英雄 or テロリスト? 尹奉吉をめぐる日韓の評価と在日韓国人の思い

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昭和の日と、あるSNSの投稿

4月29日は昭和天皇の誕生日を記念して、「昭和の日」になっている。
そんな祝日にSNSを見ていると、ある韓国人のこんなメッセージを見つけた。

「당신의 희생으로 지금의 대한민국이 있습니다 정말 감사드립니다」
(あなたの犠牲があってこそ、今の韓国があります。心から感謝申し上げます)

するとこんな返信をする日本人がいた。
※100%正確なことは分からないが、韓国語の投稿をした人は韓国人、日本語なら日本人とした。

「テロリズムを賞賛するな」

もちろん、「あなた」は昭和天皇ではなく、尹奉吉(ユン・ボンギル)を指している。
今日は昭和の時代を振り返る日なので、今回はこの人物をとりあげよう。
尹奉吉に対して日本と韓国はどう見ているのか? そしてその「中間にいる人」はどう思っているのか?

 

義挙(テロ)を行う直前の尹奉吉

上海爆弾事件:日本と韓国の真逆の評価

昭和7年(1932年)の天長節(昭和天皇の誕生日)、上海で祝賀式が開かれた際、爆弾が投げ込まれ、陸軍大将や医師が殺害され、多くの人が重傷を負った。
これをおこなったのが、尹 奉吉(ユン・ポンギル)だ。

韓国側では、彼は正義のために勇気をもって行動したことから、「義挙」と称えられていて、
歴史教科書には「独立のためにたたかっていた人々に希望と勇気を与えた」と書かれている。

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しかし、要人を爆殺された日本にとっては、これはテロ行為以外のなにものでないため、尹は警察に捕まり、後に処刑された。

しかし、韓国にとっては、これは崇高な独立(抗日)運動以外のなにものでもないため、尹が爆弾を投げてから約100年が過ぎても、SNSにはこんなメッセージが投稿される。

「당신의 희생으로 지금의 대한민국이 있습니다 정말 감사드립니다」
(あなたの犠牲があってこそ、今の韓国があります。心から感謝申し上げます)

「그날의 용기를 잊지 않겠습니다」
(あの日の勇気を忘れません)

それに対して、日本人が「テロリズムを賞賛するな」と書き込む理由は説明する必要はないだろう。

なお、韓国語でこう書き込む人もいた。

「대한민국 건국에 쥐뿔한것도 없는 테러리스트」
(大韓民国の建国に何一つ貢献していないテロリスト)

例外は日本にもいて、尹奉吉を「義士」として称える日本人を見たことがある。

 

韓国は支配されていた側で、日本は統治していた側で立場が反対だったため、同じ出来事でも評価は真逆になる。
正義の基準そのものが違うから、これは仕方ない。

板挟みになる「中間にいる人たち」

むずかしいのは、「その間」にいる人たちだ。
日本にいる韓国の人たちはどう思っているのか?

尹奉吉(ユン・ポンギル)に関して、民団(在日本大韓民国民団)が2025年にこんな声明を発表した。

尹奉吉追悼記念館建設計画「民団として到底賛同できない」

韓国に住んでいる韓国人が、尹が処刑された金沢市に記念館を設置しようとしていることが分かり、大きな反発を招いた。
「テロリストの追悼記念館開設を許さない」と反対運動が起こり、市民生活にまで影響が出てきた。

結果的に、日本に住んでいる韓国人も巻き込まれたため、民団は次のように発表した。

「地域の日本の皆様、韓国同胞の皆様の日々の生活にご不便と多大なる不安をもたらしたことは、民団として憂慮に堪えず、また到底、賛同することはできません」

記念館設置と民団はまったく関係がない。
それでも民団側は村山市長に、「同族がこういうことを起こした」と申し訳なさそうに言い、「(設置には)断固反対だ」と強調した。

民団側は尹奉吉を「義士」と呼び、「民族の誇り」を受け継ぐとしている。
韓国の立場からしたら、これは当然で自然だ。
しかし、日本に住む者として「在日同胞社会と地域住民の信頼を守る」ことはとても重要だ。
そんな事情から、金沢市民や市長と協力しながら「我々としては断固阻止していきたい」と訴えた。

 

日本と韓国では同じ人物でも評価が逆転し、義士が犯罪者になることは仕方ない。
しかし、本国にいる人間は海外同胞に迷惑をかけてはいけない。
また、日本人も「ターゲット」を正確に把握する必要がある。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 時代背景があります。
    当時、日本帝国が朝鮮を併合したのは時代の流れの結果でした。
    しかし、それが現在の時点でも当然実現しているわけではありません。 それが時代の状況です。ですから、当時の日本帝国による朝鮮併合は国際関係において自然な流れだと考えています。
    しかし当時の朝鮮の医師たちは朝鮮の独立を願い、それを実現する方法を探し回っていました。
    李承晩のような人物は、米国で外交的に朝鮮を独立させ、新たな民主国家の建国に尽力し、尹奉吉のような人物は、中国を拠点に暴力闘争で独立を勝ち取ろうとしました。その方法が正しいか間違っているかは、後世が評価すべき問題です。日本の立場では、両方のカテゴリーを否定的に捉えるでしょうし、特に殺傷テロ行為をより否定的に見るでしょう。韓国の立場からすれば、二つの方法のうちの一つを実行したユン・ボンギルを「義士」と呼ばざるを得ません。
    すべてが時代の悲劇です。
    しかし、私は日本国内でユン・ボンギル義士の記念構造物の建設に反対する立場です。
    彼を義士として称えるのは、あくまで韓国の立場だからです。

  • インドやベトナムでも、イギリスやフランスに独立闘争をおこなって処刑された人がいます。
    インドとベトナムでは英雄ですが、イギリスやフランスにとってはテロリストです。
    こんなことは「世界史あるある」で珍しくありません。
    しかし、かつて統治していた国に記念館を立てる動きは聞いたことがありません。
    国内だけにとどめておくべきです。

  • 日韓近代史の対立を再燃させ、両国民間の感情を傷つけてはなりません。
    両国の評価はどうしても異なるので、互いに理解し合う必要があります。 ただし、事実と異なる部分は正しく訂正し、誤解が生じないようにすべきでしょう。当時の日本は自国の安定と発展のために朝鮮を併合せざるを得ず、その方法も他国に比べて優しかったため、非難すべきではありません。
    一方、朝鮮は五百年もの間自らを発展させられず後退し、他国との競争で完全に遅れを取ったため隣国に併合されてしまいました。したがって、現在の韓国人はその歴史を学び、二度と同様の悲劇が起こらないよう反省すべきです。韓国人がユン・ボンギル医師の愛国心を称えるのと同様に、靖国神社に共に祀られた2万人以上の朝鮮人にも感謝すべきです。 彼らのそのような犠牲があったからこそ、今日の大韓民国が存在しています。
    韓国人は日本統治時代の被害意識から脱し、その時代を理解し、未来に向かって進むべきです。

  • >歴史を学び、二度と同様の悲劇が起こらないよう反省すべきです。

    わたしが会った世界中の人がそう言います。歴史は自国の問題と理解していました。
    韓国では、今でも日本に謝罪や賠償を求める動きがあって、そこが外国とは違います。歴史認識の違いは統一できないので、違いは違いとして認め合うしかありません。

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