ハロウィンよりはお盆に近い、メキシコの「死者の日」って?

 

きのう10月31日は日本では衆議院選挙の日、そして海外ではハロウィンの日だった。
ちょうどその日、以前日本に住んでいたアメリカ人と話をしていて、死者がこの世にやってくるハロウィンを日本で例えるなら、お盆のようなものかと聞いてみた。
すると彼女はこんなことを言う。

「確かにそれに近い部分はあるけど、お盆は亡くなった先祖が帰ってくる日でしょ?でもハロウィンは死者のほかに、悪魔や魔女がやってくるからお盆とはチョット違う。ハロウィンの日に化物の仮装をするのは、そうした”魔物”から襲われないようにするためだしネ。日本のお盆はハロウィンよりも、メキシコの「死者の日」に似ている。」

*これはこのアメリカ人の考え方で、ハロウィンの見方については諸説あり。

 

以前、日本に興味のある外国人が集まるネットグループでお盆の説明をすると、どこぞの外国人がこのアメリカ人と同じように、お盆とハロウィンの違いとして「先祖供養」を挙げた。

「I would compare Obon to something like the Day of the Dead, rather than commercial Halloween that has nothing to do with remember ancestors.」
お盆はむしろ、「死者の日」に例えられると思います。
ハロウィンは先祖とは関係なくて、商業的なイベントですから。

これはまた別の外国人の意見。

「Very similar in spirit to Dia de los Muertos. I think it’s in human nature to want to feel the love of those who’ve passed, and it’s so lovely to see different cultures express the same bittersweet desire.」
(お盆は)死者の日(Dia de los Muertos)の考え方にとても似ています。
亡くなった人の愛を感じたいと願うのは人間の本質だと思うし、異なる文化でうれしくも切ない思いを表現しているのを知るのはとても素敵なことです。

 

死者の日(スペイン語: Día de Muertos、英語: Day of the Dead)は毎年11月1日と2日、亡くなった人に思いを寄せたり感謝して、生きる喜びを分かち合うメキシコ人の行事だ。
日本のお盆では、先祖の霊は精霊馬(キュウリの馬やナスの牛)に乗ってこの世界へやってきて、またあの世に戻るといわれている。

外国人の好きな日本文化:縁起物や精霊馬としての「ナス」

 

精霊馬

 

そんなお盆の風習を知ったメキシコ人から、「死者の日」のマリーゴールドは精霊馬と同じ役割をするというメッセージをもらった。

 

マリーゴールドを売る人たち

 

「for the ancient mexican (Mexicas) this flower represented the Sun, therefore, the flowers were used to create a path to guide the spirits through the altars/offerings, it is also believed that the strong fragrance of the flower is the one the guides the dead to the banquet that awaits them.」

古代メキシコ人にとって、この花は太陽の象徴でした。
だからこの花は祭壇や供物を介して、霊を導く道を作るために使われていました。
またこの花の強い香りは死者(先祖の霊)を、家族や子孫が開く宴会へ導くと信じられています。

メキシコ人は「死者の日」に、このマリーゴールドをオフレンダ(Ofrenda)と呼ばれる祭壇に備える。
それに加えて花やロウソクなどが飾られて、食べ物や飲み物のお供え物もあるから、オフレンダはかなりハデハデになる。
これを家の中だけでなくて街の中心部や公園などにも置かれるから、「死者の日」の雰囲気が盛り上がるという。

 

頭蓋骨を模した砂糖菓子もオフレンダに供えられる。

 

 

お墓を掃除するまでは日本のお盆と同じでも、墓にこんなカラフルな飾り付けをところが違う。
「死者の日」を象徴するのが骸骨の貴婦人「カトリーナ」で、こんな仮装をした人が街へくり出す。
このへんの感覚はハロウィンに近い。

 

画像:Jaredzimmerman (WMF)

 

先祖に思いを寄せて、その霊をこの世に招く日という点では同じでも、静かでしめやかに行われる日本のお盆と違って、メキシコの「死者の日」は明るく派手でとてもにぎやかだ。
亡くなった人の愛を感じたいという「human nature (人間の本質)」は人類共通でも、その表現の仕方はそれぞれの文化によって違う。
それを知ることは確かにとても素敵なことだ。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

【認知バイアス】メキシコ人が日本を「危険な国」と思うワケ

日本への世界の評価や印象・中南米編「科学と伝統と平和の国」

在日アメリカ人の話②日本人で不快なこと・治安・恋しいモノ

外国人から見た日本と日本人 15の言葉 「目次」

世界の中の日本 目次

 

2 件のコメント

  • 30年くらい前に米国南部に滞在してた時、これと全く同じ話をメキシコ人たちとしたことがあります。彼らの話では、この記事で紹介されている写真なんかよりもずっと厳粛で、先祖に想いを馳せるための行事であると言ってました。スペインでもそうだと移民のスペイン人から聞きました。
    それに比べれば、メキシコでも現在はかなり「お祭り色」が強くなったようですね。米国風の「ハロウィン祭り」が周辺国や世界に広がっていった結果じゃないですか?
    日本も同じです。昔は「ハロウィン」なんて、セサミ・ストリートやチャーリー・ブラウンの世界にしか存在してませんでした。まあ、これはこれで、お盆と別々の祭事として定着したのはよかった。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。