暑苦しい夏が終わってさわやかな青空が広がり、収穫物のとれる秋を日本ではよく「天高く馬肥ゆる秋」と表現する。もともとの中国語の意味は違うのだけど。
そんな秋ごろ、日本に住んでいたことのあるドイツ人と話をしたので、今回はその内容を紹介しよう。
ーーアメリカ人に「秋の風物詩」を聞いたら、収穫を神に感謝することから始まったサンクスギビングと言っていた。ドイツにも収穫祭はある?
昔ほど盛んじゃないけど、今でも教会へ収穫物を持って行って神に感謝することがある。
サンクスギビングと同じコンセプトで、あれはもともとはヨーロッパのキリスト教文化だったと思う。
ーー別の国にルーツを持つ文化はよくある。ひな祭りや鯉のぼりの由来は中国にあるけど、日本で独自に発展して今では日本の文化になっている。アメリカのサンクスギビングの起源が、ヨーロッパの収穫祭を起源にあってもおかしくない。
ーー台湾・中国・韓国には、死んだ人と生きている人、または死者同士が結婚する冥婚(霊魂結婚式)という風習があった(今もあるかも)。日本でも例外的にそんなことをする地域がある。
それについて調べていたら、ドイツにもそんな死後結婚があると知ってビックリしたけど、これは今もあるの?
ないない(苦笑い)。
それは第二次世界大戦のころにあった制度で、ドイツでは例外中の例外。
当時、ナチスは戦死した兵士と妊娠中の婚約者の結婚を認めることで、その女性に「未亡人」としての特典を与えていた。また、そうすることで、子どもにも法的な権利が認められた。
でも、生者と死者が結婚するなんてクレイジーだね。まぁ、当時のドイツが狂っていたけれど。(Posthumous marriage in Germany)
ーーあなたが日本にいた時に体験したことで、印象的だったものはある?
それは茶道だね。
床一面に畳が敷かれていて、ふすまや障子のある茶室なんてヨーロッパでは見たことがなかったから、まずその空間にいるだけで、すごく気持ちが良かった。茶道の一つ一つの動作も奥深くて面白い。
ーードイツで茶道は知られている?
いや、残念ながらそうではない。日本文化を好きな人が知っているくらいで、一般的には知られていない。
タイのバンコクで見かけた焼き肉と日本料理の店「ソウル」。
看板にビビンバや刺し身の写真があるところから察するに、店のコンセプトは「売れるものなら何でもOK」だ。
ーードイツで有名な日本文化って何かある?
空手と柔道なら、一般のドイツ人でも知っている。最近はテコンドー有名だね。
ーーなるほど、テコンドーか。ってそれは韓国の文化だろ。
そうか、すまない。
でも、普通のヨーロッパ人は、テコンドーが日本か韓国の文化かなんて知らない。そんなことには興味がない。
ーー前に別のドイツ人から、ヨーロッパでは日本料理店に中国や韓国の食べ物があったりして、東アジアの料理がごちゃ混ぜになっていると聞いた。
日本人がオーナーの店なら、そんなことはないと思う。
でも、中国人やベトナム人が経営している店なら、売れる食べ物をメニューに加えるからそうなるだろうね。前に私が行った中国料理店では、すし、みそ汁、てんぷら、焼きそばがあった。私は日本に住んでいたから、「これはおかしい」と思ったけど、普通のドイツ人なら何の違和感も感じないよ。
ーー前半の3つはいいとして、焼きそばは微妙だな。
ソースで味付けするのは日本独自のやり方だけど、日本人でも、あれが中国の食べ物かどうか判断に迷う人がいる。
どっちもいい(笑)。
日本・中国・韓国・ベトナムの食べ物をまとめて「アジア料理」と認識していても、ヨーロッパでは問題ない。
日本人だって、ドイツとフランスの文化の違いなんて知らないんじゃないの?
ーーまあね。
オーデコロン(ケルンの水)はフランスのものか、ドイツのものかよくわからないし。
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