「韓国の敵は韓国人なんです」
以前、知人の韓国人から聞いたこのフレーズがとても印象的だったから、このブログでも何度か使わせてもらっている。
最近、このことばが思い浮かぶ出来事があったので、これからそれを紹介しよう。
「内輪もめ」という韓国の悪癖
彼の言いたかったのは、韓国人同士で争った結果、国家としての韓国が弱体化するということだ。
歴史を振り返ると、たしかにそんな出来事がくり返し起きたことがわかる
朝鮮時代(14〜19世紀)には、朝廷内でニつのグループに分かれて激しく争い、ときには相手が生きていれば処刑したり、死んでいたら墓を暴き死体を切り刻んだりした。
そんな「士禍(しか)」と呼ばれる政争が何度もおこなわれたことで、多くの優秀な官僚が粛清され、国は疲弊し弱体化していった。
そして21世紀になっても、韓国の政治では内輪もめがよく発生し、国民を呆れさせるから、知人に「韓国の敵は韓国人なんです」とため息をつかせることになった。
ネット社会で激化する「血筋」の論争
しかし、今はそこに「差別的な発想」や「ネットの拡散力」が加わったことで、問題はさらに大きくなったといえる。
韓国人同士の争いが全世界に配信され、それを外部の人たちが見たとき、一体どう思うのか?
安重根は1910年に伊藤博文を暗殺したことで、日本ではテロリストとして処刑された。
しかし、韓国で伊藤博文は「侵略の元凶」と嫌われているため、そんな「悪漢」の息の根を止めた安は国民的英雄として尊敬されている。
昨年、そんな独立運動家の子孫がK-POPアイドルとしてデビューし、大きな話題を集めた。ただし、彼は中国国籍だったため、韓国ではそれに対して批判的に見る人もいる。
今、その「逆」と言える出来事が起きているのをご存知だろうか。
ある日本人のK-POPアイドルが「朝鮮総督府に関係する人物の子孫ではないか」という疑惑をかけられ、ネット上で賛否が激しくぶつかっているのだ。
その日本人は「特能」という珍しい名字を持っていて、実家はかなり裕福だという。
すると、ある韓国のネットユーザーが、朝鮮総督府(日本の統治機関)に「特能」という名の役人が務めていたことを突き止めて、「彼はその子孫だ!」と主張した。
※朝鮮総督府は日本が設置した機関で、朝鮮統治(1910年から1945年)の中心的存在だった。
そのため、現代の韓国では「悪魔の城」のように嫌われている。
結論から言うと、このアイドルが、朝鮮総督府にいた役人の子孫かどうかは明らかにされていない。
しかし、実家が裕福だと聞いて、一部の韓国人は「われわれの先祖をいじめて、不当な利益を手に入れた」と考え、バッシングをするようになった。
すると、ファンが所属事務所の通報サイトに、日本人アイドルが「誹謗・罵倒」されていると報告し、事務所に適切な対応を求めている。
通報がほぼ1分おきに寄せられているということからも、この日本人がどれだけ激しく叩かれているか、だいたい想像できるだろう。

朝鮮総督府の庁舎
韓国ネットユーザーのリアルな声
このアイドルをめぐるSNS上の論争から、韓国人のリアルな声を拾ってみた。
(なお、翻訳はAIにまかせた)
「내 조부모님과 그 가족들을 처참하게 짓밟고 죽이던 이들의 후손에게 우리가 환호를 보내고 있단 부분이 굉장히 기괴하게 다가옴」
(私の祖父母とその家族を残酷に踏みにじり、殺していた者たちの子孫に、私たちが歓声を上げているという事実がとても不気味に感じられる)
こんな批判に対して、ある人はこう反論する。
「일본인이라는 사실만으로 비난이 정당화되는게 정상적인 사고방식인가 그냥 유대인이 잘못됬으니 학살하려던 나치새끼들이랑 다를바가 없는대」
(日本人だという事実だけで非難が正当化されるのが、まともな考え方なのか?
ユダヤ人が悪いからといって虐殺しようとしたナチスの連中と、何も変わらないじゃないか)
以下、双方のコメントを日本語訳して紹介しよう。
【アンチ派】
・「単に朝鮮総督府に勤務していただけ」だって? 韓国のファンがそうやってこの日本人を守っている事実に、本当に嫌悪感を覚える。
さっさと移住しろ。お前たちのような韓国人は必要ない。
・わたしの祖父は強制徴用で日本へ行かされた。
「K-POPが好きだ」という理由で歴史意識や市民意識を投げ捨てる、その知能レベルには絶望する。
・「確実でない情報だ」とか「適当に言わないでほしい」という声を見かける。
でも、日本人だから、そういう疑いを受けるのは仕方ないですよね。
それに、韓国は日本によって強制的に占領された経験を持つ国だから、日本に対して悪い感情を持つ韓国人はたくさんいます。
もしこれが事実なら、彼はグループを抜けるべきです。
・この日本人を擁護する人のために、先祖たちが万歳運動をし、拷問を受け、命を捧げたと思うと本当に腹が立つ。
【擁護派】
・こうやって墓を荒らして何の意味があるのか?
ファクトチェックの重要性を改めて痛感した。
・たとえそれが事実だとしても、それは彼の祖先であって彼自身ではありませんよね。
朝鮮時代の三族誅滅(三族を滅ぼす)や、北朝鮮の連座罪のようなことをするべきではありません。
※「三族誅滅」とは朝鮮時代にあった刑罰で、犯人だけでなく、その血縁関係のある三つの家系を一族皆殺しにするというもの。
・嫌いだろうが好きだろうが、結局、検証のない話ならすべて空想だよ。
憶測が事実のように固まっていくのが一番危険だ。
外国人の冷めた目
韓国以外の世界に住んでいる人が今回の論争を見て感じたことは、「で?」というものだ。
このアイドルと朝鮮総督府で働いていた人物の関係なんてどうでもいい。もし、その子孫だったとしても「だからなに?」で終わりだ。
アーティストの評価がパフォーマンスやファンサービスではなく、「家系」によって左右されることはない。
だから、韓国のネットユーザーによる熱い議論を、「どうでもいい」と冷めた目で見る人が多かった。
ただし、外部の人間には、韓国の人たちがもつ複雑な感情は理解できないかもしれない。
桜は美しい花でも、日本統治時代に植えられたと分かると、屈辱や恨みの感情が込み上げるから、抜いて処分しようとする人たちもいる。


日本統治時代に、朝鮮半島でおこなわれた結婚式
政治・外交にまで持ち込まれる「血」のレッテル
韓国社会ではこんなふうに、「血」によって評価されることがある。
2024年にLINEヤフー問題が起きたとき、最大野党の代表である李在明(イ・ジェミョン)氏は、当時の松本総務相が伊藤博文の子孫であると指摘し、政治的な攻撃に利用したのも記憶に新しい。
2020年にも、駐韓アメリカ大使を務めていたハリス氏に対して似たようなことがあった。
ハリス氏は日本人の母親を持つハーフで、口ひげを生やしていた。日本の朝鮮総督には口ひげのある人が多かったため、それと大使の姿を重ね、「朝鮮総督のように振る舞っている」と非難する人たちが現れたのだ。
しかし、アメリカのメディアは日本と違って、忖度なんてしてくれない。
アメリカ国籍を持ち、大統領から大使に任命されたハリス氏に対し、「日本人の血」を理由に非難することは、アメリカでは人種差別主義者(racist)とみなされると強く非難した。

韓国の敵は韓国人
これが国際的な基準や常識だ。
韓国内では朝鮮総督府に関係する人物の子孫かどうかが問題にされるが、海外では「血筋を理由に個人を批判する行為」自体が問題視される。
実際、第三者である外国人のコメントには、あの論争自体が「差別的」だと非難する人もいた。
しかし、朝鮮時代の「士禍(しか)」と同じように、韓国のネットユーザーの多くは目の前の「敵」に反論することしか見えていない。
冷静な韓国人は、そんな騒動にあきれる外国人の姿を思い浮かべ、国際社会で韓国のイメージが低下することを危惧している。
だから、こう嘆くのだろう。
「韓国の敵は韓国人なんです」

寺内 正毅(1852年 – 1919年)
戦前の日本を代表する軍人・政治家で、陸軍大将や内閣総理大臣(第18代)などを歴任した。
おまけ
今回、韓国の人たちの論争を見ていて、意外な事実を発見した。
初代朝鮮総督を務めたのは寺内正毅(まさたけ)という人物だ。
この寺内と血のつながりがある、日本の歌手をご存知だろうか?
答えは、宇多田ヒカルさん。
初代朝鮮総督が寺内正毅であることは知っていたが、宇多田さんが寺内の子孫(正毅の兄のひ孫)にあたるということを、韓国人のコメントで初めて知った。
韓国の調査能力は本当にすごい。
そんな事実を知ってショックを受ける韓国人もいた。
・うわっ、知らなかった…。ファーストラブ好きなんだけど、もう聴かない。
・ああ、こんなふうにまた好きな歌手を失ってしまうなんて
もちろん、それを批判する人もいる。
・こいつらはまだ朝鮮時代に生きてるのかよ
・野蛮な連座制を断ち切れない民族
これは、元駐韓アメリカ大使のハリス氏に対する抗議活動。
通常、アメリカ大使への侮辱はアメリカに対する侮辱とみなされる。
こういう映像が全世界に発信されると、きっと韓国のブランドイメージに傷がつく。

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