【命がけの闘い】日本をめぐって、保守とリベラルで争う韓国

 

福島の原発から出てくる放射性物質を含んだ汚染水を、国際基準を満たした処理水に変えて海へ放出する。
日本政府がそう発表すると、韓国の有力知事だった李在明(イ・ジェミョン)氏が国民へこう訴えた。

ハンギョレ新聞(登録:2021-04-26)

京畿道知事「日本の汚染水、命がけの闘いが始まる」…輸入水産物の放射能検査拡大

このあと李氏は大統領選に立候補して、わずかな差でいまの尹(ユン)大統領に敗北し、いまは野党「共に民主党」の代表をしている。

さて李氏のこの発言なんだが、日本が海へ流すのは危険な放射能汚染水ではなく、それを処理した水で、韓国の月城原発もこの処理水を海へ流している。
でも、自国は棚に上げて視界に入れず、李氏は「大韓民国国民の命と安全を脅かすもの」と日本を非難して自分をアピールする。
李氏は次期大統領になることを意識していたはずだから、国民の支持を集めないといけない。
それには「日本たたき」が手っ取り早い。

日本の海洋放出については、世界最高の権威であるIAEA(国際原子力機関)が厳しくチェックをして「問題ない」と判断している。
韓国の海洋科学技術院と原子力研究院も、「事実上健康には何の影響も及ぼさない」と後押しをした。
でも韓国では、事実に目をつぶって「人体にとって危険だ! 日本は海に流すな」と叫ぶ野党などのリベラル派と、「落ち着け! 科学を信じろ」という与党など保守派の2つに分裂して激しく対立している。

つい先日も、保守派を代表するメディアの朝鮮日報が、政治目的のために”デマ”を流す野党をこう非難。(2023/04/06)

彼らもこれらのデマに根拠がないことを知らないはずがない。政治的にデマに扇動される人間が多いため、デマも利用価値があると考えているのだ。

科学と事実を拒否、デマ政治の誘惑を捨てられない共に民主党

 

これを体現した人物が「共に民主党」の代表・李在明(イ・ジェミョン)氏。
日本の処理水は「大韓民国国民の命と安全を脅かす」と不安をあおるだけで、具体的な根拠は示さない。
それを出した韓国原子力研究院は「健康には何の影響も及ぼさない」と発表した。

 

こうした処理水をはじめとして、日本への対応をめぐる保守とリベラルの国内対立は本当に激しい。
保守派の尹大統領はことし3月、日本との関係改善について閣議でこう強調した。

「反日感情を刺激して国内政治に利用しようとするなら、大統領としての責務を裏切ることになる」
「(韓国社会には)反日を叫びながら政治的な利益を得ようとする勢力が存在する」

これはもう、大統領が全国民の前で野党などのリベラル勢力、特に李在明(イ・ジェミョン)氏に”宣戦布告”をしたようなもの。
尹大統領はこうも言う。

「日本はすでに過去数十回にわたって、歴史問題について、反省と謝罪を表明している」

日本へ謝罪を要求することで、国民の注目や支持を集めていた人たちに、大統領のこの言葉は刺さる。
国民がこんな主張を受け入れるようになると、反日を叫んで利益を得ていた人たちは存在理由が無くなってしまう。
大統領の対日認識や発言に、野党が「屈辱的だ!」と激しく反発するのは、自分たちが「イラナイ子」になってしまうという不安の裏返しでもある。

積極的な大統領に、リベラル派を代表するメディアのハンギョレ新聞がこう非難した。(2023-04-27)

いくら大統領でも傲慢極まりない。このような認識と発言を一体どう解釈すればよいのか困り果ててしまう。

[コラム]「尹大統領は私たちの時代の十字架だ」

 

この場合の十字架とは、自分たちに課せられた苦難のこと。
リベラル派の人たちにとって尹大統領は重い十字架で、本当の「命がけの闘い」はいま始まった。
危険性を訴えても、韓国海洋科学技術院に「何の影響も及ぼさない」と否定された日本の処理水放出と違って、こっちの闘いには、政治的な利益や存在理由がかかっているから絶対に負けられない。
もしこれで尹大統領ら保守派が負けるとしたら、日韓関係はまた暗黒時代へ逆もどりだ。
だからそうならないように、日本も韓国を輸出優遇国に再指定したりしてバックアップしている。
でも、この闘いは本当に結果が見えない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。