歓迎しない声もあるが、日本人に中国人が“ラク”な理由

 

国と国は「鉄の友情」で結ばれていても、無神論の共産主義とイスラム教徒では水と油、天と地ほどに違う。
パキスタンにいた中国人がラマダンやアッラー(神)、預言者ムハンマドを侮辱するようなことを言って、現地のイスラム教徒を激怒させた一件にもそんな価値観や考え方の違いがあったはず。

【価値観の違い】中国人がパキスタン人を激怒させたワケ

中国人かイスラム教徒かのどちらかというと、価値観からいえば日本人は中国人に近い。

 

イスラム教徒の女性
日本人や中国人なら国内でこんな格好はしない。

 

いまの日本人の中国人を見る目は、大きく2つに分かれていて複雑らしい。

Record Chinaの記事(2023年1月27日)

日本のネット上では中国人客を歓迎しない声も、観光地からは正直な声―中国人コラムニスト

中国のニュースサイト『観察者網』が日本では中国人観光客に対して、観光地からは訪問を期待されているけれど、関係ない一般人の間には、一部で来てほしくないという声が上がっていると報じた。
このメディアが指摘するように、ほかの外国人観光客に比べて、中国人に対する日本人の見方はたしかに「二極化している」と思う。

日本政府がきょねん10月に水際対策を緩和すると、外国人観光客は激増し、コロナ禍が始まる前の7割ほどにまで回復した。
これで中国政府のコロナ規制が無くなって中国人が来るようになれば、訪日外国人の数は以前と同じかそれを上回ると予想されている。
つまりインバウンド業界にとって、中国人観光客は欠けていた最後のピース。
日本でたくさんお金を使って、しっかりマナーを守って行動してくれたら、中国人観光客はきっと全日本人から愛される。

日本人が中国人にネガティブな印象を持つのは、公共の場で大声を出して話すといったマナー面がおもに理由なのに、中国メディアは「中国に関係する物事は何でも反対というメディアによって教育された」と日本のせいにする。
見方が根本的にズレている。

 

こんな感じに日本人の見方は両極端に分かれていても、いろんな外国人の中でも、日本人にとって中国人はわりと付き合いやすい。
というのは、共産主義国の中国には宗教を信じない人が多いから、無宗教の日本人とは考え方や感覚が近いのだ。
だから、イスラム教への理解があまり進んでいない面があって、冒頭の中国人と同じように、イスラム教を冒とくする行為をしてパキスタン人を怒らせた日本人もいる。
2001年に富山県でパキスタン人が経営する中古車販売店の前で、聖書のクルアーン(コーラン)が破り捨ててあるのが見つかった。
これに怒った数百人のイスラム教徒が富山に集まって抗議集会をおこない、パキスタン大使館は犯人の逮捕を主張して全国的なニュースになる。
犯人は近くに住む日本人女性で、ここまでの騒ぎは予想していなかったというから、絶望的な無知。

【隣のムスリム】日本人が忘れちゃいけない、富山コーラン事件

 

イスラム教徒には豚とアルコールがNGという食事制限があって、酢にはアルコール成分が含まれているから、お寿司も食べられないというイスラム教徒もいた。
酢もダメとなると、食事の選択がむずかしい。
ほかにも、インドネシア人のイスラム教徒と商店街を歩いていると、

「そろそろお祈りの時間なんですが、近くに礼拝できるスペースはありますか?」

と言われてあせった。
イスラム教徒は1日に5回の礼拝をしなければならないが、一般の日本人にそんな義務はないから、そのための場所と言われても困る。

ヴェジタリアンやヴィーガンのインド人ヒンドゥー教徒の場合だと、

「もちろん肉はダメですが、卵もチーズも動物性油も無理です」

と言われて、ウドンならいいかと思ったら、「かつおだし」は魚だから食べられないとダメ出しをくらった。
ヴィーガンのイギリス人もこんな感じだった。
相手に宗教のタブーを破らせてしまったというミスは、「うっかり」ではすまない場合がある。

その点、ボクが出会った中国人には宗教的なタブーが一切なかった。
だから食べ物や飲み物は「エブリシングOK!」だったし、礼拝の時間なんてあるわけない。宗教については批判でも何でも自由に話すことができたから、日本人と同じような感覚で付き合うことができた。
言葉の壁があっても中学生レベルの英語力と、漢字という共有ツールを使えばけっこう会話は成立する。
自己主張が強いとか素直に謝らないとか、中国人とは価値観や文化の壁を感じる場面は多々あるけれど、宗教への配慮がまったくイラナイという点は、無宗教の日本人にはすごくラク。
だからあとはマナーだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。