によって店が破壊されたと仏国王ルイ・フィリップに訴えたことがきっかけで、フランスとメキシコの間で戦争になる。
結果はフランスの勝利。
やっぱりフランス人はお菓子作りと戦争が上手だったらしい。
ーースペイン時代の嫌なところは?
彼らはアステカ帝国を滅亡させたし、ヨーロッパから銃や伝染病をもってきてたくさんの人を殺したから、そのことについては最低最悪。
でもそれは歴史の話で、いまの社会についていうなら、肌の白い人がエラくて、黒い人が下に見られる差別意識があることですかね。
*いまのメキシコの人種構成を見ると、サイトによって微妙に違いがあるが、だいたいこんな状況だ。
ヨーロッパ人(スペイン人がメイン)と先住民との混血のメスティーソが60%。
先住民が30%。
ヨーロッパ系が9%。
スペイン人の男性とインディオの妻
だからその子供はメスティーソになる。(18世紀の絵)
肌の色でいうと「先住民 < メスティーソ < ヨーロッパ系」の順で白くなります。
わたしはメスティーソです。
世代によって意識の違いがあって、両親の世代には黒い色の肌が嫌いで白い肌を好きな人が多いし、わたしぐらいの世代だと、そういう差別的な発想を嫌って先住民に親しみをもつ人が多くなると思います。
わたしは先住民の歴史が好きですし、ヨーロッパ人と勇敢に戦ったことも素晴らしいです。
両親はたぶんそんなことを思いませんが。
先住民の人たちは主に田舎や山間部に住んでいて、都市部にいるわたしたちとはあまり交流はありません。
彼らの中にもいくつかグループがあって、それは衣装のデザインでわかります。
ただ同じ先住民どうしで、対立することもあるから悲しいですね。
トルティーヤ
ーーでは、先住民の文化や影響はいまでもメキシコ社会にありますか?
ありますよ。
たとえばトルティーヤはヨーロッパ人がくる前からあって、メキシコ人はいまでもよく食べます。
*トウモロコシの粉や小麦粉から作る薄いパンがトルティーヤ。
トルティーヤの上に野菜や肉などをのせた食べ物がタコス。
トルティーヤやタコスを食べて、ヨーロッパから伝わったコーヒーやアメリカのコーラを飲んでいるのは、メキシコの多様性や歴史を表しているようですね。
アメリカでは揚げたトルティーヤに具材を入れるタコスの一種、「ハードタコ」がよくある。
日本にもよくあるトルティーヤ・チップス
トルティーヤ・チップスに溶かしたチーズをかけた食べ物がナチョス
それと、「死者の日」って知ってますか?
死んだ人に花や食べ物を供える「死者の日」があって、これはヨーロッパとは関係ないメキシコの伝統文化です。
*死者がこの世界に帰ってくるという発想だから、日本でいえばお盆に近い。
それに花の名前には、アステカやマヤの時代の古い言葉がよくあります。
最後は、このメキシコ人がアメリカで受けた差別について。
2019年にカルフォルニア州にある大学へ留学していたとき、白人や黒人から何度か「メキシコへ帰れ!」と言われました。
ショックですか? それは大してないですね。
アメリカにそんな人種差別があることは前々から聞いていましたから、「これがそうか」って思っただけです。
言われただけですし。
ショックだったのは、同じヒスパニック系の人から差別的な態度をされたことです。
大学にいたヒスパニック系の人には、両親がメキシコからアメリカへ移住して、そこで生まれ育ったから、自分をアメリカ人と思っていてメキシコ人を嫌う人がいました。
それでわたしがあいさつをしても無視したり、「近くに来るな」というオーラを全身から出します。
仲良くなったヒスパニック系のアメリカ人からはこう言われました。
「スペイン語を話せるのに話そうとしないし、メキシコ人を“ワンランク下”と見て距離を置く。たまにそういうヤツがいるけど、まあ気にするな。」
そんな話を聞いたのは初めてだったから、これはショックでしたね。
アメリカの映画やドラマで描かれるメキシコ人は、アメリカ人の偏見によってゆがめられていたり、一部が誇張されていますから、メキシコ人の印象はあまりよくないと思います。
ただそのときは、差別主義者のトランプ大統領の時代だったら、運が悪かったとは思いますけど。
ーーそうですか。
きょうはいろいろ話をありがとうございました。
いえいえ、こちらこそ。
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