在日メキシコ人から見た、日本人の「靴脱ぎすぎ」問題

 

野球のWBCでみごと世界一になった日本。
この大会で最大のピンチはきっと、9回の裏に6-5で逆転サヨナラ勝ちした準決勝のメキシコ戦だ。
試合後、メキシコのヒル監督は

「日本チームに帽子を脱ぐしかない。両方が素晴らしい仕事をしたが、日本は誰もあきらめなかった」

と日本を称賛すると、 日本人もネットでメキシコに敬意を示す。

「メキシコが強かったから良いゲームになった」
「こんなに胃が痛くなるほどの試合展開は初めてでした。敵ながらあっばれです」

ということで今回はこのウェーブに乗っかって、日本に住んでいる20代のメキシコ人男性から聞いた話を紹介しよう。
サッカーなら負けるだろうけど、野球ならギリ勝てそうなメキシコってこんな国だ。

人口:約1億2,601万人(2020年)
面積:196万平方キロメートル(日本の約5倍)
首都:メキシコシティ
言語:スペイン語
宗教:カトリック(国民の約8割)(2020年)

外務省HP「メキシコ合衆国(United Mexican States)基礎データ

知人のメキシコ人は南部のオアハカに住んでいて、そこでは1年の気温がだいたい 10°C~30°Cの間で変化するから基本的に暖かい。
そんなところからやってきたメキシカンは日本人についてこう思った。

「靴、脱ぎすぎじゃね?」

 

 

メキシコでは靴を脱がないで、そのまま家に入るのが常識的。
ただ知人の場合は、床のタイルの少しヒンヤリした感じが好きだから、靴を脱いで、家の中では裸足でいることが多かった。
これはメキシコでは少数派で、家の中ではいつも靴を履いていたおばあちゃんがそれを見ると、「素足でいると病気になるから、せめてサンダルぐらい履きなさい!」とよく注意したという。
日本では靴を脱いで家に入る習慣があって、他人の家でそれをしないことは重大なマナー違反になる。
それを知った彼は、自分の価値観に合っていたからむしろウェルカム。
でも、そうよろこぶのは例外的で、ネットを見ると日本の「靴脱ぎ習慣」にストレスを感じるメキシコ人はけっこう多い。
むしろ靴は脱いでしまいたい彼は、「彼らとは違う」とタカをくくっていたのだけど、来日したら、日本人のソレは想像以上だった。

靴を脱ぐのは家に入る時だけだと思っていたから、外出してお寺やいろんな建物で靴を脱ぐ機会があったり、そうしないといけないレストランもあったから彼は驚いた。日本人の靴を履くスピードにも。
忘年会で利用した居酒屋では靴のまま店に入って、部屋に上がる時に靴を脱がないといけなかった。
それで宴の途中にトイレへ行きたくなって、靴を履かないでコンクリート(土間)を歩いていたら、それを見た店員から「そこでは靴を履いてください」と注意される。
ちょっと冷たい感覚が好きだったのに残念。
それにしてもトイレへ行くたびに、靴を履かないといけないのはメキシコ人にとっては面倒くさい。

 

そんな話をする彼の強烈な第一印象も、日本人のこの習慣だった。
メキシコから成田空港へ着いて日本に入国した後、電車で東京駅まで行って、新幹線に乗って浜松市へやってきた。
その間、ウワサに聞いたとおりどこもキレイだったし、電車の運行に1分も遅れなかった。
車内で乗客の日本人は大声で会話をしないし、携帯電話で話すこともなく、周囲の人に配慮して静かに過ごしている。
こういうマナーの良さにも感動した。
でもひとつだけ、驚いたし不快に思ったのは、新幹線でスーツを着てしっかりした身なりのサラリーマンが靴を脱いで、靴下の足をさらしていたこと。
彼の感覚からするとこういう姿はとてもだらしないし、まわりの人にも失礼。
日本人はとても礼儀正しいと聞いていて、実際にそうだったから、この落差は強く印象に残った。

靴を脱いで家に入る習慣はいいし、畳の上を歩く感覚も気に入っている。
でも日本では、靴を脱ぐ機会が思っていた以上にあって時々メンドクサイし、電車のような公共の空間でそれをするのはマナー違反で不快に感じる。
メキシコ人の彼から見ると、全体的に日本人は靴を脱ぎすぎ。

 

こんなにカワイイ新幹線に乗っても、隣のおっさんが靴を脱ぎ出したら外国人はドン引きかも。

 

実はこの感覚は、世界のなかでも日本人が飛び抜けている。
アメリカ、メキシコ、ブラジル、フランス、オーストラリア、マレーシア、インド、韓国、日本など23カ国を対象に、エクスペディアが2018年にそんな調査を行った。

飛行機の中で靴を脱ぐことについて、世界の大部分の意見は「必ず履いていなければならない」(63%)で、メキシコ人(85%)がいちばんその意識が強かった。
でも日本人は違う。
機内での過ごし方は「靴下は履いたまま」(44%)が最多で、「靴も靴下も履いたまま」(40%)を上回った。
さらに「機内では裸足になる」と回答した人の割合は16%で、これは世界のなかでも突出している。

1位:日本(16%)
2・3位:ブラジル、スペイン(11%)
4位:シンガポール(10%)
5位:フランス(9%)

日本人として解放感を得たい気持ちは分かる。が、世界的には「必ず履いていなければならない」と思う人が多いから、素足になるのはどちらかというとマナー違反で、それが視界に入ると、知人のように不快に感じる外国人もいるはず。
脱いでいいのは、美脚に自信のある人だけだ。

上の調査によると飛行機の座席を選ぶ際、外国人は「窓側」が多かったのに、日本人だけは「通路側」が半数以上の53%を占めた。
そして機内で自分がトイレへ行きたい時などに、寝ている人がいたら「起こして動いてもらう」と回答した日本人の割合は世界で最下位だ。
つまり、自分のために他人を動かすことは申し訳ないから、あえて通路側を選ぶ日本人が多いと考えられる。

日本人は他人の迷惑になったり、邪魔をしたくないという意識が強く、これはきっと世界でもトップクラスだ。
でも、靴を脱ぐことについては別枠で、あまり周囲の視線を気にしない人が多い。
でなければ、「機内では裸足になる」という人が世界最多になるワケない。
国内の飛行機・バス・電車ならそれでいいとしても、国外に出たら、あの解放感は誰かの不快感を犠牲にしていないか確認したほうがいい。
日本人の「靴脱ぎすぎ」問題は、日本人だと気づきにくい。

 

参考:エクスペディアの調査

日本人は世界一「通路側」の席が好き!理由は「寝ている人を起こす」ことが世界一苦手だから!?

中央日報の記事(2018年05月11日)

旅行中は意外に礼儀正しい韓国人…「機内泥酔」は1位の不名誉

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

メキシコ人からみた日本人:文化・国民性・オタクの違い

【認知バイアス】メキシコ人が日本を「危険な国」と思うワケ

ハロウィンよりはお盆に近い、メキシコの「死者の日」って?

日本への世界の評価や印象・中南米編「科学と伝統と平和の国」

在日アメリカ人の話②日本人で不快なこと・治安・恋しいモノ

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。