在日中国人がアメリカ社会で感じたこと 入国の厳しさ・貧困・情報公開

知人の中国人(20代・男性)は静岡にある会社で研究職の仕事をしている。
ここでは彼を伝説の中国人「王大人(ワンターレン)」にちなんで、「ワン」と呼ぶことにする。

去年、王はアメリカの企業に招待されて、10日ほどロサンゼルスなどに滞在していた。
帰国後、彼と会って話を聞いたので、今回は「中国人のアメリカ体験」を紹介しよう。

目次

アメリカ入国|日本人にはない困難

ーーアメリカにいて、文化の違いで大変なことはあった?

王:大変だったのは行く前で、アメリカへ着いてからは困ることはありませんでした。
文化の違いは面白いのでウェルカムなんですけど、政治の違いは不便で、中国人がアメリカに入国するのはむずかしいんですよ。

ーー日本人の場合、アメリカに10日間滞在するだけなら、オンラインで「ESTA」(エスタ:電子渡航認証システム)の申請ができて、早ければ数時間で承認される。
でも、中国人は「ESTA」を申請できないから、ビザを取らないといけないのか。
そりゃ面倒だ。

王:そうなんです。
我が国はアメリカから、「唯一の競争相手」と名指しされました。
アメリカはそれだけ中国の力を恐れているということなので、入国のハードルが高くなっても仕方ありません。

ーーポジティブに置換しているけど、それは魯迅が言った「精神勝利」のような…。

王:とにかく手間と時間がかかりました。
まずはオンラインで東京のアメリカ大使館に、米企業の招待状や日程表、中国の大学の卒業証明書などいろいろな書類を提出したんです。
それだけでけっこう疲れました。

ーーそこまでやったのに、返信には「死亡確認!」と書いてあって却下されたとか。

王:何の話か分かりませんね。
それをパスしたら、今度は大使館で面接を受けるんです。

ーーそのためだけに静岡〜東京を往復したの?

王:それも仕方ありません。
大使館では、

アメリカへ行く目的は何か?
誰がチケット代やホテル代を出すのか?
◯月◯日はどこで何をするのか?
どこに泊まるのか?

といったことを細かく聞かれました。
緊張していて英語がうまく聞き取れなかったので、本当にあせりました。

ーー日本は同盟国だから、そのあたりの過程をすっ飛ばして「ESTA」を申請すればいいけれど、やっぱり中国に対しては厳しいな。

王:そうなんですよ。
大使館を出たら疲れがドッと出たので、東京駅でインドカレーを食べました。

ーー「疲れ」は分かるとして、なぜそこでインドカレーが出てきた?

王:私は中国の地方都市の出身で、本格的なインドカレーなんて食べたことがありませんでした。

ーーそう言えば、中国は経済大国になってIT化も進んでいるけど、国際化はイマイチだと聞いた。
外国出身の人が作る本場の料理を食べられるのは、大都市のごく一部しかない。
アメリカ社会とは反対だな。

王:アメリカは別世界だと思ったので、行ってみたかったんです。
インドカレーは日本で初めて食べました。スパイスが効いていてすごく美味しかったし、元気が出るので気に入ったんです。
東京駅に評判の良いカレー店があったんで、そこに行ってみました。

ーーぶっちゃけ、中国とインドって仲が悪いよね。戦後に何度も武力衝突が起きていて、直近では2022年に発生したし。
だから、中国で働くインド人は少ないのかな。

というか、日本人がカレーを好きすぎる。
ベジタリアンのイギリス人が「小さな町でもインドカレーの店があって助かる!」と言っていた。

 

バングラデシュのホームレス(たぶん)の人たち

豊かで貧しいアメリカ

ーー艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えてアメリカに入国して、まずどんなことを感じた?

王:「アメリカって、こんなにホームレスが多いんだ」ですね。
ロサンゼルスの空港に着いたあと、バスに乗って市内に行きました。アメリカの街を直接見るのを楽しみにしたんですけど、路上で生活しているホームレスの人たちがたくさんいてビックリしました。

ーーロサンゼルスって、アメリカの都市の中でもとくに多いらしい。
日本に住んでいたあるバングラデシュ人は王と逆で、ホームレスを見かけないことに驚いていた。
でも、若者の自殺者の数を知って、「バングラデシュと違って日本ではホープレスが問題ですね」と言っていたけれど。

※2026年1月現在、日本全国で確認されたホームレスの人数は2481人で、調査が始まって以来、最も少なかった。

王:わたしが中国にいたときも、ホームレスを見かけなくなりました。
ロサンゼルス以外の都市でもそうした人を見ましたし、「アメリカは世界でもっとも豊かで強い国だけど、国民はそうでもない。貧しい人が意外と多い」というのがいちばん印象的でしたね。

※中国にホームレスがいないわけではない。
仕事が見つからず、公園などで生活する若者が増えているという。

 

メキシコ料理のタコス

アメリカで驚愕した物価の高さ

ーーじゃ、ワンがアメリカで驚いたことを聞こうか。
「〜に驚いたワン」と言うと好感度が上がる。

王:なら低いままでいいです。
驚いたのは物価の高さですね。
フライドチキンやタコスのようなファストフードでも、外食をするとすぐに2000円を超えてしまいます。

ーーアメリカの物価高と円安のダブルパンチだからね、いまアメリカにいる日本人も悲鳴を上げている。

王:せっかくアメリカにいて、もう来られるか分からないので、滞在中はよく外食をしていたんですよ。
でも、あんなに値段を気にして食事をしたのは初めてです。楽しみが半減しましたね。

ーー日本や中国みたいに、気軽にレストランで食事ができるというのは、社会や人生のあり方としては重要なポイントだな。

王:物価高(インフレ)がホームレスの増加と結びついているのです。

中国とアメリカ社会の違い|情報の解放度

ーーアメリカと中国の社会を比べて、どんなところに違いを感じた?

王:色々ありますけど、わたしにとって印象的だったのは「情報の開放度」ですね。
たとえば、中国では自殺に関する統計やニュース報道がかなり制限されていますけど、アメリカではそんな「暗部」もオープンにされていると聞きました。
だから、国民は国の全体像をつかみやすい。

ーー「表現の自由」はアメリカの建国理念の一つで、とても大切にされている価値観だから。

王:中国では政府が情報をコントロールしているので、国民は基本的にそのフィルターを通した情報にしかアクセスできません。

ーー習近平国家主席は「東西南北中すべてを党が指導する」なんて言っていた。
論語でいう「民は之に由(よ)らしむべし 之を知らしむべからず」かな。

※政治をおこなう者は人民を施政に従わせればよく、その意図をわからせる必要はない、といった意味。

王:でも、みんなが国について知って、自由に意見を言うことができるから、アメリカ社会には分断や混乱が広がっているとも聞きました。

ーー自由なアメリカと管理社会の中国は対照的だな。

王:行きすぎた自由はダメですね。
ある意味、アメリカに行ったことで、中国社会の良さを再発見することができました。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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