いま世界中の注目を集めているのがアフガニスタン。
首都カブールを制圧し、新しい支配者となったタリバンに対して、アフガン政府の兵士らによる抵抗勢力はパンジシール州に終結して軍事作戦を始めた。
この抵抗勢力の中心であるアフマド・マスード氏は「引き続きタリバンと戦う」と宣言、妥協の余地はなさそう。
反タリバン勢力がパンジシール州を拠点に選んだことには、こんな理由があった。
中央日報日本語版の記事(2021.09.03)
アフガン北部のパンジシール州はヒンズークシ山脈を中心に両側に横長の都市で、昔から「天恵の要塞」と呼ばれた。パンジシールはペルシャ語で「5頭の獅子」という意味だ。
パンジシール攻勢に出たタリバン…「抵抗軍34人射殺」
険しい山々が連なるこの天然の城塞は、20年前のタリバン政権も落とせなかったし、過去にはソ連軍を追い返した実績もある。
ここの山陰などに反タリバンの兵士ら約1万人がいて、約8500人のタリバン戦闘員と戦闘を行っている。
タリバン戦闘員が侵入してきたら土砂でその背後を絶ち、補給ができない状態にしてから一斉攻撃を仕掛ける。
読売新聞の報道ではこうしたゲリラ戦で、現地報道官は3日間で600人超のタリバン戦闘員を殺害したと言う。
ヒンドゥークシュ山脈
画像:koldo hormaza
さてここで注目する単語はヒンズークシ(ヒンドゥークシュ)山脈だ。
アフガニスタンにあって富士山の約2倍の高さ、標高7000メートルを越える山々からなるこの山脈の文字を見たら、「これって、ヒンドゥー教やインドに関係あるのでは?」と思った人は大正解。
この地名はインド人にとって、地球上でこれ以上なく不吉なものだった。
平山郁夫シルクロード美術館学芸員・前田 たつひこ氏の説明を読めば、その理由がみえてくるはず。
ペルシャ語で「インド人殺し」を意味する「ヒンドゥクシュ」山脈は、古来、東西南北の交通の障害となってきました。
なんでヒンドゥークシュがペルシャ語で、「インド人殺し」を意味するようになったのか?
その理由について日本語版ウィキペディアには、
「これはインドからペルシャ方面に抜ける際に通るこの山脈の厳しい気候と地形から、多くの人間が遭難死してきたためである。」
とある。
また、「Killer of the Hindus, or Hindu-Killer」と表現する英語版ウィキペディアにはこんな説明がある。
Following the earliest usage of the term by Ibn Battuta, Hindu Kush is often translated as “Killer of Hindu” or “Hindu Killer” — alluding to the days when slaves from the Indian subcontinent died in the harsh climatic conditions of the Afghan mountains while being taken from India to Turkestan.
イブン・バトゥータ(アラブ人の旅行家)がこの言葉を使ってから、ヒンドゥークシュはよく「インド人の殺害者」と訳される。
インドの奴隷がトルキスタンへ連れて行かれる最中、このアフガニスタンの山々の過酷な気候条件で死んだ時代を示唆している。
たしかにインド人が好き好んでこの山脈に来たとは思えない。
ろくな食事も与えられず、奴隷商人によってトルキスタンへ連行されていたとき、ここで多くのインド人が寒さや飢え、滑落などで死んだのだろう。
こんなヒンドゥークシュについて知り合いのインド人に聞いてみると、こんな返事がきた。
As per my knowledge it doesn’t mean killing Indians, it is killing Hindus ..
It is not famous in India . But the similar act happened in Kashmir , there also many Hindus were killed , that is famous in India.
わたしの知る限り、これはインド人を殺すという意味ではなくて、ヒンドゥー教徒を殺すという意味です。
インドで有名ではありません。
しかし、同じようなことがカシミール地方で起こり、多くのヒンドゥー教徒が殺されました。
これはインドでは有名です。
この場合のインド人とヒンドゥー教徒の違いが謎。
想像の翼を広げると、イスラム王朝のムガール帝国がインドを支配していた時代、トルキスタンへ連れて行かれた奴隷はイスラム教徒ではなくヒンドゥー教徒だったということか?
まぁそのへんまではわかりません。
とりあえずこんなダークヒストリーを背景に、「日本人殺し」と呼ばれる山脈がなくてよかった。
島国万歳。
インドは基本暑いけど、北部に行くと夏でもこんな氷河を見ることができるのだ。
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