前回に引き続き、今回も静岡の大学で学ぶ20代のパキスタン人のカップル、アリ(夫)とファティマ(妻)に登場してもらう。

首都イスラマバード出身で、日本に3年間ほど住んでいる彼らに、文化や価値観の違いについて話を聞いた。
パキスタンを恋しく思う瞬間はパーティー
ーーまずは、前回の話を簡単にまとめよう。
2人にとって日本の生活で一番いいところは安全で、とくに女性にとっては本当に助かる。
それと、日本では自然を身近に感じられ、清潔な環境も気に入っている。
そして日本人は英語が苦手だけど、親切で協力的だから困ることがない。
ファティマ:そのとおりだ!
夜9時に女性が一人で出歩けるなんて、パキスタンでは考えられない自由だ。
ーーでも、日本は完璧な国ではない。
不満なところもあるだろ?
アリ:もちろん。
まず、パキスタンでは人と人との距離がとても近いんだ。
ーーボクもパキスタンを旅行して、それを実感した。
一人でレストランでご飯を食べていると、店員やお客さんに話しかけられて、「パキスタンはどうだ?」と何度も質問された。
ファ:パキスタン人は好奇心が旺盛で、見知らぬ人に声をかけるハードルが低いからな!
日本は正反対だな。
わたしはこの3年間で、街中で日本人に話しかけられたことは一度もない!
アリ:そして、パキスタンには大人数で集まる文化がある。
たとえば結婚式やイスラム教の「イード(祭り)」では、何十人もの人が集まってパーティーをするんだ。
ーーパーティーといっても、もちろんアルコールは出ない。
ファ:当然だな!
アリ:みんなで美味しいものを食べながらおしゃべりをしたり、歌ったり踊ったりして全身で楽しむんだ。
日本で生活をしていると、たまにあの社交的でエネルギッシュな雰囲気が恋しくなるんだよねぇ。
ファ:日本人の価値観では、「静けさ」が重視されている。
あの熱気を感じる瞬間がないのは残念だけど、それは仕方ない。
わたしが快適に生活できているのは、そんな日本の文化のおかげでもあるからな!
ーー前回、日本のトイレが快適すぎて、帰国するモチベーションが下がるって言っていたよな。
パーティーのことを考えると、それが上がるんじゃないか?
ファ:そうだな!
日本のトイレとパキスタンのパーティー文化があれば、わたしの生活はパーフェクトになる。
日本の集団主義と個人主義
ーー最後に、「人の違い」について聞きたい。
日本人とパキスタン人の考え方や行動でどんな違いを感じた?
アリ:いい質問だね。
個人的に、日本の集団主義と個人主義に興味を持っているんだ。
日本の社会では「空気を読むこと」が大事で、周囲の状況に合わせて自分の本当の気持ちや意見を変えることがあるだろ。
ファ:日本で生きるには漢字よりも、空気を読む能力のほうが大切だと聞いたぞ。
そして、わたしはそれが苦手だ!
ーーそんな気がする。
個人的な経験から言うと、アメリカやインドの文化では、ハッキリ言うことが重要とされているから、彼らも「空気を読む」のが苦手。
タイ人はわりと自分の気持ちをおさえて、周囲の人に合わせる。
アリ:日本人は「和」を大切にするから、他人が不快な思いをしないように行動している。
それは集団的だけど、支払いになると、急に個人主義的になるのが面白いと思うんだ。
ーーつまり、日本では割り勘が一般的で、パキスタンの文化では誰かがまとめて払うことが多いと。
アリ:そう。
仲間とご飯を食べに行くと、最後に「今日は俺のおごりだ」と言って食事代を払おうとする。すると、ほかの人が「いいや、俺が払う!」、「俺にまかせておけ!」と言い出して、“争い”がはじまる。
ーーそして、遅れて手をあげた人に「どうぞどうぞ!」と押し付ける。
ファ:それはないな!
アリ:パキスタンでは、そのときおごってもらった人が次の食事で払う、という暗黙のルールがある。
でも、日本では自分の分だけきっちり払うだろ?
パキスタンの文化からすると、それだと壁ができて、集団の結びつきが弱まると思う。
ーー日本では反対に、集団の「調和」を保つにはそのやり方のほうがいい。
日本人を「ケチ」と感じる外国人が多いけど、日本の文化には割り勘が合っている。

アリ:だから、そんな違いが興味深いんだ。
ファ:だから、もしあなたがこの場でパキスタン式を採用して、「ここは俺にまかせろ!」と言うのなら、わたしはその男気に敬意を表して、問答無用ですべてをゆだねるつもりだ!
ーーそんなつもりは1ミリもない。
日本流のやり方で絆を大切にしたいから、1円単位で貸し借りなしだ。

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