ゴールデンウイークに突入して、「屋根より高いこいのぼり」をあちこちで見るようになった。
でも世界には屋根や富士山どころか、ヒマラヤ山脈よりも高く、インド洋よりも深くて鋼よりも硬く、そして蜜(みつ)よりも甘い関係があるらしい。
中国とパキスタンの固い友情をそんなふうに表すことがある。
パキスタンは1950年に、共産主義圏ではない国としては初めて中国を国家として承認した国だ。
そして翌51年に、イスラム圏の国で初めて中国と外交関係を樹立する。
でも、中国&パキスタンが山より高く、海よりも深い関係になったきっかけはインドとの戦争にある。
1962年に国境をめぐって、中国とインドの武力衝突がぼっ発し(中印国境紛争)、両国の関係はかなり険悪となる。
そして1965と71年にパキスタンとインドの戦争(印パ戦争)がおこると、中国はパキスタンに武器を渡すなどの支援をした。
「敵の敵はわがフレンド」の理論から、両国にはいまのような鉄の関係が築かれた。
(中国とパキスタンの関係)
でもそれは経済や安全保障の面での結びつきで、中国人とパキスタン人の価値観にはエベレストなみに高いハードルがある。
AFP通信の記事(2023年4月18日)
中国人技術者がイスラム教冒涜、警察が保護 パキスタン
イスラム教が国教になっていて、熱心なイスラム教徒の多いパキスタンで絶対にしてはいけないことは、イスラムを侮辱するような言動。
過去には、預言者ムハンマドの悪口を言った女性が裁判にかけられて、絞首刑を言い渡された例もある。
そんな国で、ダム建設のプロジェクトで監督をしていた中国人技術者が、イスラム教を冒涜(ぼうとく)するようなコトを言って、パキスタン人の作業員を激怒させた。
イスラム教徒は神聖なラマダン月の期間中は、断食をすることが義務になっている。
この中国人の男性はそのせいで「仕事の進行が遅い!」と不満を言う。
イスラム教徒にとってこの言葉は、ラマダン月(イスラム教)への侮辱になりかねない。
そして口論のなかで、中国人男性がアッラー(神)や預言者ムハンマドを侮辱するようなことを言ったらしい。
それを口したら作業員ではなく、パキスタン国民を敵に回してしまう。
激怒した地元住民ら数百人が集まって暴動に発展する気配を見せたから、地元当局が急いでその中国人を遠くの場所へ移動させた。
でないと、この男性の命はなかったかも。
ヒマラヤ山脈よりも高いはずの関係が、このところ少しずつ低くなっている。
経済協力やインフラ建設などで進出してきた中国に対して、最近では「パキスタンの資源を奪っている!」と反感する人たちが増えてきて、武装集団による攻撃も発生した。
2022年には中国語を伝える「孔子学院」の車が爆弾テロにあって、中国人教師3人と運転手の計4人が死亡。
「パキスタンでは近年、中国権益への反発が強まっており、住民感情の刺激が両国の不協和音に発展しかねない状況」と上の記事にある。
豚肉の料理と酒が大好き中国人と、それが厳禁されているイスラム教徒では食文化がまったく違う。
アッラーへの絶対服従する意味するムスリム(イスラム教徒)にとっては、神や宗教を否定する共産主義は絶対に受け入れられない考え方だ。
経済や安全保障面では相思相愛でも、中国人とパキスタン人では基本的な価値観が違う。
習近平主席がパキスタンとの関係を「鉄の友情」と表現したが、一般人同士の付き合いが増えると、きっとこういうした摩擦も増えてくる。
蜜(みつ)より甘い関係も、だんだんと苦いものになる予感。
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