20年ぐらい前に、パキスタンを旅行した時、日本語ガイドのお世話になった。
日本に住んでいたことがあって、日本語がペラペラで日本の事情にもくわしい。
そんな彼に日本とパキスタンの違いについて聞くと、彼は「それは宗教と女性の立場、それと教育レベルですね〜」と言う。
最近、その3つが一度に現れたレアな出来事がパキスタンで発生し、もうちょっとで、罪のない女性が殺されるところだった。
この一件から、日本との違いがはっきり見えてくる。
パキスタン女性が手にしていたヘナ
いわゆるボディペインティングだ。
パキスタンの都市で、ある若い女性がランチを食べようとお店に入る。
すると、彼女が着ていた服にイスラム教の聖典「クルアーン(コーラン)」の一節が書かれていると、誰かが指摘した。
それを聞い人びとが怒り出し、怒りが連鎖して、その場は殺気に満ちた雰囲気に変わっていく。
女性は、少なくとも300人の群衆に取り囲まれ、「服を脱げ!」「首をはねろ!」「オレがあの女を殺す!」といった叫び声を聞く。
最終的には、駆けつけた警察官が店でおびえていた女性を救いだして一件落着。
この状況で彼女が殺されなかったのは本当にラッキーだ。
民衆は、服にクルアーンの言葉が書かれていたことが、神に対する冒とくだと激怒したのだが、警察が調べてみると、それは彼らのカン違いだったことが判明。
女性の服にあったのは「美しい」を意味するアラビア語で、コーランの一節ではない。
文字をデザインにした服なんて世界中にある。
この女性にはイスラム教徒で、何のミスもなかったにもかかわらず、「迷惑をかけて申し訳ありませんでした」と公開謝罪をさせられた。
話を冒頭のガイドさんに戻そう。
彼が指摘した、日本とパキスタンの3つの違いとは大体こんなことだ。
・宗教
パキスタンではイスラム教が国教になっていて、国民の約95%が信仰している。
首都イスラマバードは「イスラムの都市」という意味で、パキスタンはイスラム色がとっても濃厚な国。
一方、日本ではクリスマスが終わった1週間後に、初詣で神社やお寺へ行っちゃうような、神道・仏教・キリスト教がごちゃ混ぜ状態になっている。でも、ほとんどの人が自分を「無宗教」と考えていて、宗教には関心がない。
ということで日本とパキスタンでは、宗教に対する態度や社会的な影響力がまるで違う。
・女性の立場
日本とは違い、パキスタンでは女性の社会的な地位がとっても低い。
女性が自由に恋愛をすると、「家族の名誉を汚した」という理由で親や親族に殺害されることがあって、よくこれが問題になる。
日本ではこんな「名誉殺人」はありえない。
・教育レベル
先ほどの民衆はアラビア語を読めないのに、勝手に誤解して、「あの女はコーランを侮辱した!」「殺してやる!」と騒ぎだした。
それについて、英語のできるパキスタン人がこんな怒りのメッセージをしている。
「As a Muslim and as a Pakistani I demand strict action should be taken against those who falsely accused the innocent woman of blasphemy as in Islam false accusations are also strictly punished.」
イスラム教徒のパキスタン人として、無実の女性に間違った罪を着せ、非難した者たちに厳正な処分が下されることを要求する。イスラム教では、えん罪も厳しく罰せられるのだから。
ある程度の教育を受けたパキスタン人にとっては、これが常識的な意見で、間違っているのは女性ではなく、群衆の男性たちだと考えるはず。
ガイドの話によると、日本に比べて、パキスタンでは教育の差が大きすぎる。
教育レベルの低い人たちは、イスラム教を間違って信仰していることが多いから、パキスタンでは日本ではあり得ないような問題が発生すると言う。
今回も、その3つの「全部のせ」みたいな出来事が起きた。
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