【オーデコロン爆誕】フランス、ドイツ、イタリアの3要素

 

「パチパチ」となんかめでたい今日8月8日は、870年にメルセン条約が結ばれた日。
これによってフランク王国というドでかい国が3つに分裂して、いまのフランス、ドイツ、イタリアの原型が出来上がった。
ということで今回の話は「オーデコロン」だ。

 

メルセン条約の後の西ヨーロッパ世界

 

「perfume (パヒューム)」というと、日本では広島出身の3人組テクノポップユニットを指す。
でも、英語では「香水」の意味で、これはラテン語の「Per Fumum」(煙によって)が語源になっている。
火で何かを燃やすと煙と同時にニオイが発生するから、人類は古代からそれを意図的に生み出していたことが分かる。

中東にアッバース朝が成立して、科学がすさまじく発達した「イスラーム黄金時代」(8~13世紀)にアルコールに溶かして作る、現在の香水の原型が作られるようになる。
この知識や技術が14~16世紀ごろのルネサンス時代にイタリアへ伝わると、独自の香水文化が発達しヨーロッパに広まっていく。

ヨーロッパ人が香水をよく使っていたのは、オシャレではなくて「不潔」だったからだ。
16~19世紀までのヨーロッパ人は、風呂に入ると病気になりやすいという迷信を信じていて、一生で3回しか入浴しなかった国王もいたとか。
だから香水は、クッサイ体臭をごまかすために使われていたのだ。(香水
いま日本をふくめ世界中で人気のあるオーデコロンは、そんなヨーロッパで18世紀に生まれたもので、この香水にはイタリア、ドイツ、フランスの要素が込められている。

 

大学時代ケルンに住んでいたドイツ人と話をしていた時、そこで有名なものとして、彼はケルン大聖堂とオーデコロンを挙げた。
「オーデコロン?それってフランスの香水じゃ…」と思って聞くと、あれはフランス語の「オー(水)」と「コロン(ケルン)」を合わせてつくった言葉で「ケルンの水」の意味だと言う。
さらにそれを開発したのはイタリア人というから、もうどこからツッコんでいいのか迷う。

ヨハン・マリア・ファリナ」というイタリア人の香水職人が、ドイツのケルンで新しい香水を作って1709年に販売を始めたのがこの香水の始まりだ。
彼はケルンに敬意を示し、その新商品に「Eau de Cologne」(ケルンの水)という名前をつける。
なんでフランス語なのかはナゾ。
そのおかげで、いまでは香水の街として有名になったケルン市では、彼を称える石像が市庁舎の前に建てられた。
ヨーロッパのほぼすべての王室に届けられたこの香水は大人気となり、オーデコロンの小瓶1本で当時の公務員の年収の半分ほどしたとか。

ケルンの水にはもともと疫病を追い払う力があると信じられていたから、そんな「神聖な効果」もオーデコロンの売り上げアップに貢献したと思われる。
1797年にフランス人によってケルンに自由貿易が確立されると、オーデコロンの成功を受けて、ほかの多くの実業家が「オーデコロン」の名称を使って独自の香り(フレグランス)を販売するようになった。
この香水が世界的に有名になった理由はこれだろう。

When free trade was established in Cologne by the French in 1797, the success of Eau de Cologne prompted countless other businessmen to sell their own fragrances under the name of Eau de Cologne.

Eau de Cologne

「ケルンの水」

 

では、イタリア人の作ったフランス語の「オーデコロン(ケルンの水)」は一体どこの文化なのか?
知人のドイツ人は「ケルンの水」という名称である以上、これはドイツの文化だと主張する。

*もちろんドイツでは「ケルンの水」というドイツ語を使う。
ちなみにオーデコロンは明治時代の日本へ伝わって、「西洋道中膝栗毛」では「逢ふでころり」と表現されている。

ただ世界的にはフランス語の「Eau de Cologne」が知られていて、これを「フランスの香水」と思っている人は多いと思う。
そのへんの”誤解”については、ドイツ・フランス・イタリアでは昔から人の行き来があって、由来をたどると複雑なものもあるから、彼としては特に気にならないらしい。
元はフランク王国という一つの国だったせいか、このへんな大ざっぱというか大らかだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。