日本と韓国を行き来する人は増加して、両国の交流は活発になっているけれど、相変わらずその奥底には「埋められない差」が存在している。
両国の近代史に対する認識は、「真逆」と言っていいほど異なっているため、昔から何かあるたびに摩擦が生まれ、関係が悪化してきた。
韓国側がよく言うように、歴史を直視することはとても大切なので、これから日韓の歴史認識の違いを明らかにしていこう。
韓国大統領の発言が招いた「最悪」の事態
先日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が二重の意味で「やらかした」。
まずは、ある動画をシェアしてイスラエルを激怒させた。
イスラエル軍の兵士がパレスチナ人の子どもを拷問した後、屋根から突き落とすシーンの動画を自身のSNSでシェアし、これは「慰安婦強制」や「ユダヤ人虐殺」(ホロコースト)と変わらない残酷な行為だと非難した。
しかし、その動画と説明の内容が違っていたため、イスラエル側は李大統領が「偽情報」を拡散したとして逆批判した。
それだけでなく、よりによってイスラエル軍の行為をナチス・ドイツによるホロコーストに重ねたため、イスラエルは大激怒し、韓国とイスラエルの関係は「最悪」にまで悪化した。
この事態に大きな危機感を抱いたのが、韓国最大の全国紙・朝鮮日報だ。
朝鮮日報は社説で大統領に対し、「結者解之」(自分でまいた種は自分で刈り取る)を訴えた。(2026/04/13)
SNS上で事実とは異なる内容を引用して、ホロコーストにまで言及したことは不適切だった。(中略)突如として始まったSNS発信に端を発するこの事態を収拾できるのは、大統領本人しかいない。
イスラエル政府と「常識外の論争」 李在明大統領は増幅させず沈静化に努めるべき
「慰安婦問題」の認識のズレ
もうひとつの「やらかし」は、大統領が慰安婦問題を持ち出したことだ。
軍人が子どもを拷問して殺害する行為やユダヤ人の大虐殺と、日本統治時代の慰安婦を同列に語られてはたまらない。
産経新聞が李氏の歴史認識にツッコんだのも当然だ。(2026/4/17)
韓国大統領のずれた歴史観 パレスチナ戦闘をホロコーストや慰安婦問題になぞらえる軽率さ
「強制連行」と「性奴隷」があったことを裏付ける根拠がないため、日本はその2つの説を否定している。
しかし、歴史を学ぶと、この認識は事実に反していることが分かる。

ナチスの収容所で殺害され、放置されたユダヤ人の遺体
ナチス・ドイツの目的は「民族の絶滅」だった
まず、ナチス・ドイツがユダヤ人に対して何をしたのか振り返ってみよう。
きょう4月27日は、1940年にナチス親衛隊の指導者ハインリヒ・ヒムラーによって、アウシュヴィッツ強制収容所の建設命令が発令された日だ。
なぜこんな建物が建てられたのか?
それは、ナチスがユダヤ人の存在そのものを問題視し、「ひとつの民族を絶滅させること」を目的にしていたからだ。
それが「ユダヤ人問題の最終的解決」で、ナチスと日本の決定的な違いになる。
ナチスはこれを国家の重大な目標として掲げ、それを実現するため、1942年にヴァンゼー会議を開いた。
この「悪魔会議」で、ユダヤ人が定義され、彼らを一人残らず地上から抹殺するため、占領地のユダヤ人を強制(絶滅)収容所へ移送し、毒ガスや強制労働によって殺害することが決められた。

「ユダヤ人絶滅」という政策を現実のものにするため、アウシュヴィッツなどに代表される絶滅収容所を建設し、ヨーロッパ中のユダヤ人を集めて組織的に殺害していった。
その結果、およそ600万人もの犠牲者が出るという、人類の歴史上でも類を見ない悲惨な大虐殺(ホロコースト)が引き起こされた。
これは明確な「殺害の意図と計画」を持った国家犯罪だったと言える。
「歴史の真実」を知る方法と一次資料の重要性
ナチスのユダヤ人政策と違って、朝鮮を統治していた日本が「朝鮮人絶滅」を考えたことは一度もなかった。
そんなことをしたら、日本が朝鮮を併合した目的が分からなくなる。
ここでは日本統治の全体像ではなく、李大統領が「同一視」し、韓国社会で「最大の悲劇」とされる慰安婦制度をとりあげよう。
その実態を知るには、当事者の声に耳を傾けることが重要だ。
しかし、それには条件があって、「絶対に真実である」という保証がなくてはならない。
元慰安婦の人たちが自分の周囲にいる人へ配慮したり、日韓の政治的、外交的な影響を受けることなく、意図的に改変しないで当時の出来事をそのまま話している、ということを客観的に保証する必要がある。
評論家の山本七平氏はその点について、こう話している。
現代史の中の一員としてその社会に生きている限り、人は、対人関係・対社会関係の完全な無視はむずかしい。従って、時勢への配慮とそのための意思的無意識的迎合があっても不思議ではない
「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21) 山本七平」
つまり、元慰安婦の証言が、韓国の慰安婦支援団体や日韓外交と完全に切り離されたものであることが重要になる。
戦後、数十年が過ぎてから出てきた証言では、この点での保証が必要だが、現実的にそれは不可能だろう。
アメリカ軍の記録から見る日本軍慰安婦の「実態」
しかし、「その時その場で得られた証言」なら一次資料になるので、そのまま信用することが可能だ。
その一例として、戦時中に米軍が朝鮮人慰安婦から聞き取り調査をおこない、作成した報告書がある。
この「日本人戦争捕虜尋問レポート No.49」なら、現代とは完全に切り離されていて、意思的・無意識的な迎合や改変は一切ない。

ビルマのミッチーナでアメリカ軍に捕らえられ尋問を受ける慰安婦。(1944年)
この報告書には、日本軍慰安婦の暮らしぶりや待遇などが詳しく書かれている。
それによると、慰安婦はたくさんのお金(plenty of money)を持っていて、服や靴、タバコや化粧品など自分が欲しいものを買うことができたという。
また、日本兵とスポーツをしたり、ピクニックにも出かけたりしていた。

ユダヤ人の女性がナチスの将校とピクニックを楽しんだというのは、あまりに悪質で「歴史のジョーク」ではすまされない。
イスラエルにとっても、ホロコーストと慰安婦制度を同列に扱うことは決して認められないはずだ。
もちろん、ひとつの事例をもって、「すべての慰安婦がこんな好待遇を受けていた」と結論づけてはいけない。
「他にも証言あるでしょ?」や「日本に都合よく解釈してない?」と疑問に思うべきだ。
そうなったら、「真実」と信頼できる資料で確認してほしい。
少なくとも、慰安婦支援団体と関係のある人物の証言の場合、そのまま信用するのではなく、それを裏付ける「保証」が必要だ。
まとめ:日本とドイツはまったく違う
当時の日本政府には、朝鮮の人々という民族そのものを「絶滅させる」といった計画はなく、そのための収容所も存在していなかった。
当然、アウシュヴィッツの犠牲者と、慰安婦だった人たちはまったく違う。
「日本の朝鮮統治」と「ナチス・ドイツのユダヤ人迫害」はどう考えても別の問題で、この2つを同一視することは歴史に対する「裏切り」だ。
とはいえ、当時は親や業者にだまされて、自分の意思に反して慰安婦になった朝鮮人女性もいただろう。
日本の統治下にあった出来事だったから、日本に法的な責任はなくても道義的な責任があったため、日本政府は2015年に元慰安婦の人たちに謝罪している。
日韓両政府はこの合意によって、慰安婦問題の「最終的解決」に合意した。
これは、ナチスの「ユダヤ人問題の最終的解決」とはまったく違う。
歴史を学ぶときは、感情や特定のイメージで決めつけるのではなく、当時の計画や目的、そして一次資料などの「事実」に基づき、冷静に理解することが大切だ。
韓国の大統領がホロコーストと慰安婦を同列に語ったら、日本もイスラエルみたいに激怒しなくてもいいが、韓国大統領のズレた歴史観を指摘することぐらいはしてもいいだろう。
実は、日本がとくに反論しなかったことについて、ある韓国人の読者さんがこんなコメントをしてくれた。
「日本は静かでした。その沈黙は、韓国人にとってはイ氏の発言を認めたと受け取られる可能性が非常に高いです」
韓国への配慮は、将来の摩擦を生む原因になってしまう。

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