少し前、日本に2年間住んでいたインド人がインドへ帰国した。
不法滞在がバレて強制送還になったというわけではなく、出張の期間が終わって、みんなに惜しまれつつインドへと帰って行った。
お別れの前にそのインド人とご飯を食べに行っていろいろな話を聞いたから、これから何回かに分けて「日本とインドはココが違った」ということを書いていこうと思う。
インドはデカい。
面積は日本の約9倍、人口は約10倍もある。
インドの大きさは東西ヨーロッパとほぼ同じ。
・レストランが違う。
「どっか行きたいところはある?」
あと5日でインドに帰るという彼に聞いたら、まさかのココ壱番屋だった。
日本での「最後の晩餐(ばんさん)」のようなものなのに、ファストフードのココイチでいいのだろうか?
「本当にココイチでいいの?」と確認したら、彼は間違いなくそこだと言う。
彼がココイチのカレーを食べたい理由を話す。
「会社や友人がお別れパーティーをしてくれて、おいしい和食や洋食はもうたくさん食べました。だから、日本のカレーが食べたかったんです。インドに戻ったら、日本のカレーは食べられませんから」
たしかに。
「インドに行ったら、カレーが食べれなくなる」というのも変な話だけど、ココイチのような日本カレーはインドにはないかもしれない。
で、彼とココイチに到着。
「日本のカレーとインドのカレーの違いってなに?」と彼にたずねると、「日本のカレーは辛さを選ぶことができることです」と言う。
ココイチだけじゃなくて、日本のカレー屋では自分の好みの辛さもオーダーできる。
これは日本とインドのカレーの違いというより、カレー屋の違いだ。
インドのカレー屋では、こんなシステムはないらしい。
「客の好みを優先して、店がそれに合わせる。日本人らしい気配りです」と彼は感心していた。
そういえば、インドの店で「カスタマーファースト(顧客第一主義)」というものを感じた記憶がない。
彼はヒンドゥー教を信仰している。
ヒンドゥー教
バラモン教に、先住民の土着信仰が吸収・融合されて成立した宗教。特定の開祖や経典を持たない。多神教であるが、三大神のうちのシヴァ神とヴィシュヌ神が中心になっている。冠婚葬祭など日常生活に関わっている。
「世界史用語集 (山川出版)」
「特定の開祖や経典を持たない」や「多神教である」というところは、日本の神道と同じ。
ヒンドゥー教と神道は似ている点が多い。
ヒンドゥー教で、牛は神様とされている。
だからヒンドゥー教徒の彼は、牛肉を食べることができない。
これが上の説明の「日常生活に関わっている」という部分になる。
でも、彼が信仰するヒンドゥー教では、豚肉を食べることも禁止されている。
ということで、彼には野菜カレーをすすめた。
「お待たせしました」と店員が持って来たカレーを見て驚いた。
思いっきり肉が入っている!
「野菜カレー」と書いてあったのに、豚肉らしき肉が入っていやがる。
「それはやめて、別のにする?」
野菜カレーをすすめた後ろめたさを感じながら聞いてみたけど、彼は「いえ、これでいいです」と言う。
続けてこんな話をした。
「日本のレストランで困るのはこれですよ。「野菜」と書いてあっても、肉が入っていることがあるのです。前に野菜サンドウィッチを頼んだら、ベーコンが入っていました。インドでは絶対にないですね。「野菜」と書いてある食べ物に、肉は一切入っていません」
インドじゃそうだろうね。
べジタリアンの食べ物に肉が入っていたら、レストランのオーナーは殴られるかもしれない。
ヒンドゥー教の象の神、ガネーシャ
彼は、日本のレストランのサービスは「とても素晴らしいです」と話していた。
店員の態度や言葉には好感を持てるし、おしぼりも出してくれる。
ボったくられたことは一度もない。
でも、「野菜」と書いておきながら肉を入れることには、不満を持っていた。
店としてはサービスのつもりかもしれないけど、べジタリアンにしてみたら、だまされた気分だろう。
彼は豚と牛が食べられないだけだから、まだいい。
「鳥や魚などすべての肉と卵もダメ」というべジタリアンのインド人だと、日本で苦労する。
そんな完全べジタリアンのインド人と、「丸亀製麺」に行ったことがある。
彼に「いなり寿司」をすすめたら、「あれは中に何が入っているんだ?包んでいるものは、何でできているんだ?使っている油は植物性か?」といろいろ質問されて、こっちが困った。
彼のようなべジタリアンには、いなり寿司のように、中に何が入っているのか分からないものはかなりコワいらしい。
まさかインド人がいなり寿司に恐怖を感じるとは思わなかった。
インド人の彼が日本のレストランで驚いたことに、「べジタリアン用の食べ物が本当に少ない」ということがあった。
インドのレストランでは、肉が一切入っていない食べ物が用意されているから、べジタリアンでも安心して食事ができる。
彼が感じた日本とインドの違いがこれで、日本ではべジタリアンが生活しにくい。
彼は「日本のような先進国だったら、べジタリアンがもっと多いと思っていた」という先入観を持っていた。
その点、イギリスはインドに近くて、べジタリアンが生活しやすい。
「イギリスのレストランでは、必ずべジタリアン用の食べ物が3つ用意されている」という話をイギリス人から聞いたことがある。
イギリス全土のレストランがそうなっているのかは知らないけど、イギリスのレストランでべジタリアンが食事に困ることはないという。
「frembassy」というサイトの記事によると、インドのべジタリアン率は40%で世界1位、イギリスは12%で4位になっている。
そんなべジタリアン大国から日本に来たら、日本人の肉好きに驚いてもムリはないと思う。
おまけ
インドの列車の様子。
よかったら、こちらもどうぞ。
コメントを残す