日本と韓国、韓国と中国、中国とベトナムのように、隣国同士で仲が悪いのは「世界あるある」の一つ。
これが日本とシェラレオネみたいに、歴史的に接点がない間柄なら悪感情もないけど、お隣さんだとそうもいかない。
なかでもインドとパキスタンの対立は深刻だ。
2008年には約240人が犠牲となったムンバイ同時多発テロが起きたし、いまでもカシミールの領有権をめぐる争いがあってよく死者が出している。
いま日韓関係が戦後最悪といわれるほど悪化していても、さすがにテロや流血はない。
印パ対立の始まりは1947年8月に、ヒンドゥー教徒の多いインドからパキスタンが分離独立してイスラム教の国を建国したことにある。
以来、インドとパキスタンはカシミールをめぐって1947年と1965年、そしてバングラデシュの独立をめぐって1971年に計3回の戦争(印パ戦争)を経験している。
それから戦争をしなくなったのはお互いに核兵器を持って、手出しができなくなったからというのはよく聞く話だ。でもテロは起きる。
印パほど仲の悪いお隣さんというのは世界でもなかなかない。
そんな不幸な歴史と負の実績から、海外メディアに「世界で最も危険な国境」でスーダン=南スーダンなどとともに、インド=パキスタンの国境が選ばれたことがある。
その理由をみると、1947年の分離独立の際、数百万人のヒンドゥー教徒とイスラム教徒が両国を移動して最大100万人が殺害されたこと、そしてそれ以来、両国の国境付近は暴力によって特徴づけられてきたからとある。
PHILIP WALKER (2011年6月24日)
Ever since its bloody creation in 1947, which saw the displacement of millions and the killing of up to a million people, the border area between India and Pakistan has been marked by violence.
The World’s Most Dangerous Borders
このほか3度の戦争で約12万人の死者が出たことや、両国には多くの核兵器が存在することも「世界最恐の国境」に選ばれた理由になっている。
さて、きのう1月21日は「ライバルが手を結ぶ日」だった。
幕末の慶応2年1月21日(いまの暦なら1866年3月7日)、坂本龍馬が調整役となって、敵同士だった長州と薩摩が手を結び薩長同盟が成立した。
インドとパキスタンも互いを「敵」と認識してはいるけれど、同時に平和と安全を望んでいるから、友好関係を構築・維持しようと努力もしている。
その象徴がインド・パキスタンの国境の一つ、ワーガ・ボーダーだ。
ここでは毎日、インド軍とパキスタン軍が日が沈む直前に、緊張感はあるけどわりとフレンドリーな儀式を行う。
両軍の兵士が大声で叫ぶと「戦闘の開始」の合図となり、国旗を持った市民が走ってきたり(たまに転ぶ)、ダンス・パフォーマンスなんかが行われる。
観客はノリノリで楽しそう。
そして最後は国旗を降ろして、両軍兵士が握手をして終わり。
イスラム教の祝日(イード)とヒンズー教の祝日(ディーワーリー)の日には、お菓子を贈り合うという友好っぷり。
実際に見てもらったほうが早いですね。
これだけだと「世界で最も危険な国境」が地元民のエンターテインメントに見えてしまうけど、2014年には60人が死亡する自爆テロが起きた。
でも、だからこそ友好関係を大事にしていかないといけない。
インド・パキスタンの間で「ライバルが手を結ぶ日」はまだ来そうにない。
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