はじめの一言
戦国時代に来日したフランシスコ・ザビエルは、日本人の価値観について次のように書いている。
「彼らには、キリスト教国の人びとが持っていないと思われる一つの性質がある。武士がどれだけ貧困であろうと、平民がいかに富裕であろうとも、その貧乏な武士が、大金を持つ平民から、富豪と同じように尊敬されているということである。」
日本では、財産があるだけでは尊敬されなかったのだ。

前回のまとめ
30歳前後の韓国人と台湾人に「日本人の嫌なところは何だと思う?」と質問をしたところ、同じ答えが返ってきた。
「日本人が何でも割り勘をしようとするところです」
韓国人はこんな話をする。
「日本人の友だちと飲みに行って、『何でお金のことをそんなに気にするのか?』と驚きました。正直、日本人はケチだなって思いましたね」
台湾人も同じだ。
みんなで居酒屋で食べたり飲んだりした後、日本人が携帯を取り出し、合計金額を人数で割っているのを見ると、「本当に情けない…」と感じたという。
この「割り勘」を韓国語では「ダチペイ」と言う。
英語の「Dutch pay(ダッチ・ペイ)」が韓国語になった。「Dutch」は、「オランダの」「オランダ人の」という意味だ。

・割り勘が「オランダ人の支払い」になる理由
そもそも、なぜ「割り勘」という英語がダッチペイ、「オランダ人の支払い」という言葉になったのか?
実はこれには、やや差別的な意味があったのだ。
大航海時代、イギリス人が敵対していたオランダ人に、「ケチ」というイメージを定着させようとして、割り勘のことを「Dutch treat(オランダ人のおごり)」、「Go(ing) Dutch」と呼んだのがはじまりとされている。
ボクも大学の授業でそんな話を聞いた。
イギリス人がオランダ人に対し、「ケチ」という悪意をもって「割り勘」を「ダッチペイ」と呼ぶようになったと。
ここで前回の話を思い出してほしい。
韓国人は「割り勘」を「日本式支払い」と言っていた。
これにも「ケチな人間」というニュアンスがないだろうか?
ただ、「ダッチペイ」という言葉にはオランダ人をバカにするニュアンスがあるため、今のイギリスでは使われていないと聞いた。
それをイギリス人にたずねると、
「別に使ってもいいけど、時代遅れ(out of fashion)」
という感じがするという。
日本人はケチ?
そのイギリス人に「日本人はケチだと思う?」とメールで聞くと、こんな返事がきた。
「I don’t know…maybe more so than other places…compared to Indonesia yes.」
(うーん、どうだろう……他の場所よりはそうかもしれないね……少なくともインドネシアと比べればそうかな。)
控えめな言い方だが、彼女には「日本人=ケチ」というイメージがあるようだ。
このイギリス人は英会話学校で働いていて、日本人はもちろんアメリカ人、オーストラリア人、フィリピン人などの知り合いがいる。
「日本人は他の国の人よりケチ」というのは、あくまで彼女の感想だが、この指摘は正しい気がする。
彼女に具体的に聞くと、「日本人はお金に細かすぎる」と話していた。
東南アジアの人たちの金銭感覚
彼女の言うように、インドネシア人に比べたら、日本人がケチなことはきっと間違いない。
知り合いのインドネシア人の様子を見ていると、彼らはよく遊びに行くし、高性能のカメラや携帯電話を買っている。
そこからは、「貯金」という概念があまり感じられない。
カンボジア人やタイ人の金銭感覚もインドネシア人と似ている。
彼らが遊びに行く場合、予算を考えたり、今どれくらい使っているかを気にしたりする様子があまりない。
そしてタイ人やインドネシア人も、韓国人や台湾人と同じように日本人の行動に驚いた。
居酒屋で飲んでいる最中に、現在の合計金額を確認する日本人の姿を見て、「あんなみっともないことはしない」と率直に語っていた。
個人的な経験からも、外国人は遊びでお金を気にしないで自由に使い、日本人は「途中経過」を確認して自分の気持ちをセーブする傾向が高い。
だから、「ケチ」に見えるのだろう。
韓国人が割り勘を嫌いな理由
以前50代の韓国人男性に、韓国の文化では割り勘を嫌い、おごることが好きな理由を聞いてみた。
すると、キーワードは「面子(メンツ)」だった。
「韓国人はたくましいから、お金がなくなっても何としても生きていけます。でも、メンツを大切にしているから、それを失うとダメです。すぐに、死ぬほど精神がまいってしまいます」
周囲に「いいところ」を見せたいから割り勘は嫌で、「ここはまかせろ、オレが出す!」とアピールすることが好きらしい。
携帯電話で金額を計算する姿はその反対にある。だから、韓国人の感覚では、それではメンツを保てなくなり、「本当に情けない」という気持ちにつながるのだろう。
まあ、たしかにあまりカッコいいとは言えない。
ちなみに韓国人の場合、日韓の歴史認識についても、これは「メンツにかかわる問題」になるため、絶対に妥協することはできないらしい。
まとめ:日本人が「割り勘」を好きな理由
これまでにさまざまな外国人とつき合ってきて、「金銭感覚」について独断と偏見でまとめると、ざっと次のようになる。
台湾人と韓国人:プライドが高く、「割り勘をしたら負け」という感覚。
タイ人とインドネシア人:貯金の概念が薄く、計画的にお金を使うのが苦手。
日本人:考えながらお金を使い、貯金を「美徳」と考える。割り勘をするのは当たり前。
イギリス人:日本人とインドネシア人の間の金銭感覚を持っている。
だから外国人は全体的に、「日本人はケチですね。そこは嫌いです」という印象を持つのだろう。
日本人が割り勘が好きなのは、「義理」という独特の考え方に由来すると思う。
アメリカの民俗学者、ルースベネディクトの有名な日本人論『菊と刀』では、義理という言葉を英語にすることは不可能だと書いてある。
「義理」は「義務」とは類を異にする一連の義務である。これに相当する言葉は英語には全く見当たらない。また、人類学者が世界の文化のうちに見いだす、あらゆる風変わりな道徳的義務の範疇の中でも、最も珍しいものの一つである。それは特に日本的なものである
日本独自の範疇であって、「義理」を考慮に入れなければ、日本人の行動方針を理解することは不可能である
「菊と刀 (講談社学術文庫) ルースベネディクト」
他人におごってもらうと、それは「義理」になるため精神的な負担を感じる。
友人同士でも「貸し借りなし」で、気楽で平等な関係でいたい。
だから、日本人は飲み屋で携帯を取り出し、合計金額を人数で割るのだ。

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金は命より重い!